第161話 ダークエルフ族が陽の季節に使う遊具の試作品を作ってくれた。

俺の寿命について話して数日、あれからやたらと俺の体調や健康に気をつかう住民が増えた。


鍛錬所でも「ハードなトレーニングはまだまだです、ケガをされては……。」と言われてまだ筋トレやストレッチ、それと軽いランニング程度しかやらせてもらえない。


――これは俺の実力不足かもしれないが。


あれやこれやで気をつかわれて少し気が重くなったので、皆にいつも通りにしてくれと頼む。


「村長に少しでも長生きをしてもらいたいのです。」という言葉は非常に嬉しい、だが過剰な親切は相手にストレスを与えて逆に不健康にさせるぞと説明。


ある程度心当たりがあるのか、少し考えて「すみませんでした……。」と謝罪をされた。


心づかいは嬉しいから大丈夫だぞ、次からいつも通り接してくれれば問題無い。


頼んでからはいつも通りの生活に戻った、これで一安心だな。




「村長、グレーテさんが冒険者ギルドの図面を了承してくれたのでいつでも建てて大丈夫みたいです。

 それと水鉄砲と底に落として拾う宝の試作品が出来たので見てもらおうかと。」


「分かった、冒険者ギルドは後で建てておく。

 試作品は早速見せてもらおうか、どれどれ……。」


ちょうど水路があったので水鉄砲に水を補充し試射をする、俺がよく知る水鉄砲と同じくらいの威力だ。


石に穴が空くような威力じゃなくて良かったよ、ちょっと不安だったからな。


「高威力の水鉄砲も試しますか?」


やっぱりあったのか。


「それは別の機会に取っておいてくれ、間違っても遊び用と混ざらないようにしてくれよ?」


ケガしたりさせたりしたらお互い嫌な気持ちになるし、子どもが多いところで使う遊具だからな。


それと底に落とす宝だが丸や三角といった様々な形の物がある、形が違うのは飽きさせない為にはいい試みだし見た目も楽しい。


試しに持ってみると一部の宝が物凄い重かった、これ大丈夫なのか……?


「ふふ、それを取れない種族はミノタウロス族のような力のある種族に助けを求めるしかないでしょう?

 戦略性も出すために用意してみました。」


ドヤ顔でダークエルフ族が語ってくれる、それより俺はそれを普通に持ってくるダークエルフ族の力にびっくりしているんだけどな。


やっぱり村の住民の身体能力はおかしいと思う。


「だが、覚えられると戦略も何も無いんじゃないか?」


「これはあくまで試作です、陽の季節までにはもっと色んなバリエーションを用意して覚えても意味のないようにしますから。

 どうでしょう、これでミノタウロス族やケンタウロス族も遊べるでしょうか?」


「問題無いと思う、協力してくれてありがとうな。

 次の陽の季節には期待しているよ。」


俺は図面を受け取りダークエルフ族と別れる、グレーテ・ミノタウロス族・ケンタウロス族を呼んで冒険者ギルドを建てるとするか。




「やっと冒険者ギルドが出来ました!

 これから仕事頑張るぞー!」


材料を運んでもらって想像錬金術イマジンアルケミーで作った冒険者ギルドを見て、グレーテが気合を入れている。


「これは立派ですね、私も魔族領の冒険者ギルドに少し立ち寄りましたが村のほうが使いやすそうに感じます。」


「確かに村のほうが便利だなぁ、魔族領は酒場が併設されてるからうるさくて。

 ですが本当に栄えるのはまだ先かな、まずは育成からって聞いてるから。」


「そうですね、魔族領の冒険者をいきなり未開の地へ放り出すのはあまりに危険すぎますから。

 併設されてる訓練所で私やウェアウルフ族、それに元スラム街の住民達と訓練をしてもらってからです。

 リッカさんやリザードマン族も協力してくれるかな、刀術に関しては一番秀でてると思うので……かっこいいから人気も出そうですし。」


俺も鍛錬所で刀術の訓練を見ていたが、リザードマン族は確かに他の種族に比べて刀の扱いが段違いにうまく感じた。


体格や戦い方が上手くかみ合ったんだろうな、リッカもびっくりしていたし――俺も早く使えるようになりたい。


だが基礎的なトレーニングが先だな、最近少し体も軽くなってきたし頑張ろう。


「では私は早速声をかけていた方に報告して、それから魔族領の冒険者ギルドに行ってマルチンさんと話をしてきます!

