第127話 キュウビの報告の件と魔族領の会議で出た意見をまとめるため話し合いをした。
キュウビの報告を受けた次の日、家で話した通り広場で各族長を交えて話し合いが行われることになった。
「みんな急なのに集まってくれてすまない、今日は昨日キュウビから報告を受けたことと、魔族領の会議で出された意見の件で話し合いをしたくて来てもらった。
まずはキュウビの件から行こう、またギガースが現れたらしい――場所は村から北西で、さらに深い谷の底から瘴気が漏れている可能性があるとのことだ。」
報告を聞いた皆は一気にざわついた、険しい表情をしている人も居る。
やはり他の皆の言う通り高頻度で現れすぎなのだろう、今まで発見されてなかったという事例もあればいいのだが……未確認な以上どうしようもない。
「それでここに集まってもらった理由なんだけど、シモーネさんにキュウビを呼んでもらおうと思って。
村長に報告した以外に何か情報が得れるかもしれないし、後は最悪一度帰ってきてもらって、ギガースを討伐した場所を地図に書き込んでもらい法則性があるかどうかの確認を取ってもいいかも。」
俺に続いてカタリナが意見を出す、わざわざキュウビを呼ぶというのはそういう意図もあったのか。
確かに今まで3体のギガースを確認している、地図と照らし合わせるともしかしたら何か分かるかもしれない。
「分かったわ、影法師の場所は……前と変わらないわね、移動出来ないのかしら?
もしもし、キュウビ?」
シモーネは何も無い空間をトントンと叩く仕草をする、分かってないと奇怪な行動をしているようで怖い。
「うひゃああああ!?
またシモーネか……ってなんだその人数は!?
私の恥ずかしいところが皆に見られているではないか!?」
険しいムードだったが、キュウビの反応を見て皆が笑い出す――キュウビには悪いがさっきの反応は助かったぞ。
「昨日村長にギガースの事を伝えたでしょう?
他に何か分かることはないかしら、流石にここ最近で3体のギガースは過去の事例を見ても多すぎるのよ。」
「そうは言ってもなぁ……特に何かあるわけでもないぞ。
強いて言うなら村長にも話した谷があるだろう、あれはかなり長い距離で地続きになっている、その近くだという事くらいだな。」
そんな長い距離が谷になっているのか、近くに住んでいる種族は不便だろうに……しかしキュウビが発見出来ないってことは何も住んでないのか?
「ダークエルフ族の里の近くにそんな谷は無かったと思うが……ノラ殿、どうだったか?」
「オスカー様の言う通り、ダークエルフ族の里の近くに谷は無いですね……キュウビさんが見つけたギガースは偶然なのでしょうか?」
ならダークエルフ族の里の近くに出たギガースは偶然なのか、それとも移動してきたのか……しかしいきなり現れて被害を出す魔物だとも言っていたな。
「一度ダークエルフ族の里の近くを調査してもいいかもしれない、もしかしたら谷が広がってるなんて事も考えられる。
瘴気も出ているという事だし、放っておけない事案じゃないか?」
自分で言っておいて物凄いファンタジーなことを言っている気がする、そんな短期間で谷が広がるはずも無いだろうし。
「なら私が今度調査しておくわ、谷には私が一番よく行くし。
ノラさん、また後でダークエルフ族の里の場所を教えて。」
「その時は私も行くわ、ウーテは妊娠してるしあまり無理はさせれないもの。
それに私の能力で何か分かることがあるかもしれないし、行くときには声をかけて。」
ウーテだけじゃ不安だったがシモーネも一緒に行ってくれるなら安心だな、親の先輩としても実力としても申し分ない。
「私はまだ影法師を繋いでいたほうがいいか?」
「そうね……この話し合いが終われば一度キュウビに合流して地図の写しをしにいくから、そこから動かないでちょうだい。
それとギガースの出た場所に印をつけておいて。」
「なんとも人使いの荒い……だが確かにあの魔物が頻繫に現れるとなると結構面倒だからな。
村で対策を打ってくれるなら協力するよ、今私が居るのは昨日と変わらず村から北西だ。
狐火を上空に出しておく、それを目印に私を見つけてくれ。」
