第38話 おめでた、それによる仕事の分担。
「おい、シモーネ!
メアリーは大丈夫なのか!?」
「義母様、メアリー姉は助かるですか……?」
俺とラウラがシモーネに言い寄った、メアリーは顔を青くしたまま気分が悪そうにうなだれている。
シモーネが押さえていた手を退けると、表情は悲しそうというより嬉しそうだった。
そしてシモーネは口を開く。
「開さん、メアリーさん……おめでとう。」
おめでとう……?
「おめでたですよ、楽しみですね。」
俺もラウラもあっけに取られて固まっている。
「やっぱりそうだったんですね……休んでも治らなくておかしいなぁとは思ってたんです……。」
メアリーが苦しそうに返事をする。
子どもが出来たのか!
確かにめでたい、だがつわりがしんどいなら無理してしゃべらなくていいぞ。
だが、病気じゃなくてよかった……しかし子どもか……。
実感が湧かないな、することはしてたけどさ。
「ともかくおめでとう、辛くても食事と水分をしっかり摂るのよ。
あと、ストレスになることはさせないようにね、運動も軽い散歩程度にしたほうがいいわ。」
子を持つ人のアドバイスはものすごく助かる、ありがとう。
「ごめんなさい、開様……迷惑かけてしまって。」
「何言ってるんだ、めでたいことなんだからしっかり休んで元気な子どもを産んでくれ。
住民だってわかってくれるさ。」
メアリーは頑張って笑顔を作り「ありがとうございます……。」と言って眠りはじめた。
「寝かせといてあげましょう、つわりは安定期に入れば収まるだろうけれどずっと続く人もいるから。
休めるときに休ませてあげるのが一番よ。」
妊娠・出産は当事者ではないから本当に断片的な知識しかないからどんなことでも教えてくれるのは助かる。
シモーネも「わからないことや困ったことがあったら私にでも、ウェアウルフ族やケンタウロス族の経産婦や助産師にでも聞きなさいね。」と言って家に戻っていった。
そうだな、頼れる人はたくさんいるんだから頼らせてもらおう。
「ラウラも知らせてくれてありがとうな、ゆっくり休んでくれ。」
「はい、わかったです。
おやすみなさいです、開様。」
そう言ってラウラも寝室に向かっていった。
俺も寝よう、明日はとりあえずメアリーが村の仕事から一時離れるすることを踏まえて話し合いをしなければな。
翌朝。
いつもの話し合いのメンバーに、オスカー・シモーネ・カタリナを加えてメアリーの件で話し合いをすることに。
「集まってもらってありがとう、突然で悪いがメアリーが妊娠したので村の仕事から離れてもらおうと思っている。
メアリーの代わりの補佐と狩りのメンバーの補充をどうするか意見を聞きたいんだ。」
オスカーとシモーネ以外から驚きの声と「「「「「おめでとうございます!」」」」」というお祝いの言葉をもらった。
ありがとう、でも意見も欲しいぞ。
「狩りのメンバーは問題ない、メアリー殿が抜けた穴はウェアウルフ族から補填しよう。
それにあたってケンタウロス族からも1人狩りに回してほしいが、大丈夫か?」
「えぇ、ケンタウロス族も狩り部隊への補填は問題ありません。
ケンタウロス族も1人妊娠がわかっているものが居ましてね、オムツや服を細々と作っていたのですが少し生産量を増やしておきますね。」
ローガーとハインツから狩り部隊に関しての意見が出る。
無理なく補充出来るなら、頼んだぞ。
あとオムツや服はありがたい、あとお祝いを伝えたいからそのケンタウロス族の場所を後で教えてくれ。
「メアリーさんの代わりはカタリナさんがやってみてはどうです?
生活魔術で住民と接する時間は一番多いと思いますし、適任かと思いますが。」
シモーネが補佐の案を出す、確かにそれは一理あるな。
カタリナは「新参の私なんかが……。」と慌てているが住民からの意見や要望を俺に挙げてくれるだけでいいから、そこまで気負うことはないぞ。
戸惑っていたが、シモーネの推薦もあってカタリナが補佐代理で動くことに。
他の住民に伝えるのは種族のリーダーであるここに集まってる人に任せる、特に反対もないはずだ。
「おぉ、忘れるとこだったわい。
オスカー殿、ドラゴン族の力自慢を2人ほど採掘班に貸してくださらんか?
硬すぎて採掘出来ない鉱石があると相談を受けておるのじゃ。」
「問題ないぞ、後で向かわせよう。」
今や鉄じゃなくドラゴン族の牙製のつるはしを使って採掘しているんだが、それでも硬くて採掘出来ないのはとんでもないな。
他に話すことはないのでこれで解散、カタリナは落ち着くまでよろしく頼むぞ。
俺はメアリーの様子を見てくる、何かあったら家に来てくれ。
「話し合いは終わったぞ、補佐代理はシモーネの推薦でカタリナがすることになった。
狩りもウェアウルフ族とケンタウロス族から補填してくれるから心配なさそうだぞ。」
メアリーは自分が抜けた穴がどうなるか不安がっていたから、決まり次第すぐに伝えて安心させてやりたかった。
「なるほど、住民と接する時間が多いのを見越しての推薦ですね。
狩りも問題ないなら良かったです。」
メアリーは少し落ち着いてるのか、今は顔色がいい。
また吐き気が来たら大変なので、鉄製の洗面器のようなものを近くに置いてある。。
ケンタウロス族にも渡してある、安定期前らしいが念のためだ。
「しかし俺が父親か、覚悟をしていないわけじゃなかったが自分のことじゃないみたいだよ。」
「男性なら産まれるまで仕方ないかもしれませんね、私は既にお腹に命を宿しているので母としての実感と覚悟は出来ています。
いい母になれるように努めますよ!」
やはり子をなした女性は強い、俺もいい父になれるように覚悟しなきゃな。
視線を感じて部屋の入り口に目をやると、ラウラがこちらを覗いているのに気づいた。
どうしたんだ?
「メアリー姉が心配だったのもあるですが、開様に相談があるのです。」
ラウラが相談とは珍しいな、聞けることなら聞くぞ。
「私も食事していたらドワーフ族から言伝を頼まれただけですよ、ドラゴン族の牙製のつるはしより強いつるはしを作ってほしいとのことです。」
それはドラゴン族の牙より強い素材が無いと無理だ。
そうか、話し合いで言ってた鉱石はドラゴン族の力自慢でも採掘出来ないのか……。
メアリーが話を聞いて、何かを思いついた顔をする。
「開様、私の弓を直してくださった時のことを覚えていますか?
修理の素材に剣を使いましたよね、それからあの弓の威力は異常になっているんですよ。
憶測ですが、ドラゴン族の牙で作ったつるはしを2本、
そう言えばそんなこと言ってたな……エンチャントの効果が出てるんだろうから気のせいだと思っていたよ。
よし、試してみるか。
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