第372話 高難易度ダンジョンについての話し合いがとりあえずまとまった。

「むむ……まさかここまでダンジョン攻略部隊希望者が少ないとは。」


オスカーに悪い笑顔をやめてもらって引き続き話し合いをしているが、参加者が最初の6人以外増えない。


いつもなら他のウェアウルフ族やリザードマン族あたりが意気揚々と参加するんだけどな。


まさかの結果にオスカーも困っている、今のところ9人だからな。


オスカー夫妻は絶対参加するだろうし。


そこで何かを考えていたハインツがキュウビに質問する。


「キュウビ様に質問です。

 オークとオーガの色は何色だったのでしょうか?

 もしかしたら見たことのある色かもしれません、それならどれくらいの戦力を有しているかある程度判断がつきます。」


「紫だったな。

 人間領と魔族領が緑、未開の地が青だろう。

 紫というのは見たことがなかったが、奥のナーガとやらの存在もあるし緑より弱いということはまずなかろう。

 それに周りの魔物もあのダンジョンは避けていたように思うぞ。」


「紫……確かに見たことありませんね。

 メアリー様とグレーテ様はどうでしょうか、旅という意味ではお二人はベテランですが。」


ハインツから話を振られて答えるメアリー、少し考えた様子だったけど。


「……見たことないですね。」


「私も見たことありません。

 趣味で文献を読み漁りもしてましたが、紫色のオークとオーガの記載はありませんでしたし。」


「そうですか……。」


続いてグレーテも返事をする、文献にも無いとなるといよいよ新種でより強い魔物だという可能性が出てきたな。


質問をしたハインツも残念がっている、何か進展があればと思ったのだろうが……そこまで気に病まなくていいぞ。


「シュテフィさん、恐らくその人が所有者だろうという吸血鬼族の戦闘の実力はこの村で言うと誰くらいですか?」


今度はメアリーがシュテフィに質問を投げかけた。


「あいつは裏方が主だった役割だったから戦闘でいうと余裕で私以下よ。

 あえて例えるなら……そうねぇ、ラミア族と同程度かしら?

 近接戦闘は全く出来なかったはず、だから魔術で戦闘をするとしたらラミア族という例えだからね。」


という事は、所有者自体の制圧は簡単なんだな。


魔力でもシュテフィ以下、近接戦闘は出来ないとなるとこの村の実力者達なら簡単だろう。


というか、シュテフィが吸血鬼一族でも頭一つ抜きんでてる可能性もあるけどな。


魔族と人間の先祖はやっとの思いでシュテフィを封印したみたいだし、他の吸血鬼一族は何とか出来たのかもしれない。


「それならあのナーガについて何か知ってることがあれば。」


「あれはウルリケ……あぁ、所有者であろう奴の名前ね。

 ウルリケが昔に手懐けた異世界の魔物なのよ、他に同じような魔物が居るとは考えにくいし場所が場所だからそうだろうなと思ってるわ。

 ナーガはウルリケ以外には全く懐いてなかったし……私も噛まれたからあいつ嫌いなのよ。」


「異世界の魔物……?」


「私が能力で異世界の魔物を連れて来てた時、ウルリケにもサンプルで1体ずつ見せてたのよ。

 その時ナーガが気に入ったのかどうにかしようとして、そのままどうにかなったって感じね――ただ、ナーガはその1体だけでそれから見つからなかったんだけど。」


シュテフィの話を聞いてメアリーがずっと考えている、この話から読み取れることって無いと思うんだけどなぁ。


実際ウルリケという人物の話とナーガの話しかしてないし。


「キュウビさん、ダンジョンに近づいた時中の魔物はそちらに気付きましたか?」


「気付いてたはずだ。

 こちらを視認してきていたからな。」


「なるほど……。

 オスカー様、提案が。」


「どうしたのだ?」


「攻略前に偵察部隊を組みましょう。

 手前の魔物を完全に無力化出来る構成であれば問題ありません。

 無力化している間にラウラの索敵魔術で残りの魔物がどれくらい居るか調べるだけですから。」


メアリーの提案はかなりいいと思う、周りの皆もそう感じたのか「賛成。」という声がちらほらと挙がりだした。


高難易度ダンジョンだし、吸血鬼一族きっての切れ者が所有している可能性もあるからな、これくらい慎重になってもいいだろう。


「久々の前線ですね……戦う訳じゃないですが。

 索敵魔術も大分使い勝手良くなりましたし、頑張るですよ。」


「そうだ、索敵魔術といえば――タイガも使えると思う。

 マルクス城を地上から見つけたのはタイガなんだ、何かを察知したように見えたんだよ。」


「そうだったのですね……何も聞いてなかったです。

 それなら私とタイガ様の2人で使って、結果を伝えることにするですよ。」


タイガが戦闘側じゃない参加も珍しいが、今回は偵察だし適任だろう。


索敵魔術が使えれば、だけどな……多分間違いないと思うけど。


「では、まずメアリー殿の意見通り偵察部隊を組むことにする。

 その程度であれば先ほどの6人とワシとシモーネ、それにキュウビを加えた9名が戦闘要員で問題無かろう。

 いくら強かろうとこの9人が後れを取ることは無いはずだ。」


「ラウラが参加するなら僕も参加する。

 ウルスラは奥様方に見てもらう事にするから。」


クルトが新しく参加を表明、実力的にも申し分無いな。


「ローガー、あんたは参加しないの?」


ヒルデガルドがローガーに煽るような口調で話しかける……ケンカはやめてくれよ。


「出来るなら参加したいが……お前まさか忘れたのか?」


「あっ、そうだった。」


ローガーの言葉で何かを納得したヒルデガルド、そういえば2人はいい雰囲気だったらしいしプライベートで何かあるのかもしれない。


「む、参加しなくていいのか?」


「しないというより出来ないといったほうが正しい。

 ウェアウルフ族の習性でな、妻が身ごもっていると夫は本能的に家からあまり離れたくなくなるんだ。」


「「「「「おめでとうございます!」」」」」


ローガーが理由を離した次の瞬間、周りの人たちからお祝いの言葉が投げかけられた。


突然だったうえに相当な大きさでびっくりしたのか、ローガーの耳がペターンと頭にくっついてるのを目撃。


本人は恥ずかしがっていたが、気にする事はないと思う。




その後話し合いを解散した後にタイガを連れてくると、レオとトラも来たので参加するかをラウラが説明、3匹とも参加したい意思があったらしい。


これで戦闘要員は10人と2匹、それにラウラとタイガ。


最早攻略部隊のようなものだが、食糧運搬係とかは居ないので本当に偵察して帰ってくるだけだな。


出発の準備をする途中、場所が案外遠いのが分かったので急遽ミハエルも参加することになってたけど。


上手く行けばダンジョンコアが手に入るし、皆には安全第一で頑張ってもらいたい。


ちなみに俺はこの話が出る前に参加するのを妻達から止められていた。


カール・ペトラ・ハンナの3人が俺に構ってほしい様子らしい。


なので俺は留守番して子煩悩になる、そう決めた。


俺は村で無事を祈ってるからな、頼んだぞ。

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