第170話 俺の企みを妻達に相談した。
ラミア族とハーピー族が村に来た次の日。
村に住んでる種族の長とユリアとイェニファーを加えて話し合いが行われた。
「ではラミア族には鍛錬所で攻撃魔術の師・魔術での採掘と遠距離専門の警備と生活魔術でプラインエルフ族の補佐を。
ハーピー族にはドラゴン族と空の哨戒と魔族領の護衛補助を……ということでよろしいでしょうか?」
メアリーが話し合いで決まった2種族の仕事を告げる、問題は無いし俺は賛成だぞ。
「ラミア族は大丈夫ですよ。」
「ハーピー族も、ドラゴン族が少し怖いけど。」
生存本能なのだろうが、悪さをしない限りドラゴン族が優しいから怖がらないでやってくれ。
オスカーが怖がられてちょっと嬉しそうにしてるけど……恐れられたいのかそうじゃないのか良く分からないな。
「あの、ちょっといいですか?」
長が出て来ずすっかり話し合いに顔を出すようになったアストリッドが手を上げた。
「どうしたんだ?」
「航海の護衛でハーピー族の力があればより安全になるなぁ、と思いまして。
マーメイド族も海の魔物ならリヴァイアサンやクラーケンのようなふざけた存在じゃなければ倒せますけど……空を飛んでる魔物も多少は居るんです。
私達も応戦はしますが、漁師さんの補助程度しか出来なくて……ハーピー族が居れば盤石だと思ったんですよ。」
「そんなことがあったのか、早めに相談してくれれば対応したのに。
どうだろうオスカーとイェニファー、そちらにハーピー族を回すことは出来そうか?」
俺は今決まったことを変更することになるので大丈夫かどうか確認する、恐らく問題無いとは思うけどな。
「ドラゴン族は委細問題無い、航海の護衛はワシらの力じゃ大きすぎて邪魔になるだろうしハーピー族が適任だろう。
ある程度人数が増えてくれるだけでも助かる、航海の護衛はマーメイド族と相談して人員を割り当ててくれ。」
「ハーピー族も大丈夫、疲れたら船で休ませてくれれば。」
良かった、なら次の護衛からハーピー族も一緒に行くという事で。
護衛の数は魔族領と人間領に各1人ずつで問題無いらしい、そこまで空を飛ぶ魔物が多いわけじゃないんだな。
「じゃあ今日はこれで解散、各自仕事を頑張ってくれ。」
俺の合図と共に皆が仕事へ戻っていく、しかしこの村の住民もだいぶ増えたなぁ。
人間とクズノハやシュテフィのような例を除くと10種族以上、村の住民も600人前後になっているだろう。
当初思っていた長閑な第2の人生とはかけ離れた生活をしているが、今は今で楽しいので問題は無い。
キュウビが旅の途中で移住を希望する種族を見つけるともっと増えるだろう、そうなるとここは村じゃなく町になりそうな気がするな。
町の定義があまり分からないが……一体どうやって定義しているんだろうな?
だが魔族領にも人間領にも属してない、いわば独立した地なので気にする必要はないのか。
皆が呼びやすいように呼べばいい、恐らく未開の地の村という名前は変わらないだろうけど。
そんなことを考えながらカールを連れて村の見回りへ向かう、ラミア族とハーピー族が初めて仕事する日でもあるし念入りにしておかないとな。
「おや村長、散歩かの?」
見回りをしていると魔王から声をかけられた、一応魔族領のトップなはずだけどナチュラルに1人で村に来るようになったな。
だが想い人が離れた地に居るし仕方ないかもしれない、村だから大丈夫だと家臣から思われてるのは光栄だと思っておこう。
「見回りだよ、昨日から新しい種族が村に移住してきたからちょっと念入りにな。
そうだ、航海の護衛にハーピー族が加わることになったんだ、よろしくな。」
「なんと、空の護衛も加えてくれるとはもう盤石じゃの!
