第345話 ウーテだけが聞こえた声に対して調査をした。

「これで何とかいいかしらね、かなり応急処置で申し訳ないけど……。」


「ありがとうございます!

 応急処置をしていただけただけでも……そもそもホープストーン自体未知の技術ですから何かあってもおかしくないんですよ。」


ウーテがホープストーンから湧き出る水の余剰分を異世界の門へ直接送り込むように操作してとりあえず解決。


まさか水がパイプの形をしてそのまま流れて行くように出来るなんて思わなかった、結局俺の力は一切必要無かったな。


「しかし水が無限に湧き出る石ねぇ……村長は何か分かるの?」


「昔の人が模様を完璧に繋げて以来水が出てきだしたらしいけど、それ以外俺には何も分からないな。」


「水が無限に、ねぇ……。」


ウーテは腑に落ちない様子でホープストーンを眺めている。


自分が水を自由に操れるからこそ何か思うところがあるのだろうか。


何か分かればいいんだけどな。


「……ちょっと静かに!」


俺はウロウロしながらホープストーンを眺めているとウーテが叫んだ。


静かにと言われて歩くのをやめて物音を立てないようにする……ウーテは耳を澄まして何か聞こうとしている。


何か聞こえたのだろうか、もしやさっきの助けてという声がまた聞こえたのか?


「絶対さっきの助けてって言った声が聞こえたのに……!

 どこから発せられてるのかしら……。」


「もしかして頭の中に話しかけられてるとかか?

 それなら俺に聞こえないというのは納得出来るんだけど。」


「どうなんだろう、そう言われるとそんな気がしてきたかも……。」


突然の事なので完璧に状況把握が出来ていないのかもしれない。


だがこれで声が聞こえたのが二度目というなら、これは幻聴ではないということだろう。


共通点と言えばウーテにしか聞こえてないということだ、もしかしたら天使族にも聞こえてるかもしれないけど話題になってないのでその可能性は考慮しないでおく。


一応カタリナ達にも確認を取ってみるか――シュテフィに確認は取れないけど。


「俺はちょっと皆に確認したいことがあるから行ってくる。

 ウーテももう少し調べて納得したら戻って来てもいいぞ、もし戻って来てなければまた俺はここに来るから。」


「それなら村長が来るまで待ってるわ、助けを求められている以上気になるし。」


「分かった、じゃあまた後で。」


俺はホープストーンがある場所を離れ食堂へ向かう、恐らく皆そこに居るだろうからな。




「戻ったのね、ウーテちゃんは?」


「その事で少し確認したいことがあるんだ。

 デニスにも確認を取りたい、ちょっとついてきてくれ。」


俺がそう言うとカタリナは疑問を顔に浮かべながら俺についてくる――タイガも一緒だ。


「デニス、ちょっといいか?」


「む……すぐ行くから待ってくれ。」


厨房から声をかけると天使族に技術提供をしている様子だった、教えるのはいいけど見返りはあるのかな。


コロッケが村で食べれるようになると嬉しいんだけど。


「待たせたの。」


あれから2分ほどでデニスがこちらへやって来た、ほんとにすぐだったな。


「俺の確認もすぐ終わるから大丈夫だ。

 ここに来て『助けて』という声が何度か聞こえたりしなかったか?」


「ワシは聞こえておらんの。」


「私もね、ウーテちゃんと村長には聞こえたの?」


「いや、それがウーテだけなんだよ。

 俺にも聞こえてないんだ。」


それを聞いたカタリナは「うーん……。」と唸りながら何か考えている様子に、そしてタイガはグォグォと鳴きながら俺のズボンのすそを引っ張る。


「どうしたんだタイガ。」


「グォッ!」


タイガは走り出したと思ったら止まって振り返る、どうやらついてこいと言っているようだ。


「何か知ってるのかも、ついていってみましょう。」


「ワシは天使族と技術交換をしておる、そっちは任せたぞ。」


デニスはそう言って厨房の奥に引っ込んでいった――コロッケは頼んだ。




「皆集まってどうしたの?」


「どうしたもこうしたも、ウーテちゃんが聞いた声について考えてたのよ。

 そしたらタイガがこっちに……ほら、ホープストーンをテシテシ叩いてるでしょ?」


ホープストーンを叩いてる……?


カタリナに言われてホープストーンを見てみると、確かにタイガはホープストーンを叩いていた。


俺を呼んでここに連れて来たことを考えると、あれは意味のない行動ではないだろう……ホープストーンに何かあるのだろうか?


俺はホープストーンに近づいて調べてみることに。


だがどう見ても模様が描かれた石だ、そこから水が湧き出ているだけで俺にはそれ以上分かることはない。


そうだ、ドリアードに何か聞けば分かるか?


『ドリアード、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。』


『んもぅ、そろそろお昼寝しようと思ったのに。

 どうしたの?』


『実はな――』


俺はドリアードに事情を説明、するとドリアードはゲラゲラと笑い出す。


『何がおかしいんだ?』


『ウンディーネ、見ないと思ったらそんなところに居たの?』


また聞き覚えのある名前が……ウンディーネだって?

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