第150話 ユルゲンが訪ねてきたので神殿に案内した。

うどんが出来た次の日、早速食堂にうどんが並んでいたので皆がこぞって頼んでいた。


「美味しー!」


好評みたいで何よりだ、優しいしするっと食べれるし胃腸が弱っている時にもいい食べ物だぞ。


ただ、見た目以上にカロリーはあるのでダイエットをしている人は気を付けたほうがいいかもな。


俺もそれに含まれるのだが……美味しすぎてこれ3玉目だし。


あまり食べ過ぎると本当に太ってしまいそうになるのでこれでやめておくことにする、まだ食べたいけど……もういつでも食べれるからな。


「おぉ、村長!

 会うことが出来て幸いです!」


食堂を出ると魔族に声をかけられる……確かあの人は宗教教団の枢機卿、ユルゲンだ。


「珍しいな、宗教教団のトップが村に来るなんて。

 何か用事でもあるのか?」


「いえいえ、あのイベントで神殿を建設していただいたのに、私の口からお礼を申し上げれておりませんでしたから足を運んだ次第で。

 此度はあのような唯一無二の大神殿を建設していただきありがとうございました、領民もより信心深くなり心の平穏が訪れています。」


住民の心の支えになってくれたようなら何よりだ、少し無理をしてイベントをやった甲斐がある。


魔族領には色々助けられているからな、これからも良好な関係でありたいし。


「あそこまで大きなイベントを開催して認知させた魔族領のおかげでもあるさ、俺は神殿を建てただけだからな。

 自分で建ててなんだが、まだ中をじっくり見れてないし近々見に行かせてもらうよ。

 ちょうど昨日思い立って村にも神殿を作ってな、もし直すところや改善点があれば参考にしたいし……俺の思ったように作ったからな。」


「なんと、この村にも神殿が出来たのですか!

 それは是非祈りを捧げなければなりません、よろしければご案内していただけませんか?」


「あぁ、俺も食事が終わって時間が取れてるし大丈夫だぞ。」


ユルゲンと軽い世間話をしながら昨日建てた神殿へ案内する、ユルゲンは入る前に軽く祈りを捧げていた。


そういうマナーなのだろうか、でもプラインエルフ族でもそんなことはしていなかったしユルゲンの個人的な作法か宗教教団の作法だろう。


中に入るとユルゲンは立ったまま動かなくなってしまった。


「ユルゲン、どうしたんだ?」


「村長、あの神々しい像と後ろの壁は一体……?」


「あの像は俺をこの世界に転移させた神だ、俺の記憶に基づいて作ったから間違いないぞ。

 それと後ろのあれは壁じゃなくガラスだ、金属を上手く混ぜるとガラスに着色出来るからそれでああいうものが作れる。

 ステンドグラスって言うんだ、デザインは前の世界で見たうろ覚えのものだけど……何せそういう才能は俺には備わってないからな。」


一応像がオレイカルコス製だというのは伏せておいた、まだこの村以外には流通させてないし。


「神本人を模った像なのですか!?

 是非魔族領の神殿にも作っていただきたいのです、いくらでもお支払いいたしますので!

 ステンドグラスというのも非常に良い物です、あちらは商人ギルドと話し合ってデザインを決めてからになりますが、神の像はすぐにでも欲しいですよ!」


ユルゲンが興奮気味に神の像を作ってくれとお願いしてくる、それ以上近づくとキスしてしまうのでちょっとやめてほしい。


男色の趣味は無いからな……。


「神の像なら材料さえあればすぐにでも作れる、だが今神殿に祀ってある像があるんじゃないのか?

 企画書や図面には台座の指定はあったが像の指定は無かったから、てっきりそうだと思っていたぞ。」


「神に選ばれたとは聞いておりましたが、まさか神本人と対面してるとは思っておらず……宗教教団のシンボルとなっている像を設置してあるのです。

 ですが神本人を模った像となれば話は別、すぐにでもそれを撤去して神の像を台座に置かせていただきますよ!」


宗教教団のシンボル像をそんなぞんざいに扱っていいものなのだろうか、だが枢機卿であるユルゲンが言うなら問題無いのだろう。


「なら材料は大理石でいいか?

