第319話 思いのほか上位達との会話が盛り上がった。
コロポックル族が村に居るとパーン族の上位に口を滑らせてしまい、現在その上位から質問攻めに合っている。
ドリアードだけではなくコロポックル族まで村に居るとは、どんな事をすればそんな事が起こりえるのかと割とすごい剣幕だ。
どっちも偶然だとは言ったが納得はしてないな……本当なんだけど。
しかしあまりにすごい剣幕だったので、この際気になったことを聞いてみる。
「なぁ、お前達って神は本当に信仰してるのか?」
「当たり前じゃないですか。
長から言われたことは残念ですが、それでも神を崇めるのをやめるつもりはありません。
それに神の存在は村長が証明してくださっているじゃないですか、あの神のような御業……まさしくあれこそが神に選ばれた方の所業!」
そう言いながら俺に跪く御子と神官、私兵はそれを見て慌てて跪き始める。
「そんなことしなくていいから、普通にしててくれ。」
「しかし……!」
「せっかくだから俺がここに居る経緯を話すよ。
俺はこことは違う世界からこの世界に連れて来られてな――」
お酒も入ってたのも手伝って、恨んでるし嫌いなはずだったパーン族の上位と話が弾む。
俺が甘すぎるのかどうなのか……話してて悪い奴じゃないかもしれないと思ってきちゃっている。
ただこいつらの境遇と周りがどうにも出来なかったという環境が、ダメな方向に引っ張っていただけなのかもしれないな。
やはり交流をしてみないと分からないものだ――しかし御子と神官というだけあって今まで人の話をたくさん聞いてきたのだろう。
めちゃくちゃ聞き上手である、ちょっと俺の話をして終わるつもりが相当盛り上がってしまった。
「――っと、もう日が昇りかけているじゃないか。
済まないな、こんな時間まで付き合わせてしまって。」
「構いませんよ、神様に大精霊であるドリアード様……それに繫栄の象徴であるコロポックル族が村に集まった経緯を聞けただけで有意義でしたから。
それより長が家でお待ちじゃないですか?」
御子の言葉を聞いてちょっと背筋が冷える……あまりに盛り上がりすぎて完全に忘れていた。
だがここで慌ててはこいつらになんて思われるか……平静を装わないと。
「エルケには少し悪いが、宴会が開かれている間はあまり構ってやれないかもしれない。
何せ過去最大規模だからな、寝て起きたらまた騒がしくなるだろうし。」
「仕方ないです、色んなめでたい事が重なっていますから。
……長をよろしくお願いします。」
「任せておけ、必ず幸せにする。」
他の妻が幸せならエルケにも同じことをしてやればいい、それで足りなければ更に何かしてあげればいい。
やれることはいくらでもある、過ぎたワガママじゃなければ叶えてやりたいからな。
俺は上位と挨拶をして家に戻ることに……さて、エルケが怒ってなければいいけど。
家に帰ると皆寝ているようで静かになっていた、お風呂に入ってからベッドに入ろうと思い自室に行って着替えを取る。
ベッドから物音がしたので恐る恐る覗き込んでみると、エルケがすぅすぅと寝息を立てていた。
これは俺を待っていたな……悪いことをした。
だが起こすのも悪いので風呂に行くことに、まずはさっぱりしてこよう。
着替えを取ってお風呂に向かっている途中、暗い道中でガシッと肩を掴まれた。
持っていたランプを落としそうになり相当びっくりする、誰かと思って振り返ると流澪だった。
「物音がしたから来てみたらどこに行ってるのよ……エルケさん待ってたでしょ?」
「それはさっき気づいたよ、申し訳無い事をしたと思ってる。
さっきまで飲み食いしてたからな……流石に風呂に入らないとダメだろう。」
「あんまりエルケさんを傷つけないようにね?」
「分かってるよ、心配してくれてありがとうな。」
お礼を言うと照れくさそうに頬を掻いて俯く流澪、まだお礼を言われたり感謝されたりが慣れないんだろう。
これから先どんどん褒めたりお礼を言ったりするから慣れていってほしい。
「別にこれくらいなんてことないわ、私も部屋で起きてたし。
他の人達は寝てたみたいだけど。」
「こんな時間まで何してたんだ?」
「クリーンエネルギー機構の書類と試作機の仕様書を読んでたのよ。
島の開拓が無くなったから、宴会が終わればそっちにかかれるようになったし。」
「無理はしないようにな、あんまり根を詰めると体を壊すぞ。」
「それはお互い様。
それじゃ私は家に戻るわね、早くさっぱりしてエルケさんに構ってあげて。」
流澪は俺と会話を終え家に帰っていく、俺も言われた通り早く戻ってやらないとな……情事は出来ないだろうがせめて起きた時に傍に居てやろう。
多少怒られるのは覚悟しないといけないけど。
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