それは漁師達も喜ぶと思うのじゃ、恩に着るぞ!」
「俺は仕事を振っただけだよ、村のために仕事をしてもらってるからな。
航海の護衛は魚を仕入れるための重要な仕事だから。」
俺がそう言うと魔王が「お、そうじゃ。」と何かを思い出した様子、どうした?
「そのルートで魚を仕入れるようになってから魔族領へツケっぱなしになっておるお金はどうするんじゃ?
経理が定期報告で金額を見るたび恐怖しておるから、早めに処理してやれると助かるのじゃが。」
経理が恐怖するくらいツケてるのか、どれくらいツケているか全く知らなかったから何も考えてないぞ。
というかもう半分以上は使ったつもりでいたんだが……全然使えてなかったのか?
「とりあえず前の神殿建設費用の半額は出すよ、それ以外の使い道は……考えておく。」
「それは無理じゃ、あの件の処理はもう済んでおるからの。」
お金に関してはホントにきっちりしてるな魔族領、融通が利かないが不正を許さない厳しい仕事の仕方で感心するよ。
「うーん……また何か相談しておくよ。
近いうちに魔族領で大きく使う予定ではあるから。」
「おぉ、それは楽しみじゃの!
また何かするときは関わらせてほしいのじゃ、村と何かする時はビックリの連続で新鮮じゃからな!
さて、私はクズノハのところへ行ってくるのじゃよ。」
魔王は手を振りながらクズノハの家へ向かっていった、仲が良いようで何より。
それと俺がやりたいことに魔王は絶対関わってくるから安心してほしい……しかし村から集めてるお金でするつもりだったんだよな。
妻達だけにでも相談してどうするか決めたほうがいいかもしれない、もう少し俺の中だけで進めるつもりだったけど。
見回りを終えて帰宅、ラミア族もハーピー族も普通に仕事が出来ているようでよかった。
家に入ると「あー勝てないー!」とウーテの大きな声が聞こえた――どうしたんだ?
声のする部屋へ行くと3人で将棋をしていた、メアリーは見ている側だけど。
「将棋って難しいのね……。」
「いや、ウーテはその場その場の対応しかしてないから読みやすいのよ……もっと先を読まなきゃ。」
盤面を見る限りカタリナの圧勝……ウーテ、どうやったら残りが歩と玉将1枚ずつになるんだ?
俺とメアリーが対戦した時でもそこまで酷いことにはならなかったぞ。
「どうしてただの歩兵で将って書いてる駒が取れるのよ!」
「そういうルールだからよ。」
「そうですね。」
「そうだな。」
3人からツッコまれて大の字になって倒れ込むウーテ、どうやら勝てないのを悟ったらしい。
「そうだ3人とも、ちょっと相談があるんだけど。」
「村長の頼みはいつも楽しい事か大変な事だからなぁ……後者じゃないのを祈るわ。」
「確かにここ最近トラブル続きでしたので……。」
「私は何でもいいー。」
ウーテは負けてしまって投げやりになっている、大変なことではあるが楽しい事でもあるからちゃんと聞いてくれ。
「――という事をしたいんだよ、前に俺が言ってた村から集めたお金でしたいと言ったのはこれだ。
だが魔族領へのツケが想像以上に残っていてな……それを使おうと思っている。」
「いいわね、そんな面白そうなこと大きくやらなきゃ!」
「そうですね、私もそれは賛成ですよ!
村の事でもありますし!」
「今から何が出来るかしら、とりあえず魔族領の経理の人からツケてる金額を知ること?」
ウーテも話を聞いてやる気が復活している、だがウーテの言う通り金額を知ることは大事だな。
というかウーテ、そういう頭の回転は早いのに将棋は弱いんだな。
カールを寝かしつけて4人で興奮気味にどうするか相談をしていると、いつの間にか寝落ちしてしまっていた。
全員ベッドで寝なかったので「体が痛いぃ……。」と悲鳴をあげながら食堂へトボトボ歩いていく……次からは気を付けよう。
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