第67話 魔族領の農村で起きた連作障害を解消した。
最初の食糧出荷から1週間ほど経った。
ギュンターと相談して、確保してもらった土地に保管庫を2棟作り毎日そこから食糧を支給したほうが新鮮なものが食べれるという声があがったらしいので、それに合わせて対応。
向こうには生活魔術がないからな、確かにそのほうがいい……この声を上げてくれた人に感謝だ。
向こうにはミノタウロス族とケンタウロス族が2人ずつ、プラインエルフ族が1人を交代で出張してもらっている、村の負担にはまったくならないらしい。
まぁ何かあってもすぐ帰れるし、問題ないだろう。
さて、次の問題は農村の連作障害の解決だなぁ……よくよく考えると土地を移住してもらったほうが対応は楽だが、住居の問題がある。
だが現在魔族領の大工はお風呂の整備のため技術者はほとんど出ずっぱりだと言っていたんだよな。
少し落ち着いて対応したいので、食堂でちびちびお酒を飲みながらメアリー・カタリナ・ウーテと考えている。
「確かに開様の言うことが原因なのでしたら、障害が起きてない土地に引っ越したほうが手っ取り早いですね。
開様が住居を用意するのは、些か出すぎた真似かもしれません。」
「そうかしら、
「とりあえず農村に意見を聞きに行っていいと思うわ。」
カタリナの思想が少し危なかったが、ウーテの言う通り農村に意見を聞くのが一番だろう。
だが、全部俺が解決してしまうのはメアリーの言う通り出過ぎた真似かもしれないんだよな。
「魔王様、村長に一任するって言ってなかったっけ?」
――そうだった。
わざわざ悩むことなかったじゃないか、と頭を抱えると3人に笑われた……恥ずかしい。
後日、農村に行くため倉庫前に居た魔族に農村の場所を聞いてウーテと出発する。
確認のために肥料を小袋に少し詰めて、腰からぶら下げておくか。
「さて、どんな意見が出てくるかな。」
農村に到着すると、住人全員が膝をついて「何卒ご慈悲を……!」なんて言ってる、なんだどうした。
「俺は魔王から作物の不作を解決するように言われて来た、未開の地の村の村長だ。
なぜ許しを請うような真似を?」
「畏怖の象徴であるドラゴンがこのような農村に来られるなど、私たちが何か不手際をしてしまったのではないかと……天罰を与えられるのでは?」
しまった、ドラゴン族に乗って移動するのに慣れすぎて普通に村の中まで入ってきてしまったのか。
ウーテも人間の姿になって「やっちゃった……。」と少しへこんでいる。
「大丈夫だ、俺とこのドラゴン族は友好関係にある。
天罰なんて与えるつもりはない、俺はこの農村を助けに来たんだから安心してくれ。」
俺がそう言うと住人は抱き合って喜んでいた、怖がらせてすまなかった。
「農村の代表と話がしたいんだが、今時間は大丈夫か?」
「はい、私が代表です……今の状態だとほとんど仕事が無いので大丈夫ですよ。」
思ったより若い魔族が代表なんだな、他の種族の長や代表は年長だったので少し驚いた。
代表の家に招かれ、今後について話をすることに。
「今この農村が農業を再開するには2つの選択肢がある。
1つは新しい土地で開墾し直し住居を構えて農業をする、もう1つはこの土地の障害を直し農業を再開する。
この2つだ、俺はどちらでも手助けをするから安心してくれ。」
「私だけで決めれる話ではないですが、私個人としてはこの場所で再開したいのが本音です。
しかし、不作になってしまうとどうしても開墾をし直さなければならないので……住民もそのたび移動を強いられており疲労はしているので同じ意見が多いかと。」
そりゃただの引っ越しじゃない、すべてを一からだものな……あの魔王が支援をしていないとは考えにくいが負担になるのは間違いない。
「この土地の利便性は特に不満なんかはないのか?」
「それは大丈夫です、商人ギルドがきっちり行商を出してくれており作物の買い取りと納税代理、生活用品の買い物まで全て対応してくださってるので。」
