第195話 商店街を解体、デパートを作製した。

俺は話し合いが解散した足でクリーンエネルギー機構の研究所に向かう、今の時間なら間違いなく流澪が居ると思ったからだ。


扉を開けると案の定だった、ダークエルフ族を始めにケンタウロス族やドラゴン族が居ることは意外だったが。


「流澪、少し相談があるんだけどいいか?」


「分かったわ、少ししたらそっちに行くから待ってて。」


そう言われて待つこと1時間、本当に来るのかと不安だったが俺が椅子に座ってウトウトしていると「お待たせ。」と流澪から声がかかる。


「忙しいところすまないな、デパートについて少し相談があって。」


「とりあえずひと段落したから大丈夫よ、それにアルミニウムなんていい素材を使ってくれたから楽を出来そうだし。

 それでデパートについて相談って何かしら?」


俺は話し合いの内容を流澪に伝える、すると物凄い深いため息をつかれた。


そんな反応をしないでくれ、傷つくから。


「結果だけ話してもどうなるか分からないに決まってるでしょ……その結果から起こる現象や利益をきちんと説明しないと。

 ただ1つの建物に色々なお店が入るっていう結果だけなら商店街と変わりないじゃないの。」


流澪に指摘されてハッとする、確かにその通りだ。


現状の商店街は店舗数が少ないだけで雨風も凌げて陽の光も入るいい施設だ、それより優れたことを説明してないことに気付く。


「しかしどう説明すればいいものか、一応商店街を閉めてデパートを建てればいいんじゃないかというメアリーの意見を軸に動こうとしてるんだが。」


「待って、それだと村に来てくれてる行商が納得しないわよ。

 簡単な図面を描いて持ってくるから、それを説明に使って。」


そう言うと流澪はダークエルフ族を連れて奥へと引っ込んでいった、簡単な図面で納得してくれればいいが……しかし遅くても夕方までには図面が出来ないと説明出来ないぞ。


そう思って15分、流澪とダークエルフ族が2枚の紙を持って戻ってきた。


簡単と言っても早すぎないか?


