第233話 デパート3日目、昨日の疲労が取れないのでしっかり準備してゴロゴロすることにした。
「村長、大丈夫?」
カタリナの声で目を覚ますと朝日が昇りかけていた……そうか、昨日カタリナとの買い物で疲れ果ててそのまま眠ってしまったのか。
「体はだるいが大丈夫だ、単なる疲れだから気にしないでくれ。
今日は1日ゆっくり休むことにするよ。」
昨日の買い物中にゴロゴロすると決めたからな、昨日お風呂に入ってないし朝風呂に行ってご飯を食べたらお酒と枝豆くらい貰って部屋で本を読みながらダラダラしよう。
「それならいいけど……デパートに行っても大丈夫?」
「本当に気にしなくていいぞ、疲れ以外はすこぶる快調だからな。」
「分かったわ、ゆっくり休んでね。」
そう言った後にカタリナは俺の口に軽くキスをして微笑みながら出ていく、ちょっとドキッとしてしまった。
窓を見ると妻達が仲良く話しながらデパートに向かっているのが見える、俺も軽い運動をして朝風呂に向かうとするか。
着替えを持ってお風呂に到着、流石にこの時間は誰も居ないな……数十人同時に利用しても広々と使える浴場を独り占め出来るのはちょっと優越感。
これだけでも疲れが取れるのが分かるな、本当の温泉があればまた違うんだろうけど……流石にそんな贅沢は言えない。
そういえば温泉って
温泉成分を含ませたフィルターのようなものを経由して給湯すればもしかしたら……とは思うが、そのあたりは流澪がいい案を出してくれるかもしれないし今度相談してみようか。
何かで読んだが、ただのお湯より入浴剤を入れたお湯のほうが疲れは取れやすいらしいし……このお風呂が更に気持ち良くなるなら本格的に着手してもいいかもしれない。
クリーンエネルギー機構の研究の邪魔にならない程度に何か考えてもらうか。
まぁそれも明日の話だけどな、今日はゴロゴロするって決めたし。
お風呂を堪能して食堂で朝ご飯。
食べ終わってお酒を小樽いっぱいと大皿に枝豆を注文すると「お、家で飲むのか?」とドワーフ族がニヤリと笑う。
今日はゴロゴロするんだ、と返事をしたら「そういう日も大事だ、新作のビールを出そうじゃないか。」と奥へ引っ込んでいく。
新作のビールと枝豆を決めながら家でゴロゴロ出来るとは、至高の贅沢では無いだろうか?
持ってきてもらった小樽と枝豆を抱えて家に帰り、早速ビールをいただく。
これは美味い、苦みを残しつつも喉越しがスッキリしているしキレがある!
原始的な村の施設でここまで美味いビールが飲めるとは思わなかった、恐らく過去最高傑作だろう。
前の世界で飲んだものより美味しいかもしれない……と、なるとこれは徐々に温くなっていったものを飲むのは勿体ないぞ。
家に冷蔵施設は無いし……この際作ってしまおうか、と思い立って倉庫の一角を冷蔵冷凍保存スペースで利用することにした。
内部をアルミ、外部を木と鉄で覆ってその中に生活魔術を使ってもらえば簡易冷蔵庫の完成。
ラミア族かプラインエルフ族を呼んで生活魔術をお願いするとしよう。
「終わりましたよ、しかしこれちょっと羨ましいですね。」
外に出るとプラインエルフ族を見かけたのでお願いしてみると快諾、そのまま生活魔術をかけてもらった。
「要望が多いようなら他の住民の家にも配備するよ、
「ホントですか!?
皆に聞いてみます、結果は今度お伝えしますよ!」
俺の返事を聞いたプラインエルフ族は物凄い嬉しそうだ……と思ったら既に視界から消えていた。
そんなに羨ましかったのだろうか、あのプラインエルフ族の家にだけでも配備してあげればよかったかもしれない。
ともかく俺は家でゴロゴロする準備が整った、俺の部屋に冷蔵庫を設置しようと思ったが――あまりにダメ人間度合いが加速してしまいそうなので自制。
倉庫に作った自分を褒めたい。
早速グラスに一杯ビールを注ぐ、残りの樽は冷やして……と。
さて、豪華絢爛というわけではないが俺なりの至福の贅を尽くした休日をエンジョイするとしよう。
俺は注いだビールと枝豆を持って自室に行き読書を始める、ここまでしっかりとだらけるのは久しぶりかもな。
そう思いながら本をめくっていると「入るわよー。」という声が玄関から聞こえてきた。
あの声は流澪だろうか?
