第169話 ラミア族とハーピー族が村に到着したので宴会を開いた。
「ちょ、え、開様!?
これはどうなってるんですか!?」
ラミア族とハーピー族を連れて帰って来たメアリーが村を見渡してキョロキョロしながら叫んでいる、俺は事情をメアリーとラウラを含めた全員に説明。
横でラミア族の一人が「メアリーさんがあんなに狼狽えるなんて……。」とポツリと呟くのが聞こえた、かっこいい時とこういう時のギャップがいいので俺は大歓迎だけどな。
「なるほど、あの時話してた事を実行されたと……せめて一言相談が欲しかったです。」
「すまないな、カタリナが図面を持ってきてこれはいいと思ってしまって。
だが数日過ごしてもらって快適だという声のほうが多いから成功してると思うぞ?」
「それならいいですけど……。
そういえば紹介が遅れましたね、こちらがラミア族とハーピー族です。」
メアリーが2種族を見ながらそう言うと、2種族の長らしき2人が俺に物凄く深い一礼をする。
「ラミア族の長、ユリアです。
移住を受け入れてくださりありがとうございます……まだ年端の行かない未熟者でご迷惑をおかけするかと思いますがどうかよろしくお願いいたします。」
「ハーピー族の長、イェニファーです。
今回は村の力を疑ってしまい申し訳ございませんでした、罰はなんなりとお受けしますのでどうか移住をお許しください。」
これまでで一番丁寧な挨拶をされて戸惑ってしまう、そこまで畏まらなくてもいいのに。
「俺がこの村の村長の開 拓志だ。
村長なんて肩書だが普通の人間だし、神からもらったスキル以外何の取り柄もなくて皆に助けてもらってる。
仕事をしてくれれば移住は大歓迎だし、知らない土地の力を鵜呑みにするのは無理なのも分かってるから罰もないぞ。
それよりまずは居住区の整備だ、どんな住居がいいか教えてくれれば準備するから向こうに見せる整地できた場所までついてきてくれ。」
そう言って俺とユリアとイェニファーの3人で居住区予定地へ向かう、他の人達は軽く食事と村の施設の案内をするということでメアリーとラウラ・それにドラゴン族やアラクネ族と逆方向へ歩いていった。
「メアリーさんから話には聞いてますが、本当にすぐ住居を建てる事なんて可能なのでしょうか……。」
「私もラウラさんから聞いてるけど、村の食糧の豊富さを見て大丈夫だと思ってるよ。
どういう仕組みかはさっぱりだけどね。」
「仕組みは俺も良く分からん、だが魔力と材料を消費すれば俺の思ったものが作れるんだ。
とりあえずラミア族からだ、住居の希望と棟数を教えてくれ。」
俺はユリアから希望を聞いて早速
「さて次はハーピー族だ、イェニファー頼むぞ……どうした?」
2人は目を真ん丸にして固まっている、メアリー達から話を聞いてるし気絶はしないと思ってたから安心してたんだけど……大丈夫か?
