第36話 デモンタイガーが増えた。
グルルルル……と唸ってこちらを睨むデモンタイガーが2匹。
どうするんだ、戦闘するなら俺は邪魔じゃないのか?
かなりビクビクしながら背中の上から見ている、するとタイガがグォォッと鳴いてペタリと地面に寝転んだ。
すると2匹の表情から敵意が消え、食事を再開した。
獲物を横取りされると思ったんだな、そりゃ怒る。
しかしタイガ、そこそこ離れてるのにこの2匹の気配と位置を察知したのはすごいな。
オーガであろうものを食べ終える2匹のデモンタイガー、するとタイガが喋るようにグォグォと鳴きだした。
2匹はうなずきながらタイガの鳴き声を聞いている、かわいい。
話が終わったのか、タイガが村に向かって歩き出した。
後ろを見ると、2匹もタイガの後をついてきてる。
村に来るのかな、かわいいし戦力増強になるから大歓迎だ。
食糧問題もダンジョンがあるしなんとかなるだろう、足りなければ外で狩りをしてもらってもいいし。
村に着くと、警備から「後ろのデモンタイガーは?」と聞かれたので「敵意は無いぞ、村に住むことになった……と思う。」と返事をする。
ラウラに聞かないと確定ではない、とりあえずラウラのところに行こう。
近くに居たケンタウロス族にラウラの居場所を聞くと、牧場の動物が何を求めてるか聞いてくれてるらしい。
ありがとうとお礼を言い、牧場に向かおうとすると呼び止められた。
「その……デモンタイガーが牧場に近づくと家畜動物がパニックを起こしてしまいます……。」と申し訳なさそうに言われた。
それもそうか。
タイガすまん、ラウラを呼んでくるから少し待っててくれ。
牧場に行き、ラウラに声をかける。
「開様、どうしたんです?」
「タイガが仲間を見つけて村に連れてきたんだ、住むとは思うんだが何を言ってるか通訳をお願い出来ないか?」
「わかりましたです、もう少しで終わるので少し待っててくださいです。」
急いでないからいいぞ。
5分ほどしてラウラがこちらに来る。
「タイガ様とお仲間はどこです?」
「広場で待機してもらってる、牧場に行くと動物がパニックになると言われてな。」
「それは確かにそうですね。」と軽く返事をしながら広場へ向かう。
3匹仲良さそうに広場で丸くなってる、緊張はしてないようでよかった。
ラウラがタイガに近寄り、話しかける。
うんうんとラウラがうなずきながら、タイガはグォグォと話しかけてる。
ラウラの見た目の幼さも相まってものすごく微笑ましいシーンだ。
「開様、2匹は気配を察知出来たので村に誘ってみたら住むと言ってるです。
前々から付き合いのあるデモンタイガーで、誘う気はあったみたいですよ。」
そうだったのか、何かの拍子ではぐれたのかな。
しかし住むのを拒否する理由も無いので快諾、見回りと警備は任せたぞ。
そう言うと、2匹はグォッと鳴いて返事をする。
名前はレオとトラだ、我ながら安直な名前だが他に思いつかない。
俺は見分けがつくが、他の住民が困ってもダメなので首輪とその中央に名札をつけることにする。
後で作ってつけよう、嫌がらないことを祈る。
名札を作って3匹につけると特に嫌がる様子もなく普通にしてくれた。
俺は食堂に行き、食事ついでにデモンタイガーが増えたことをドワーフ族に伝える。
「うむわかった、何も問題ないぞい。」とデニスからの返事。
頼もしい限りだ、狩り部隊もよろしく頼むぞ。
食堂で少しゆっくりしてるとメアリーが狩りから帰ってきたらしく、食堂に来た。
「今日も大猟でしたが私は調子が悪くてへこんでます……でもいいお肉がいっぱい手に入……タイガ様!?
なんで3匹に、あ、模様が違う!?別個体!?」
すごい戸惑ってる、メアリーはリアクションが大きいので見てて飽きないのも好きなところの1つだ。
果実も揺れるしいい眺め。
しかし調子が悪いなんて珍しいな、大丈夫か?
「少し気分が悪かっただけです、休めば治りますよ!」と本人が言うのでゆっくり休むよう伝える。
他の狩り部隊も帰ってきてすぐに「うぉっ、タイガ様が増えてる!」と続々と驚いてる。
「今日から新しく村に住むことになった、デモンタイガーのレオとトラだ。
見分けがつきにくい人もいると思うから、首に名札を下げてもらっているからな。」
「「「「「はーい、わかりましたー。」」」」」
メアリーも状況が飲み込めたらしいが、タイガ以外のデモンタイガーはまだ怖いのか、少し顔がこわばっている。
大人しいから怖がらなくていいぞ。
後から来たカタリナは、事情を説明する前に気絶してしまった。
―――レオとトラが村に住み始めて数日。
勝手にウェアウルフ族の子どもを乗せて村の外に飛び出したので説教。
仲良くなったのはいいが危険なことはするな、責任取れないだろ?
タイガを見てると、デモンタイガーに言葉は通じると思っているので、普通に怒る。
ラウラについてもらって、向こうがどう思ってるかの通訳は頼んでるが。
「この辺の魔物には負けないし、いいじゃないかって言ってるですよ。」
反省してないな、なまじ力があるからうまく主従関係を築くのが難しい。
タイガはちゃんとしてくれるから偉いんだけどな。
「レオ・トラ。
今日から1週間おやつの干し肉は抜きだ。」
そう言うと、ものすごく悲しい顔をしてグォォ……と鳴きながら平伏したような姿勢になった。
「それはすごく辛い……もうしないです……って言ってるですね。」
美味しいものはきちんと仕事したものに与える、これに懲りたら危ないことはするなよ。
してしまったものは仕方ない、だが何もなくてもそれは結果論だから罰は与える。
しっかり反省するように。
2匹はペターッと突っ伏したまま、スンスン鼻を鳴らしだした。
……タイガ、可哀想だからってこっそり干し肉を持ってくるな。
お前、体大きいんだから見えてるぞ。
タイガはビクッとなって干し肉を咥えたまま引っ込んでいった。
「1週間経って何も悪いことしなければ、デニスに与えるように伝えておくからな。」
そう言って2匹から離れて家に帰ろうとすると、平原から俺を呼ぶ声がしている。
「村長ー、ミノタウロス族がドワーフ族を訪ねて来ていますが通していいですかー?」
そういえば立て札を立ててきたと言っていたな、訪問者はまだ来ないと勝手に思ってたよ。
「ドワーフ族を呼んでから待っててもらってくれー。」
警備にそう伝えて、ドワーフ族を呼びに行く。
いきなり知らない村を通すより、知ってる顔が居たほうが安心だろうしな。
……ミノタウロス族、どんな姿なのか興味あるな。
ドワーフ族と一緒に顔を出すことにしようか。
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