「こっちは飲食店があるフロアの図面で、これは飲食店が無いフロアの図面よ。

 寸法とか書いて無いからそこはフィーリングで何とかしてくれればいいと思うわ、少なくとも説明の材料になるとは思うから。」


「ありがとう、これがあるだけでも相談した甲斐があったし有難い。

 早速商店街に行ってマーメイド族と一緒に行商を説得してくるよ。」


「行けたら私も行くから、話を引き延ばせれるなら引き延ばしておいて。」


自信は無いがやってみると返事をして研究所を後にする、行商からブーイングが起こってなければいいけど。




商店街へ行くと店舗が無い場所に人だかりが出来ている、まさかと思いそこに近づいてみるとマーメイド族が村の住民を含めた人達に取り囲まれていた。


「あ、村長……いいところに!」


だいぶ涙目のマーメイド族が俺に気付いて呼びかける、それと同時に皆の目線が俺に集中したので少し身構えてしまった。


「話し合いの件を説明したらこうなったのか?」


「まさにそうですぅ……いきなり数日閉めるのは納得いかないとのお声が……。」


「分かった、ここからは俺が説明しよう。

 簡単な図面を持ってきたから行商の人を優先に見に来てくれ。」


そう言って俺の周りに皆を集める、マーメイド族にもう大丈夫だから行っていいぞと目配せをしたんだが俺の周りに集まってきてしまった。


呼んだつもりはないんだが……まぁ気になっていそうな目だし大丈夫か。


図面を使いつつデパートについて説明をする、皆がおおぉぉ……とかなり感心の表情を浮かべてくれた。


よかった、今日の話し合いの時のような反応じゃないから成功したと思っていいだろう。


やっぱり百聞は一見に如かず、図面があるだけで一気に説明しやすくなった。


「料理を扱った店の設備面はどのようにすればよいでしょう?」


行商から質問が入った、そのあたりは言ってくれれば村で対応するが金貨5枚を要求してみる。


少々吹っ掛けてみたがどうだろう、色々準備する物があるので面倒だからな。


「分かりました、ありがとうございます!」


俺が思っていたのと違う反応が帰って来た、これは絶対料理も扱おうと考えているな……今のうちにそのあたりも考えて準備しておくか。


「場所代は商店街と同じく1日金貨3枚のままでよろしいでしょうか?」


「それは構わないぞ、状況によっては値上がりする可能性もあるが今のところは考えてない。」


本当は値上げしてもいいんだろうが、ここで欲張って店舗が入らないなんて事になっても寂しくなるからな。


今はそのままでいい、施設の利用者や出店希望者が増えると値上げする形でいいだろう。


何せ未開の地というアクセスの悪さと、エレベーターもエスカレーターもない状態での高層施設だ……不平不満が出ないとも限らないし。


いずれはそのあたりも改善していきたい、ハーピー族が数百キロ持ち上げれるなら簡易エレベーターも視野に入れておこう。


まずはそのあたりの確認からだけどな。


「他に質問が無ければ今日は解散しようと思う。

 行商の人は村の無料滞在を施設が完成するまで許可するから、この後俺の所まで来てくれ。

 割符を発行する、それを見せれば食事も宿泊施設も利用できるよう話を通しておくから。」


その後質問は無かったので割符を作製、行商に渡すと仕事の顔からプライベートの顔へ一気に切り替わった。


仕事に熱心になれるのはそういう所も大事なのだろう、四六時中仕事の事なんて考えても疲れるだろうからな。


俺は近くに居たハーピー族を呼んで割符の説明をする、それを食堂と宿泊施設に伝えてくれと頼むと「分かったよ!」と返事をして颯爽と飛んでいった。


よろしく頼むぞ、聞きたいこともあったが今はいいや。


俺はデパート作成に必要な資材を運んでもらうため、ミノタウロス族とケンタウロス族にお願いしにいくことにした。




次の日、商店街は完成させて初めての無人……商品すらない寂れた状況だ。


地方の商店街を思い出すな、昼間だというのにシャッターが下りて機能してないのがほとんどだった……今回は状況が違うが。


俺は一度商店街を解体し資材に戻す、少し前に作る前の資材に戻すという選択肢があるのに気づいてから想像錬金術イマジンアルケミーがより使いやすくなった。


そこに追加で運んでもらっておいた資材を使いデパートを錬成、とりあえずは3階建てにしておく。


この時点で出店可能なスペースは商店街の5倍以上になっている、商店街には多少無駄なスペースがあったのでそれを無くして出店スペースを増やした。


これでしばらく事足りるだろう、多分。


マーメイド族と魔族領の行商に報告するとウキウキとしていた、だが1つ問題が発生。


「私達、どうやって上の階層に登ればいいでしょうか……?」


マーメイド族からの意見、何も考えてなかったぞ……どうしたものか。


螺旋状にスロープを設置してもいいが傾斜が急すぎて不便だろうし、仮に他の種族が運んだとしても閉店時にもう一度手間が必要なので非効率的だ。


何か無いかと考えていると、デパートの様子を見に来たドラゴン族が声をかけて来た。


現状を説明すると「搬入専用口を作って開店時と閉店時のみドラゴン族がマーメイド族と商品の昇降をお手伝いしましょうか?」と提案してくれた。


確かにそれなら1往復で住みそうだ。


「しかし結構な重量があるか大丈夫なのか?

 商品も含めるとかなりだと思うぞ。」


「ドラゴン族を舐めてもらっては困ります、その程度子どものドラゴンでも少し本気を出せばこなせますよ?」


やっぱりドラゴン族のスペックはおかしい、ハーフドラゴンになったラウラもそうなのだろうか。


だがありがたい提案なので甘えることにする、よろしく頼むぞ。


俺は昇降の為の専用出入り口と乗り物の箱を作りデパートの完成とした、今日は準備をして明日から本格的に開店するみたいだ。


さて、魔族領にばかり枠を与えるのは不公平だし人間領にこれを伝えないとな。


割合としては3分割で余りは村が利用する形にしたい、おそらくそれが一番公平だろうし。


俺はデパートの開店を楽しみにしながら、行商が入れるようになったと伝えるため人間領へ続く転移魔法陣をくぐる。


「村長ではないか、ドラゴン試乗会の見学に来たのか?」


くぐった先ではドラゴン族が人間を乗せて試乗会とやらをしていた、一体どういう状況なんだ?

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