 しばらく村を空けるかもしれませんが、よろしくお願いしますね!」


「大丈夫だぞ、村の冒険者ギルドの成功を祈ってるから。」


グレーテはすごい勢いで鍛錬所に向かって走っていった、あんまり急ぐと転んだり誰かとぶつかったりして危ないぞ。


「グレーテさん、物凄い速くなりましたね……ケンタウロス族には及ばないですが二足歩行であの速さはすごいと思いますよ。」


俺もそう思う、どういう鍛錬をしたらあぁなれるのか教えて欲しい……種族の差だとは思うんだけどな。




冒険者ギルドを建てた後に村の半分を見回りして鍛錬所へ。


俺はいつも通りのメニューをこなしていると、鍛錬所内に大きな声が響き渡った。


「ワイバーンの群れが来たらしい!

 ドラゴン族が対応してくれているが物凄い数らしくて……応援を頼む!」


それを聞いた瞬間、俺とリッカ以外の全員が武器を持って外へ飛び出していった。


「ワイバーンって、あのワイバーン?

 ドラゴン族とは言えドラゴン族と遜色ないくらいの実力を持った小型竜……そんなのに向かっていく気概がこの村の住民にはあるのか?」


少し青ざめた表情でリッカが俺に問いかけてくる。


「多分村の住民なら楽勝だろう、あまり詳しくは言えないが村謹製の武器を持っているし。

 それに数が物凄いから対応しているだけで、多分皆は良質な肉が手に入ったとしか思ってないような気もする……ワイバーンの肉は美味かったからな。」


「なんだって、ワイバーンを討伐した事があるのかい!?

 それに人間領ではワイバーンの討伐なんて領の英雄だ、それを食糧扱いって……。」


確かに、外皮は普通の武器じゃ通らないくらい硬いだろうな……最初のワイバーンは普通の包丁じゃダメだったし。


だが今はオレイカルコス製がほとんどだ……それに住民の戦闘力とドラゴン族がいることによって地の利も消えている。


「不安なら外に出てみるか?

 そこまで時間はかからないと思うぞ。」


「そんな楽天的な考えでいいのか……?」


訝しんでいるリッカを連れて外に出る、すると遠くから「大量のワイバーン肉だぞー!」と次々とワイバーンが運び込まれているところだった。


やっぱりな、この村に来た当初は皆危険な生物だと認知していたワイバーンも鍛錬を重ねて獲物にしか見えなくなったんだろう。


その光景を見たリッカは開いた口が塞がらない様子だ、そりゃ人間領では倒しただけで英雄扱いされる魔物をあんな軽々と処理されてはそうもなるだろう。


「僕の刀術の訓練必要あるのかな……?」


あ、ちょっと涙目になってる。


「必要かどうかは訓練を受けてる者が決めることだが、皆学びたいから訓練を受けてるんだろ?

 それにリザードマン族は刀術が一番合ってる戦い方のようにも感じてる、リッカの訓練に意味はあるさ。」


「ありがとう、そう言われて少し気が楽になった。

 だが僕ももっと精進しないとな……ご飯もものすごい美味しいし水浴びをしなくてよくてふかふかの布団もある。

 こんな素晴らしい環境で強くなる機会まであるんだ、満足するまで帰らないことにするよ!」


人間領の大使であり王族がそのようなことでいいのだろうか。


「俺は別にそれでもいいが、リッカが原因で人間領と不仲になるのは嫌だぞ?」


「大丈夫さ、ちゃんと手紙と報告書はマーメイド族伝手で提出するから。」


「それならいいんだけどな……それよりドワーフ族がワイバーン肉で作る料理のリクエストを取ってるぞ。

 俺たちも行かないと、食べたい料理を伝えなきゃ肉が無くなるぞ。」


「それはいけない、急ごう!」とリッカと2人で走り出した、ワイバーン肉のステーキにカツにタタキに……カレーはどうせ誰かが言ってるので俺は酒に合う料理をリクエストするとしよう。

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