そう言ってキュウビの影法師は姿を消した、どうやって合流するのかと思ったがキュウビが色んな妖術を使えてよかった。
「メアリーさん、他に何か打つ手はあるかしら?」
シモーネがメアリーに意見を求める、そのことに周りの人たちは驚いていた。
後から聞いた話だが、種族最上位であるドラゴン族が他の種族に何かを求める行為は、その力に置いて自分がその者より下だと認める事らしい。
俺に許可を求めるのは、と聞いたがそれはあくまで立場上の問題だそうだ。
閑話休題。
「そうですね……まずは知識を仕入れる段階からなのですが、ギガースは明らかにこの世界の魔物とは異質です、何か知ってることはありますか?」
「それはワシが答えよう、ギガースやストーンカ……それにコカトリスやカトブレパスをワシらは異形の者と呼んでおる。
今より相当昔にはもっと数がいたんだが、ワシやシモーネが世界を飛び回って討伐を繰り返すうちに数は目減りして今ではほとんど見かけなくなったぞ。」
オスカーの話を聞いてメアリーが少し考える、今の話で考える要素は無いんじゃないか?
「ドラゴン族の里の近くも調査をお願いします、それもかなり念入りに。
偶然かもしれませんがドラゴン族の里にドラゴン族が住んでいたからこそ、その異形の者を抑止していたという可能性も考えれるので。」
なるほど、そういう考え方も出来るのか……しかしそれが当たっていたらドラゴン族は村から出ていくことになりそうな気がする。
「分かった、そのようにしよう。
もし原因が分かれば排除して良いか?」
「可能ならそれでいいと思います、もし排除が不可能なら再度話し合いで対策を練りましょう。
原因を探し当てれなければそのまま帰還で、ただの偶然ということですし。」
オスカーとシモーネはそれを聞いて頷く、その辺の部隊も編成しないと……と思っていたら既にそのあたりの話は俺が知らないうちに始まっていた。
戦闘になるかもしれないとなると本当に話が進むのが早いな!?
「よし、ギガースの件についてはこのあたりでいいだろう。
今出た意見と情報を基にして、話し合ってる部隊を編成して動いてくれ。
次は魔族領の会議で出た意見について話し合いたい、まずは魔族領に駐屯地を作るという件についてだ。」
そうして話すこと30分ほどだろうか、駐屯地についてはローガーとヤンが主軸になってマルチンと話を進めていくことに。
魔族領を走る馬車のサービスと定期便はハインツが主軸になってギュンターと話を進めることになった。
どちらも魔族領が絡むのでこちらで決定は出来ない、定期便に関しては決めても良さそうだったが……どれくらい増やせば一番効果があるかを分かるのは魔族領だ。
闇雲に増やしてもケンタウロス族の労働力を無駄づかいしてしまうことになるからな。
それと、行商が来た時は極力お金を使ってやってくれとも話をしておいた。
既に経済混乱を懸念するということは、俺が思っている通り結構な量のお金が村に溜まっているということだからな。
これについても皆から賛成をもらえた、協力的で助かるよ。
「では、部隊の編成もほぼ終わった。
キュウビのところへはワシとノラが行ってくる、ドラゴン族の里の調査はドラゴン族・ウェアウルフ族・アラクネ族から2人ずつの計6人でという事だが大丈夫だろうか?」
「アラクネ族はまだ数が少ないが大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫です。
それにその調査のついでにアラクネ族の里へ行ってもらい、他の一族もこの村に誘致してもらおうと思いまして。」
なるほど、そういう事なら問題無い。
「分かった、それで行こう。
では早速キュウビとの合流、そしてドラゴン族の里の調査へ向かってくれ。
道中、それに調査の際は人命第一で気を付けて当たってくれよ。」
俺の号令と共に2部隊とも出発していった、異形の者とやらが関わっているし心配だな……本当に無事で帰ってきてくれよ。
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