第128話 暖房器具を無事購入することが出来た。
オスカーとノラ、それにドラゴン族の調査部隊が村を出発して2日。
まだどちらも帰ってきていない、調査部隊はともかくオスカーも帰って来ないのは想定外だったな……大丈夫なのだろうか。
事態が事態なのでかなり心配ではある、独りでギガースを倒せるキュウビや世界最強のオスカーを俺なんかが心配するのも失礼かもしれないが。
今は皆の無事を祈りつつ俺が出来ることをしよう、まずはカールと村の見回りをしてからウルスラの様子を見に行くことだ。
クルトも俺と同じ新米父親だからな、一緒に奥様方のところへ行って育児に必要な技術を学んでもいいかもしれない。
そう思いながらベビーカーにカールを乗せて見回りをしていると、かなりの大荷物をケンタウロス族に持ってもらっている行商がこちらへやって来た。
「よかった村長、早めにお声をかけることが出来て。
頼まれていた石油を使用する暖房器具です。
可能な限りという事でしたのでかなり数が多くなりましたが、村の住居数を考えると全てには行き届かないでしょう。」
「ありがとう、本格的な氷の季節の前に手に入って良かったよ。
皆で使う施設を優先的に、次は寒さに弱い種族から配っていくから問題無いさ。
出来れば村全体に行き渡るくらい欲しいから、引き続きこちらに融通出来るものがあれば買い取らせてくれ。」
「かしこまりました、私の出来る限りを尽くして村へ暖房器具を納品いたしますよ。
今回の分は倉庫に入れておいてよろしいでしょうか?」
「あぁ、それで頼む。
すまない、俺は商人へ代金の支払いをするために家へ行くから運んでおいてくれないか?」
ケンタウロス族は「分かりました。」と言って倉庫へ暖房器具を入れに向かってくれた。
俺は商人と家へ行ってお金の支払いをする、こうやって取引をするのは初めてだ――今回の代金の合計を記した紙をもらったが、どれをどれだけ払えばいいか分からないので袋ごと商人に渡した。
「すまない、一応貨幣の種類ごとには分けているが……数えるのは任せていいか?」
「もちろん大丈夫です、それでは数えさせていただきますね。」
そう言って商人は慣れた手つきで貨幣を数え始める、流石商人……お金を扱う手つきが尋常じゃなく早いな。
しかしそれを見ていてふと気づいたことがある、これは袋へ無造作に入れるより決まった枚数が入る箱を作って管理したほうが圧倒的に楽そうだ。
これには何枚入ってるぞと伝えれば数える手間が省けるはずだ、商人はこれだけ数えるのが早ければ必要ないかもしれないが、村の住民には充分役立つ。
幸い前の世界の貨幣のように、金貨・銀貨・銅貨とどれも大きさが違うので箱も作りやすそうだな、今度作って皆に意見を聞いてみよう。
「……確かに、今回の代金全てお預かりしました。
また次回もよろしくお願いします。」
考え事をしていると代金を数え終わったらしい、結構な金額が提示されてたが本当に早かったな。
「ありがとう、こちらこそ頼りにしているよ。」
商人は他の種族の所へ営業に行ってから帰るらしくプラインエルフ族の所へ向かっていった、さて俺も見回りの続きをするとしようか。
見回りを終え、その時に各種族へ寒さに強いかどうか尋ねてみた。
結果ドラゴン族はほぼ平気でプラインエルフ族とアラクネ族はかなり寒さが苦手らしい、その他の種族は得意でも苦手でも無いらしい……思ったより皆寒さに強いんだな。
だが温かくしてないと体調を崩したりすることもある、暖房器具はあるに越したことはないはずだ。
見回り自体は何も異常無く、改善案も無かったので暖房器具を各種族に配ることにする。
まずは失礼して俺の家と食堂とお風呂の脱衣所へ、後は寒さに弱い種族から順番に配っていくことにしよう。
1つ1つ運んでいると、ケンタウロス族が手伝ってくれると言ってくれて荷車へ一気に積み込んでプラインエルフ族とアラクネ族の住居へ運んでくれた、助かったぞ。
もしこれをずっと1人でやっていたら今日中に終わるか怪しかった……でも皆仕事してて声をかけづらかったんだよ。