農村の人はここで仕事に専念していればいいわけか、合理的。
「わかった、一応住民の意見も聞いてきてもらっていいか?」
「わかりました、すぐに戻りますので少々お待ちください。」
やっぱり聞いてみないと分からないものだな、でも確かに住居はまだ新しめだからここに移動して何年も経ってはいないだろう。
それでまた移動っていうのは確かにしんどい、俺も前の世界で2回引っ越ししたことがあるが、業者に全部丸投げしても大変だったからな。
俺は念のため持ってきた肥料と障害の起きてる土で肥えた土を錬成しようとする。
――ちゃんと光るな、持ってくるものは大量の肥料だけで良さそうだ。
だが、二毛作をしようとなると田畑の面積が狭いかもしれないな、それは戻ってきたら助言するか。
「お待たせしました、全員一致で移動せずここで農業を続けたいそうです。」
方向性も決定、酒を飲みながら悩んだ時間は完全に無駄だったな。
確認、大事。
「わかった、では準備をして明日にでもまた来ることにするよ。
もし暇を持て余してるなら、田んぼは倍くらい、畑は今の3~4倍は面積があったほうが対策しやすいんだ。
明日までになんて無茶は言わないから、耕していてくれないか?」
「暇も体力も持て余しております、すぐに皆で取り掛かりますよ!」
よかった、その調子ならすぐにいい作物が育つようになると思うから頑張ってくれ。
そう言って、俺とウーテは魔族領の農村を後にした。
次の日。
大量の肥料と5人のミノタウロス族を連れて農村へ訪れた。
昨日で分かってくれたと思ったが、ドラゴン族が増えた上ミノタウロス族まで来ると思ってなかったらしくプチパニックを起こしてしまう。
この辺の感覚、もっと普通に寄せないとダメなのかもしれない、魔王や城の皆にもストレスを与えてしまってるかもしれないしな。
今度聞いてみよう。
閑話休題。
俺が田んぼと畑の土に
そして住民にどこまで田畑を広げるか聞いて、皆で開墾を手伝う。
ミノタウロス族は村の開墾をもしてくれているから、流石に早いな。
ドラゴン族はクワを振り下ろすよりドラゴンの姿で土を抉ったほうが早いんじゃないかと試している、耕したところがガッチガチになってるからやめてあげてくれ。
それを聞いて諦めたのかドラゴン族も一緒にクワを振るって開墾、もちろん俺も手伝っているぞ。
なんとか日が暮れるまでに目標を達成出来たな、ほとんどミノタウロス族がやったようなものだが……スタミナまで底なしなのだろうか。
「よし、これで収穫したら次は明らかに葉の形が違う野菜をその畑で育てるんだ、それで不作は今後起こらない。
もし起きてしまったらすぐ魔王に報告してくれ、すぐに俺が対応に来るから。
田んぼは稲と麦を交互に育てれば問題ないからな。」
「ありがとうございました、これでまた農業を続けることが出来ます!
何かお礼をお渡し出来ればいいのですが、何しろ本当にただの農村なもので……。」
「魔王に頼まれたことでもあるし、俺がやりたかったことでもあるから気にしなくていいぞ。
そうだな、何かを渡して気が済むなら香辛料の種をいくつか分けてくれないか?」
俺がそう言うと、村長はキョトンとした顔をする。
「そんなものでいいのですか?
何でしたらある程度備蓄がありますので、すぐ使えるものをお持ちしても大丈夫ですが。」
「俺の村でも畑があってな、そこで育てれないか試してみたいんだ。
こっちにはない種類がもしあれば村の食事のレパートリーが増えるし。」
「そう言うことでしたら、そのようなものでよければ是非持ち帰ってください。」
そう言って代表は村で育ててる全種の香辛料の種を渡してくれた、俺にとってはこれだけで大盤振る舞いしてもらった気持ちだ。
この香辛料があれば、もしかしたらカレーが出来るかもしれない。
早速村に帰って確かめてみるぞ。
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