「「こんなこと出来る人がただの人間なわけないじゃないですかー!?」」
2人は声を揃えて大声で叫んだ、耳が痛いからもう少しボリュームを抑えてくれ。
その後気絶はしなかったのでハーピー族の居住区も無事完成、夜は宴会なので今のうちに村のルールと施設案内をするために村を回ることに。
「
「説明をされてても驚かないのは不可能ですからね!?」
ユリアから間髪入れずツッコミが入る、こればっかりは慣れてもらうしかないのでしょうがないんだけどな。
「しかしこの村の施設全部村長が作ったって、本当にすごいよね。
未開の地に住んでる種族には考えられないよ、その日生きるので精一杯だったし。」
「これからは自分の得意な事を仕事にしてくれていいからな。
そういえばラミア族とハーピー族は何が出来るんだ?」
仕事を割り振る上で重要なことを聞いてなかった、もし何か問題があるなら解決しないといけない。
「ラミア族は魔術を使ったこと全般ですね、農業・戦闘・採掘は魔術を使ってしていました。
後は過去にメアリーさんから話を聞いて生活魔術も少々。」
貴重な魔術を使える種族だ、魔術で採掘というのは村にない技術なので役立ててほしいな。
それに攻撃魔術が使えるようだし、ミハエルが喜ぶかもしれない。
「ハーピー族は狩りと見ての通り空を飛ぶことかな、ドラゴン族には劣るかもしれないけど静かに飛んで状況を確認する時なんかはハーピー族のほうが役立てると思う。」
そう言うとイェニファーが静かに飛ぶのを実演してくれた、少し風を切る音がする程度でほぼ無音でふわぁっと空に舞っていく。
これは緊急時の密偵や事を荒立てたくない時には役立ちそうだ、ドラゴン族だと畏縮させてしまいそうだからハーピー族なら魔族領や人間領の空の哨戒の依頼があれば任せれるだろう。
「2種族の得意なことは分かったよ。
大体やってもらう事は決まったが一度話し合いをして改めて伝えるから、それまではゆっくりしてくれ。
今日は村の案内が終われば宴会だから、仕事は次の日以降だな。」
「え、この間宴会をしていたと言ってたのに……あっ。」
そう言ってユリアは口を抑える、なんだ知っていたのか。
「ユリア、村に斥候を出してたでしょ?」
イェニファーがユリアを睨む、以前から村を認知していたのならそういうのを送っても仕方ないと思うが……よくうちの警備をかいくぐって情報を手に入れたな。
ラミア族は思ったより隠密が出来るのかもしれない。
「でもユリアのいう事が本当なら、食糧はほぼ無限にあるということよね。
村長、どうなのかしら?」
「無限というのは語弊があるが、種と栄養のある土さえあれば
肉に関してはダンジョンコアの所有者になって家畜を発生させるようにしてるから、それを狩れば実質無限かもな。」
それを聞いたユリアとイェニファーは「「そんなのずるい!」」と口を揃えて俺に迫ってくる、この2人本当に争っていたのか?
実は物凄い仲良しだろ。
2人を宥めながら村を回って説明を続ける、簡単に説明を終えると「それだけでいいんですか!?」と驚かれたが皆そうなので問題無いぞ。
説明を終えて、住居に荷物を入れてその後は宴会。
大いに盛り上がってくれているようで何よりだ、2種族も村の住民と上手く打ち解けてくれているし。
俺がビールとつまみをつついていると、デニスが後ろから声をかけて来た。
「村長、そろそろあのワインを出すか?」
やっぱり悪い顔をしている、この表情のデニスは新鮮で面白い。
「そうだな、そろそろ皆に配ってやってくれ。」
俺も悪い顔になってデニスにお願いする、デニスが他のドワーフ族に指示を出しに離れるとウーテが横から顔を出してきた。
「デニスさんとあんな顔をして話すなんて珍しいわね、何を企んでるの?」
自分もその話に乗せてくれといわんばかりの表情で俺に話しかけてくるウーテ、皆こういうノリが好きなのだろうか。
俺は小声で何をするか説明、ウーテは新作のワインが飲めないのをかなり残念がっていたが皆が驚く表情が見れるので良しとしてくれるようだ。
「あ、それと村長のポーションだけど。
つわりにも効果抜群よ、飲み始めてから一回もつわりが来てないわ。」
それはよかった……と思ったが本当に体にいいのか不安にもなる。
「それはいいが異変を感じたら飲むのをやめてくれよ、お腹の子に何かあったら大変だからな。」
「それはもちろんよ、今のところ問題無さそうだし大丈夫だと思うわ。
それよりワインが配られ始めたわよ……あ、驚いてる驚いてる!」
ウーテがキャッキャと喜びながらロゼワインを飲んでる人を指差してニコニコ顔になっている、いつの間にか横に居たデニスも一緒になって喜びながらスパークリングワインを口に運んでいる。
結果としてはほぼ全員驚いてくれたのでこの悪だくみは大成功、俺達3人は途中から我慢できなくて笑い出してしまってメアリーとカタリナから軽く注意を受けた。
だが2人ともちゃっかりロゼワインとスパークリングワインを両手に持っていたのであまり説得力がない、感想を聞くと「美味しいですよ!」と半ば逆ギレ。
美味しいならよかったよ。
住民に馴染めはしたが雰囲気に馴染み切れないようだったラミア族とハーピー族には悪いことをしたかもしれない、明日はきちんと仕事を決めて伝えようと思う。
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