今ある在庫は数台を残して2種族全ての住居へ配り終えることが出来た、他の種族に配るには全然足りないので故障時の予備用のために倉庫へ保管しておくことにする。
そしてそのままウルスラの様子を見るためにクルトとラウラの家を訪ねに向かった。
玄関をノックするとクルトが出迎えてくれる、ラウラとウルスラは中にいるそうだ。
「村長いらっしゃいです、ウルスラは寝てるですよ。」
ラウラにそう言われて布団を覗いてみると、ウルスラはスヤスヤと寝息を立てていた……赤ちゃんはやはり癒されるなぁ。
ラウラは倉庫にあったポーションを飲んだらしく、産後だがとても元気そうだ。
「カールが使っているようなベビーベッドやベビーカーが必要なら言ってくれよ、資源は充分にあるからすぐに作れるからな。」
「あ、それは欲しいかも。
1回見に行ったけどベビーベッドはすごい良さそうだったから。」
「ベビーカーも欲しいですね、クルトは大丈夫かもしれないですが、私はハーフドラゴンにならないとウルスラを抱いたまま移動するのは少し疲れるですし。」
「ならどっちもこの後作って持ってくるよ、いい物は早めにあったほうがいいだろうからな。」
ベビーベッドは寝かせるときに屈まなくていいし、ベビーカーは言わずもがなとても便利だ。
何より赤ちゃんが寝てても日よけを出してやれば気兼ねなく押して移動出来るのがいい、抱いて移動すると気を付けながら移動になるからな。
「そういえばクルトは奥様方の育児訓練に参加したことはあるのか?」
「何回か参加したけど全然上手くならなかった……ああいう作業はどうしても苦手で。」
「私は妊娠中に参加したですが、確かにクルトはダメダメですね……。
周りの女性たちも助けてくれるですし、出来なくても問題はないですけど。」
前の世界と違って近隣との助け合いがしっかりしているから困らないんだろうな、しかし何回か参加して苦手だと意識したなら無理に誘うのも良くないかもしれない。
ウーテもチマチマした作業が苦手だと言っていたし、ドラゴン族は総じて苦手なのか?
しかし他のドラゴン族はそういったことを乗り越えてきているはず、そうじゃないと繁殖が出来てないんだから。
「シモーネや他のドラゴン族の奥様にどうしてたか聞いてみるのはどうだ?
そういう作業が苦手なりにどうにかする方法を知っていると思うぞ。」
「そういえばそうだよね、今度聞いてみる。」
そんな他愛のない世間話をして、ふとラウラがハーフドラゴンになった経緯を聞いてみたが……2人とも顔を真っ赤にして教えてくれなかった。
この村に来た時はあんなませていたクルトがあそこまで赤面するなんて……一体何をしてハーフドラゴンになったのか。
余計気になったがこれ以上聞くのは可哀想に感じたので、ベビーカーとベビーベッドを作って持ってくることに。
まずはベビーカーを錬成して、その後ベビーベッドを錬成する場所を2人の家に。
2人にお礼を言われたが当たり前の事をしたので気にしないでいいんだけどな、俺にしか作れないものは俺の仕事なんだし。
そう思いながら2人の家を後にして、商人との取引中に思いついた貨幣入れを作るために一度家に行って貨幣を取りに向かっていると、シモーネとウーテがドラゴン族の姿でこっちに向かってきた。
2人は俺の前でいつもの人の姿に戻ると、深刻な顔をして俺に報告してきた。
「村長、もしかしたら村長の言った通りあの谷は広がってるかも。
ダークエルフ族は近くに谷なんか無いって言ってたけど、今見てきたら気づかなきゃおかしいところに谷があったの。」
「それと、谷からは瘴気の他に無数の生命力と魔力が見えたわね。
あの谷底に何かが住んでる……もしくはどこかに繋がってると考えるのが妥当かしら。」
メアリーも交えて詳しく話を聞こう、思った以上に深刻な事態かもしれないぞ。
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