第68話 錬金術でカレーを作ってみた。

農村から村に戻ってから2日が経った。


昨日は魔族領への食糧の補充をしていたので、今日は農村でもらった香辛料の種を育ててみる。


カレーが出来れば万々歳だが、もし出来なくてもドワーフ族は充分喜ぶだろう。


早速カタリナに植えてもらい、俺が育てて収穫……輪作障害なんて意識したことなかったから改めて想像錬金術イマジンアルケミーの有難さを実感する。


「俺はこれを持ってドワーフ族のところに行ってくる、カタリナは種を保存して倉庫にしまっておいてくれ。」


「はーい。」


さて、カレーが出来たならきっと人気メニューになるはずだし――成功するといいな。




「デニス、今厨房にある全種類の香辛料を持ってきてくれないか?

 あとは、肉・じゃがいも・にんじん・玉ねぎ・お湯・皿を2つ頼む。」


「わかったぞい、しかし村長が料理でもするのかの?」


ちょっと試したいことがあってな。


しばらくすると、デニスが今言ったものを全て持ってきてくれた……そんなに量はいらなかったんだけど。


とりあえず2人分のカレーを思い浮かべる……光った!


「デニス、今から俺が指を差す香辛料は片付けてくれ。

 残った香辛料は確実に覚えていてくれよ。」


「うむ、わかったぞい。」


俺は久々のカレーに胸を躍らせながら錬成をした、目の前にあるのはまごうとなきカレーだ。


「これは……?」


「俺が前の世界で食べていた料理の一つ、カレーだよ。

 一昨日魔族領の農村で香辛料の種をもらってな、村には無い香辛料が結構あったからもしかしたらと思って試してみたらビンゴだったってわけだ。

 温かいご飯と一緒に食べたら美味しいんだよ。」


「見たことない料理、そして食欲をそそる香り……ご飯と合うというならよそってこないわけにもいかんのう。」


デニスは後ろ姿から分かるくらいウキウキしながらご飯をよそいにいった、俺もものすごくワクワクしてる。


まるで小学校の給食のメニューで出てきたカレーの気分だ。


「待たせたの、さて……では早速。」


俺もいただこう、想像錬金術イマジンアルケミーで作ったから俺の知ってるカレーになってるはずだ。


「ほほほー!

 これは、これはすごいぞい――美味すぎる!」


本当にうまい、前の世界と比べ物にならないぞこれ。


全ての材料の質の問題だろうか、久々だからだろうか……両方だろうな。


今までで一番美味いカレーを食べてる、他の皆にも食べさせたい。


「デニス、これを作る前に材料を覚えてもらってたよな。

 これ……俺の想像錬金術イマジンアルケミー無しで再現出来るか?」


想像錬金術イマジンアルケミーでは作れる、だがドワーフ族が再現出来なければ俺しか作れない料理になるんだ。


俺はそれでも全然構わないが、もし再現出来るなら気軽に出せるメニューになるだろう。


「ワシらドワーフ族を侮るでない、色々試作しなければならんじゃろうが……2日以内に再現、いや更に美味く作ってやるぞい。」


本当にドワーフ族は頼もしい、俺がどれだけ食糧を大量に作っても最大限生かしてくれるドワーフ族が居ないとここまで村に人は集まらなかっただろうな。


食べれるだけでありがたいのかもしれないが、食べるものはやっぱり美味しいほうがいいに決まってる。


「よし、じゃあ任せるよ。」


「うむ、カレーの再現が終われば他の料理も挑戦したいぞい。

 出来そうなものがあればまた教えてくれれば嬉しいのぉ。」


結構前に醤油は作ったよな、豚もダンジョンで獲れるし……ラーメンでも作ってみるか。


でもこの村でお箸を使う人は少数派だからな、食べづらかったら悪いがまぁ一応やってみるか。




カレーも無事出来たので、少し休憩。


「村長、さっきの香辛料が足りないってドワーフ族がものすごい表情で私のところに走ってきたんだけど。」


カタリナがドワーフ族に気圧されて少しビビッてしまっている、そこまですごかったのか。


すぐ対応しよう、大事なことだからな。


対応し終わり、十分な在庫も用意したのであらためて休憩していると「開どの、少しいいか?」とオスカーが俺を訪ねてきた。


珍しいな。


「大丈夫だぞ、どうしたんだ?」


「ミハエルが巨悪の魔人になったというダンジョンがあっただろう、ふと考えていたのだが……ダンジョンコアを破壊してないのではと思ってな。

 当時あの強さだったミハエルが強いと感じる魔物の配置、あの時代から今現在までミハエルより強い魔族か部隊がいなければまだ活性化状態じゃないだろうか?」


確かに、妖狐の影法師は倒したがその直後に憑りつかれて巨悪の魔人になってしまったからな。


破壊衝動の時にもし破壊していなければ……いや、ある程度操れた可能性があると考えたほうがいいかもしれない。


恐らく、ダンジョンは未だ未踏破だ。


「妖狐というヤツが影法師を使って相手をするような奴には、うってつけの対策が出来る人材がこの村には居るからな……是非ワシをリーダーとしたダンジョン討伐部隊を編成したいと考えておる。」


うってつけの人材?


「私ですよ。」


オスカーの後ろから、ラウラが顔を覗かせた。


なるほど、索敵魔術か。


「だがやめておいたほうがいい、ミハエルが言ってただろ?

 オスカーに負けた後、憑りついていたものが抜けていったって――遠くに居ながら影法師と視野を共有できるんじゃないか?」


「わかっておる、だからダンジョンにはワシが1人で行くのだよ。」


どういうことだ、オスカーが操られたら本当に世界は終わるぞ!?


「ワシの炎を舐めるでないぞ、ちと本気を出せばいかなる存在をも灰燼と化してくれるわ。

 影だろうが幽体だろうが、敵ではない。」


集団暴走スタンピードは過去にないみたいだから、放置してても問題は無いが……間違って入った冒険者が亡くなる事例は気づかれなくてもあっただろうな。


「しかしダンジョンにはオスカー1人、他の部隊はどうするんだ?」


「私が本気で索敵魔術を展開するです、恐らく妖狐の影がオスカー義父様を認識すれば索敵魔術に引っかかるはずです。

 そこを他の部隊で一気にケリをつける感じですよ。」


血気盛んだなぁ、だがまた第2のミハエルのような犠牲者を出すわけにもいかないな。


オスカーの目がキラキラしているので、戦いたいのはわかるがそんな危険なことをしなくても……。


「まぁ、勝算があるならいいけど……決して自惚れではないよな?」


「当たり前だ、狐ごときに遅れは取らぬわ。」


「ちなみにシモーネの雷のブレスの射程距離はどれくらいなんだ?」


「知らぬが、シモーネが本気を出せば世界の裏側までも届くのではないか?」


それなら一応やり方があるな。


「ラウラ、索敵魔術に引っかかったらすぐには突撃せずシモーネとよく話して正確な位置を教えるんだ。

 位置合わせが終わればそこに渾身のブレスを放ってもらえ、反応が消えればよし、消えなければ全部隊突撃だ。

 後は念のため思念を使えるミハエルも連れて行っておけ、ダンジョン内に本体が居ればオスカーに知らせるといい。」


「わかったです!」


本当に気を付けてくれよ、あと冒険者ギルドに行くときドラゴン族は村で待機、ミハエルかグレーテとラウラだけで行くんだぞ。


首都が混乱したら絶対怒られるから。

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