第232話 デパート2日目、カタリナは参加しなかったみたいので2人で見回りがてら出かけることにした。

デパート2日目、妻達は相変わらず朝早くにデパートに行った……かと思いきやカタリナの姿が見えなかった。


どうしたのかと寝室を覗くと、着替えの真っただ中。


「きゃっ……!」


「おっとすまん、出かけてないから体調が悪いのかと思って様子を見に来ただけだから!」


俺は慌てて寝室を出る、しかし普段のカタリナからは考えれない可愛い声が出てたな……。


「まったく、ノックくらいしてよね。」


しばらく外で待っているとカタリナが着替えを終えて出てくる。


「すまなかった、寝ているものだと思っていたから……。

 今日はデパートに行かないのか?」


「3日連続で行くと疲れちゃうし、お腹の子を考えると1日くらい休んでもいいかなぁって。

 それにデパートが出来てからその間の村の様子って知らないし、久々に見回りをしてどうなってるか確認するのも有りかなって思ったの。」


「なるほど、それなら俺と一緒に見回りをするか。

 終わったら鍛錬所に行こうと思ってたけど、カタリナが他にしたいことがあるなら付き合うぞ。」


今日は特に予定も無かったからな、カタリナと2人で見回りをするのも新しい発見があっていいかもしれない。


ずっと1人で見回りをしていると、どうしても同じようなところにしか目が行かないからな……他の人の意見があるのは有難いんだ。


「デート兼仕事ってところかしら?

 それなら昨日買った服に着替えようかな、可愛いくていい感じのやつを見つけて衝動買いしちゃったのよね。」


「楽しみにしてるよ。

 俺も着替えてくる、終わったら朝食を食べて見回りにいくとするか。」


他の買い物は衝動買いじゃないのかという意見を頑張って飲み込み、自室へ着替えに向かった。




着替えが終わってリビングでカタリナを待つ、少し時間がかかっているがもう一回着替えるのは手間だろうし仕方ない。


「お待たせ。」


なんて思っていると後ろからカタリナの呼ぶ声がした、振り返ると白のワンピースにコートを羽織ったカタリナが立っていた。


「どう、似合ってるかしら?」


「うん、ものすごい可愛い。」


実際似合ってるし可愛くて語彙力を失ってしまった、小学生みたいな感想しか言えなかった俺が悲しい。


「率直に褒められると照れるわね……でも嬉しいわ。

 じゃあ朝ご飯食べて見回りに行きましょうか。」


「そうだな。」


こんな決まった服装をしてくれてるのに俺は普段着で少し恥ずかしい……今度魔族領や人間領に行って服を買ってもいいかもしれないな。


朝食を食べて見回りへ、いつも通り仕事をしている住民からは「デートですか、仲良しですねー!」と茶化される。


俺は少し恥ずかしかったのだが、カタリナは「そうよ、いいでしょー?」とにこやかに返していた……実際そうなんだが仕事も含まれてるんじゃなかったのか?


そんな対応を所々でしながら施設区の見回りを終了、広場で軽く休憩をしながらカタリナの意見を聞くことにした。


「とりあえず思ったのは広場以外の休憩する場所が少ないと思うわ。

 商店街に神殿、その他の施設も色々あるのに休憩するのがここだけって不便じゃない?

 給水所はあるけどそれだけじゃちょっと。」


「特に不便を感じてなかったから気づかなかった、確かにそうだな。

 何で疑問に思わなかったんだろう……。」


「村の特権として転移魔法陣を使って移動を短縮出来るからじゃない?

 それかそういうものだと思って慣れてしまってるか。」


そうか、転移魔法陣を当たり前に使ってるのは確かにある。


村の住民以外は使えないし疑問に思わなかったのはそれか……盲点だった。


「とりあえず気づいたのはそれくらいかしら、後は特に問題は無さそうよ。

 じゃあ今回のデートのメインディッシュに行こうかしら。」


「なんだそれ、聞いてないぞ?」


「話してないからね、それじゃしゅっぱーつ!」


そう言いながらカタリナに引っ張られて歩き出す、そんな引っ張らなくてもついていくから……ってこれ、魔族領に繋がる転移魔法陣に向かってる?


「おい、そこは魔族領……。」


「じゃあ行くわよ、村長の服を買いに!」


そのまま転移魔法陣に飛び込む俺とカタリナ、まさかそんな事を計画してるとは考えてなかった。




魔族領に出ると、いつもの活気が出ていて少しびっくりした……デパートが開店しているからもっと閑散としていると思ったが。


でもよく考えたらデパートの利用者は魔族領のごく一部だし、当然なんだよな。


そういう何気ない発見が出来ただけでも魔族領に来た価値はあるかもしれない、人間領もそんな感じなんだろうか。


周りを見ながら歩いていると服飾店に到着。


「よし、それじゃあ村長の服を選びましょうか!」


「あ、そういえばこんなことになると思ってなくてお金なんて持ってきてないぞ……。」


「大丈夫よ、私が持ってるし。」


カタリナがポーチの中から金貨を10枚ほど見せる、持ちすぎだとは思うが……しかし借りるのは申し訳ない。


「じゃあ今回は借りることにするよ、家に帰ったら返すから。」


「いいわよ返さなくて、私がそうしたいんだから。

 この村に来て仕事はしてるけど、村長への感謝の気持ちを何も表せてないし……この間だって迷惑をかけちゃったからそのお礼。

 それに色んなものを着せてみたいっていうのもあるし、付き合ってよね?」


カタリナがそんなことを考えてるとは思わなかった、気にしなくてもいいのに……だが本人がそうしたいと言うのならこれ以上断るのは失礼だろう。


今回はカタリナにおごってもらうとしよう、俺は俺で返せるときに何か返すとするか。


しかし色んなものを着せたいってどういうことだ……男を着せ替えたって何も楽しくないと思うのだが。


なんて思っているとカタリナと店員が仲良さげに話している、ここには何度か足を運んだことがあるのだろうか。


あ、俺を指差して2人ともいい笑顔を向けて来た……俺は軽く会釈をして笑顔で手を振る。


こちらに来るかと思ったが、店員とカタリナが二手に分かれて陳列棚から商品を色々選びだす。


何が始まるんだろうか……ちょっと怖いぞ。




数時間後。


「これもいいですね、似合ってますよ!」


俺は延々と試着室で2人の着せ替え人形になっていた、正直かなり疲弊しているのでそろそろ解放してほしい。


「おい、まだ続くのか……?」


「これで最後だから!」


その台詞はもう何度も聞いた、本当にいつ終わるのかわからない……あ、また服を持って他の店員がやってきた。


明日は絶対1日ゴロゴロするぞと心に決めて、着せ替え人形となるため心を無にした。


――結局帰ったのはそれから1時間くらいしてだろうか、店を出た頃にはとっぷりと陽が落ちていたのでそれくらいだろう。


疲れていたが、試着した商品の7割くらいをカタリナが購入したので荷物を持って帰るのに一苦労……何とか家に帰ると俺はそのままベッドに倒れ込んで眠ってしまった。


お風呂とかご飯とか……今は考えたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る