第37話 ミノタウロス族への提案、メアリーのピンチ。
ミノタウロス族は斧の修理でよくドワーフ族の里を訪れていたらしい。
なので鍛冶担当のドワーフと平原側の門に行き、ミノタウロス族を出迎える。
姿は思った通りだった、牛の獣人族。
「急に里を引き払っててびっくりしたぞ、いつもの斧の修理と砥ぎを頼む。」
ミノタウロス族が依頼をし、ドワーフ族が斧を受け取る。
「ん、わかったぞ。
預かっておくが、お前は一度帰るかい?」
ミノタウロス族は少し困った感じで悩んでいる、どうしたんだ?
「ドワーフ族がこんな立派なところに里を移動させてたなんて思ってなかった……、いつもの品じゃ満足出来ないかもしれなくて……。
それに他種族と住んでるなんて、大丈夫なのか?」
「まぁタダで直すわけにもいかないが、別にドワーフ族が納得すればそれでいいぞ。」
「前の里でもこの村でも石炭は採掘出来ん、いつも通りで問題ないぞ。」
どうやって石炭を確保してるのかと思ったら、ミノタウロス族と取引していたのか。
「よかった、鍛冶はドワーフ族が一番だから請けてもらえなかったらどうしようかと思ったぞ。
請けてもらえるなら問題ない、帰るとするよ。」
そうミノタウロス族が言うと同時に、ググゥー……と腹の虫が鳴いた。
「腹が減ってるなら何か食べていくといい。」
「い、いいのか?」
「村長が言うなら問題ないし、この村は食料に困っとらん。
お前ひとりが腹いっぱい食べたところで何も問題なかろう。」
「食料に困ってないってどういうことだ……?」と小声で言っていたが、空腹には勝てず食堂についてきた。
ミノタウロス族は食堂で出てきた食事を見て「すげぇ……。」と前の世界の小学生みたいな反応をして啞然としていた。
食べると目がキラキラして「うまいぞ!なんだこれ!」と言いながらパクパク食べる。
「ほっほ、いい反応をありがとうよ。
作ったかいがあるもんじゃ。」
デニスが笑いながら厨房からそう言うと、「いや、こんなうまい料理食べたことないから!」と頬張りながらミノタウロス族は返事をする。
いい食いっぷりだな、見てて気持ちがいい。
「本当に食料に困ってないんだな、羨ましいよ。」
食べるのはそのままで、少し悲しそうにミノタウロス族がつぶやく。
「どうしたんだ、ミノタウロス族の里は食糧難なのか?」
「うーん、今は大丈夫だが長い目で見るとまずいと思う。
ほら、俺らは見た目の通り力があるからそういう仕事が多いんだが、腹いっぱい食べれないから少しずつ痩せていってるんだよ。」
それはダメだ、いずれ仕事が出来なくなるじゃないか。
「石炭と食糧を交換するか、里ごと村に移住とどっちがいいんだ?」
ふと、ミノタウロス族に聞いてみた。
ミノタウロス族は目を丸くして俺を見ている。
「石炭は確かにこの村じゃ採掘出来ないが、採掘出来るようには出来る。
だが、鉱夫に負担をかけないなら取引のほうがいいんだよ、食糧は言った通りミノタウロス族に渡しても問題ないからな。
だが、石炭は採掘出来るように出来るから、ミノタウロス族が来て炭鉱夫をしてくれるならそれも何も問題ない。」
食糧が厳しいなら交易で石炭と交換出来る、移住すれば仕事は与えれるから遠慮なく村に住めるという内容のつもりだ。
俺はミノタウロス族に生きるための提案をする、これだけのガタイと力だから移住は無くても繋がりは欲しいからな。
「長と相談してみないとわからない……だが魅力的な提案なのは理解出来る。
後日改めての返事でも問題ないか?」
あぁ、急がないから全然かまわないぞ。
食事も終わり、早く相談したいと言うことでミノタウロス族は足早に帰っていった。
「開様、ミノタウロス族を勧誘されたって本当ですか?」
家に帰ると、メアリーからそう質問される。
「間違いないが、問題があるのか?」
「問題はないですが、彼らは炭鉱夫を主だった仕事にしてますよね?