「俺は自室に居るぞー。」と返事をしてビールを飲みながら読書を続ける、何か用事があるのだろうか。
流澪の用事を聞いたら、そのついでにお風呂の改善案について相談しよう。
無理だったら今のままでいいし、急ぐことは無い。
「……しんどそうだったって聞いたから心配して見に来たのに、思いのほか元気そうじゃない。
しかも自室にお酒と枝豆まで持ち込んで、完全にだらけてるわね。」
「ただ疲れてただけだからな、こうしてだらけるのが元気になる一番の近道だと思って。
今日はゴロゴロすると決めたからその準備をしたまでさ。」
「まぁいいわ、たまにはそういう日もないと疲れるでしょうし。
それより実験に付き合ってほしいのよ、被験者は拓志が一番なのよね。」
実験というからクリーンエネルギー機構のことかと思ったが、被験者ということは
「構わないが、何で俺なんだ?」
「ただの疲労を
疲れてる以外は健康だったってカタリナさんから聞いたし、今後の為に試しておこうかなと思ったのよ。」
なるほど、それは確かに俺が一番適任かもしれない。
他の住民は疲れ知らずというか、疲れるまでの仕事や運動量がとんでもないというか。
「分かった、試してみていいぞ。」
「ありがと!
じゃあ早速やってみるわね。」
カタリナの件で
「よし、光の筋も見えてポップアップもある……行くわよ。」
そう言って流澪は短剣を振り下ろす、さて俺の変化はあるだろうか。
肩を回すと物凄い軽いし、さっきまで感じていた疲労感も一切無くなっている――あの時ウーテが小学生のように腕を振り回した気持ちが分かるくらい全身が軽い。
「どうかしら?」
「大成功と言っていいんじゃないか、全身が嘘のように軽いよ。
ウーテの時は体調不良だったが、あれも疲労から来ていたんだろうな。
ありがとう、大人になって一番調子がいいくらいだ。」
「ふふ、よかった。
元気になったみたいだけど、今日はもうずっと休むの?」
「気持ちが完全に仕事に向いてないからな、こんな気持ちで仕事をしたって何も成果を得れない気がして。
だらける準備はしてるし今日は休むつもりだぞ。」
疲労を取るために休むつもりだったが、流澪のおかげで想像以上に取れてるけどな。
まぁ、気持ちまではリフレッシュ出来てないし休ませてもらっていいだろう。
「それなら私も一緒に休んでいい?」
「いいぞ、ちょうど相談したいこともあったし。」
「それはちょうどよかった、何かしら?」
俺はお風呂の事を相談する、それを聞いた流澪も真剣に悩んでくれてこれはどうか、あれはどうかと色々な案を出してくれた。
俺もそれに対して原料や資材、設備の問題を話していると相当な時間が経ったのだろうか「ただいまー!」という声が聞こえてきた。
その声を聞いた流澪はハッとした表情をして窓を見て落胆する、時間を過ごしすぎたのだろうか?
「遅くなっちゃったし今日は帰るわね。
お風呂の事はまた考えておくから。」
しょげた表情のまま流澪が部屋から出ていく、本当にどうしたのだろうか……。
その後妻達から「流澪さんに何を言ったんですか!?」と怒られ気味に言い寄られたので、流澪とどう過ごしていたか説明すると全員でため息をつきながら肩を落とす。
「不器用さんと鈍感さんが合わさると、こうも苦労するんですねぇ……。」
ものすごい失礼なことを言われている気がする。
流澪の気持ちはメアリーから聞いてしまっているが、そんな様子は向こうも一切見せてなかったからな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます