第321話 エルケの思わぬ特徴にびっくりしてしまった。
クズノハと魔王との話も終わり、俺とエルケは遅れながらも宴会に参加しにいく。
「ごめんなさい、私が寝坊したばかりに宴会に行くのが遅れてしまって。」
「そんなこと気にしないでくれ、何日もずっと騒いでたら疲れるからこれくらいがちょうどいいさ。
それより俺こそ昨日はすまなかった、パーン族の上位と話してたら思いのほか盛り上がってな。」
「そうだったんですね、どんなお叱りを与えていたのですか?」
開口一番に怒っていると決めつけられるあいつらに少し同情する、やったことは許されないし俺も許してないが……話してみると思ったより悪い奴らじゃないんだよな。
どちらかというと私兵達のほうが余裕は無さそうだった。
あれも何とかして緩和してやらないと物凄いストレスがかかってそうで可哀想だな。
「叱ってはないさ、普通に話していただけだ。
驕りが過ぎただけで、根っこは悪くない奴らだと分かっただけでも俺としては収穫だったよ。」
「本当にお優しいですね村長は。」
「そんな事はないさ、やったことは許してないし罰を軽減するつもりもないから。
それより気になるのはエルケの毛並みの色が変わったことなんだけど……どうしてなんだ?」
俺はどうしても気になることを聞いてみる、さっきは教えてもらえなかったが2人だけしか居ない今の状況なら教えてくれるかもしれないし。
だがそれを聞いたエルケは耳まで真っ赤にして顔を隠している……そんな恥ずかしいことが原因なのか?
「うぅ……怒りませんか?」
「怒らない怒らない。」
「その……村長が寝ている間に致させていただきました。
なので純潔を散らしております、パーン族の白い毛並みは純潔の象徴なんですよ。」
それを聞いた俺はブフッと吹き出してしまった、どうして俺の妻になる女性は俺が寝て居る間に襲うんだ。
道理で今日起きた時スッキリしてたはずだよ。
まったく、我慢しろとは言わないがせめて起こしてくれ。
俺が出来るならそのまま相手するのに。
いや……そこまでされて起きないという事は、無理矢理起こされても出来ないかもしれないな。
その状況になってみないと分からないけど。
だが、それを聞いてふと疑問が一つ。
「じゃあもうあの白い毛並みには戻らないってことか?」
「そうですね。」
「綺麗だったのにな、エルケは辛くないのか?」
「添い遂げると決めた相手が出来た喜びのほうが大きいですよ。
他の一族も毛並みの色にこだわりを持っている人は少ないと思いますし。」
そういうものなのか、本人が納得しているならいいけど。
なんて話していると広場に到着、皆まだ日が高いのにかなり出来上がっているな……トラブルとか起きなきゃいいけれど。
俺はまず軽い物をもらおうとサラダや卵料理、それにウィンナーを取って机へ運ぶ。
エルケはがっつり焼肉やピザ、ハンバーガーなんかを取ってきていた。
起きてそこまで時間が経ってないはずなのにすごいな、俺はそんなの寝起きに食べれる自信が無い。
若いのかただ胃腸が丈夫なのか……そういえばエルケって何歳なんだろうな?
だが女性に年齢を聞くのはかなりリスキーなので気にするのを止める、俺は周りから祝いの言葉をもらいながら宴会に参加しつつ朝食をいただくことにした。
「ふぅ、とりあえずこれくらいにしておくか。」
「ほんひょう、ほおはへはいほへふは?」
俺が取って来たものを食べて食器を戻そうとすると、エルケが口に一杯にお肉を頬張りながら何かを言っている。
「行儀が悪いからやめなさい、何を言ってるか全然わかんないぞ。」
俺がそう伝えるとエルケは慌ててごっくんと口の中身を飲み込む。
「すみません、はしたない真似を……。
もう食べられないのですか?」
「とりあえずはな、これ以上食べると他の所で何か貰った時に食べれなくなってしまうし。
エルケも色々回ったりするだろ?」
「回りたいです!
……ですが、少し待ってもらっていいですか?」
「大丈夫だよ。」
エルケの目の前には結構な量のお肉や料理がある、これを食べるまでは待ってほしいのだろう。
しかし、全部食べれるのだろうか?
そんな疑問が浮かぶくらいの量である、俺は絶対無理。
「よーし……ちょっと本気で食べちゃいます!」
エルケはそう言うとすごい速度で料理を平らげだした、喉を詰まらせたりしないか心配だぞ?
しかし小さい体で華奢なエルケなのにこんな大食いだとは思わなかった、食いっぷりだけならドラゴン族のそれくらい凄い。
エルケを待つ間周りを見渡していると、ウェアウルフ族が骨を掴んで食べるマンガ肉のようなやつを食べている。
美味しそうだな……あんなビジュアル反則だろ。
見つけたら絶対確保する、どこでもらったか後で教えてもらうとしよう。
他にも何か目ぼしいものはないか探しておくか。
「お待たせしました!」
「えっ?」
エルケの声を聞いて振り返ると、さっきまであった料理が全て消えていた。
「待ってくれと言われてまだ数分しか経ってないけど、もう食べたのか?」
「はい、地籠で我慢していただけで食べるのは大好きですから!
いくらでも食べれちゃいます、それにこの村の食事は最高ですからね!」
そう言われるのは嬉しいが、比喩表現無くいくらでも食べれそうなエルケの胃腸が羨ましくもあり心配でもある。
宴会とは言え少しは休んでほしい、俺の精神がエルケの心配で疲弊しないようにするためにも。
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