それならダンジョンに石炭が生成されるように変更されるはずですが、ダンジョンが狭くなるなぁ……と。」
それは問題だな、不慮の事故が起こる可能性も否めない。
「ちょっとダンジョンコアと石炭を増やすことと、拡張も兼ねて話してみる。」
「わかりました、ではお風呂に行ってきますね。」とメアリーは席を外したので、ダンジョンコアに話してみる。
ちょっとふらついてるけど、疲れているのか?
心配だが、風呂から帰ったら聞いてみるとしよう。
『ダンジョンコア、ちょっと相談があるんだが。』
『はいはーい、どうしたの?』
寝るって言ってたけど、起きてたんだな。
それとも起こしてしまったか?
『ダンジョンの鉱石に石炭を増やすことと、ダンジョンの通路と部屋の広さを広くしたいのを頼みたいんだが可能か?』
『あぁ、君はダンジョンを狩場や鉱山のように運用するんだったね。
それだと少し狭かったかもしれない、3倍くらい広げておくけどそれでいいかな?
あと石炭は増やせるよ、もう生成しておこうか?』
『あぁ、一応そのくらいの広さで頼む。
まだ狭かったら相談するから、石炭はまだ生成しなくていいぞ。』
『はーい、毎日ダンジョンに入ってくる生命体がいるから、気兼ねなく相談してよ。』
ダンジョンに入る生命体の数で何か変わるのか?
『君の概念で言うなら、ダンジョンに生命体が入ると拡張に必要なポイントが蓄積されていくんだ。
狩場で活用してるからか毎日来てくれてるからね、ポイントは余ってるよ。』
その仕様は早めに説明してほしかったが、余ってるなら問題はないな。
足りないなら足りないと言ってくれるだろうし、急ぎで必要なもの無いので困らないだろう。
『あ、拡張は終わってるからね。
もういいかな?』
『とりあえず今は大丈夫だ、石炭が必要ならまた話すよ。』
『はーい、それじゃーねー。』
明日狩り部隊にダンジョンの様子を聞いて、ミノタウロス族か来ても問題ない広さか確認を取るか。
さて……俺も風呂に入るか。
「開様!開様―!」
着替えの準備をしていると、ラウラが俺を大声で呼びながら血相を変えてこちらに走ってきた。
どうした、何かあったのか!?
「メアリー姉が……お風呂で一緒になり顔色が良くないなとは思ってたですが、お風呂を出るなり吐き出して動けなくなって……。
何か病気ですかね……?」
医者じゃないからな……どうしようかと悩んでいたらオスカーの一言を思い出した。
――シモーネの能力にはドラゴン族も助けられているのだ。
療養してる時は特に助かっている、どの薬草が効くかすぐわかるのだよ。――
「シモーネを呼んでくる!
シモーネの能力なら何かわかるかもしれない、ラウラはメアリーの傍にいてやってくれ!」
「わかったです……。」と不安そうな返事を後ろに、俺はシモーネのところへ走り出す。
俺は速度をそのままに、オスカーとシモーネの家へ飛び込む。
「シモーネ、メアリーが病気かもしれない!
オスカーが前にシモーネの能力が療養の時にどの薬草が効くかわかるって言っていたよな、力を貸してくれ!」
シモーネは俺の言葉を聞いて、うなずくと同時に俺を抱えて家を飛び出した。
びっくりしたが、シモーネのほうが足は速いだろうし最善策だろう。
俺の家に着くと、すぐに能力を使ってメアリーを見てくれた。
すると、シモーネは顔を押さえて泣き出した。
メアリー……大丈夫なのか……?
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