 あの像に使ってある材料は村でしか使わないと決めてるものでな、それ以外で綺麗に見えて手入れのしやすいものは大理石が一番だと思うし。

 それと代金は構わないよ、あの神殿の発端は俺が神に信仰心を集めてくれとお願いされたのを魔王にもお願いしたものだから、俺のお願いの延長ということで。」


本当なら代金をもらわないと怒られるんだろうが、これは俺の個人的な事情も関わっているからな。


もしかしたら信仰心がある程度集まって神と会えるかもしれないし、会えたら殴りたいし。


だが感謝しているのは本当なので小突くくらいにしといてやるか。


「感謝感激の極みです……ありがとうございます!

 村長の納品に合わせてシンボルの像を撤去いたしますが、いつごろ魔族領にお越しいただけるでしょうか?」


「今のところ予定は入ってないし、明日にでも材料を持って神殿へ行くよ。

 さっき言ったように中を見て回りたいのもあるし、神殿で想像錬金術を使って作るから撤去はその時でいいぞ。」


わざわざ作って持っていくのは面倒だ、何かの拍子に傷がついたり割れたりしてしまうだろうからな。


その場作って台座にそのまま設置するのが一番手っ取り早くて安全。


「それなら明日は待ってください……せめて1週間後に!

 そんなことをしていただけるのに、見られるのが偶然その場に居合わせた者だけなど可哀想過ぎます!

 魔王様ともお話をして十分に告知をし、出来るだけ多くの者に見ていただきたい!」


「またイベントのような事をするのか?

 だが本当に像を作るだけだし、何か出来たとしても祈る程度のものだぞ……1週間じゃ流石に催し物の企画を練るには短すぎるだろうし。」


「構いません、むしろそれ以上の事は望んでおりませんので。

 日程が決まれば定期便を通じてお伝えしますので、それでよろしいですか?」


これは折れる事は無いだろう、それにあのイベントのような事をするわけでもないらしいし承諾。


ユルゲンからは熱い握手をされてお礼を言われた、その後しっかりこの像に祈りを捧げたいということで俺は神殿を後にする。


まさかそんな大事にするとは思ってなかった、大勢の人の前に出るのは緊張するが今回は喋るわけでもないし大丈夫だろう。




俺はその後カールと散歩がてら見回りをする、女性陣がどういったものを買ったのかが気になるのもあるので色々話しながら回ることに。


村に無くて魔族領にあるものを気づいた人が居るかもしれないからな、そういう所も聞きながら回って村に取り入れていこう。


生活の利便性は心を豊かにするだけでなく時間を生み出してくれるし、それに気づいて他にも何か改善出来ないかと探すきっかけにもなる。


普段皆がそういう意識を持ってくれているからともかく、別の文化を持った種族が住む場所で1日過ごせば村との相違に気付くこともあるだろう。


――そう思って話を聞いたのだが。


「村のほうが便利です、お店の出し方や陳列の仕方はすごく参考になりましたが。」


「村のほうが食べ物は美味しいし綺麗だから別にそこまで……でも小物や食器のデザインセンスはいいからああいうのは買いたいし村でも作りたいかしら。」


「村と比べるとどうしても見劣りしますよ、だってこの村は多分世界一暮らしやすい場所ですし。

 そういえば時たま見かけたふかふかの小さい動物、飼ってるらしいですけど可愛かったなぁ……ちっちゃくなったタイガ様みたいで。」


生活の利便性に関しては全く改善意見が出なかった、魔族領より優れているのは素直に喜ばしいが……こういった意見をミハエルやグレーテがストレートに言うのはどうかと思う。


もう少し故郷に敬意を持ってもいいんじゃないだろうか、特にミハエルなんて王族だろ。


だが参考になる部分や次に欲しい物の目星はついたりしたらしいので、そこは村にも取り入れたり経済を回したりしていけるだろう。


それと気になる意見が一つ。


タイガをちっちゃくしたような動物が居ただって、俺は無類の猫好きだから詳しく話を聞かせてくれ。


猫の話をしていると、どこから聞いていたのかタイガ・レオ・トラの3匹が俺の周りに寄ってきて頭を摺り寄せてくる。


ヤキモチを妬いているのだろうか、俺は笑みをこぼしながら3匹の頭を撫ででやる。


大丈夫だ、気になってるだけで一番はお前たちだからな。

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