第110話 ドワーフ族がやりすぎたので呆れてしまった。

ザビーネがドワーフ族へレンガの作成依頼をしてから3日が経った、そして俺の目の前には大量のレンガが日干しされている。


「ほっほ、ちと作りすぎたわい。」


ちょっとじゃないぞ、これは相当って言うんだ。


「とりあえず倉庫を増設する、日干しが終われば魔族領へ送る分だけ仕分けを頼んだぞ。

 その後他の資材と一緒に陸路でミノタウロス族とケンタウロス族に送ってもらうから。」


「わかったぞい。」


レンガが充分収納出来るように石材倉庫を増設、とりあえずはこれで何とかなるだろう。


「村長、これでは足りぬかもしれぬぞ?」


「え、ここから半分以上は出荷されるだろうしこれだけスペースがあれば収納出来ると思うんだが……入らなさそうか?」


目測を誤っただろうか、俺にはここにあるレンガを全部収納してもまだスペースが余りそうに見えるけど。


「これは日干しレンガじゃ、これと同じくらいの量の窯焼きレンガが今焼かれておる。

 ほれ、あっちで大きなドームにドラゴン族が火をゆっくり噴いてくれてるじゃろ、あれじゃ。」


ドワーフ族が指を差した方向に目をやると、言った通り家くらいありそうな大きな窯のようなものにドラゴン族が火を噴いてる……製作スピードが早すぎるって。


「言ったじゃろ、作りすぎたって。」


言ったよ、だけど日干しレンガだけでも相当だったのにこれじゃ滅茶苦茶だよ。


俺はさらに倉庫を増設して、ドワーフ族にスペースも確保出来たことを確認してもらった。


「これ、どっちを出荷すればいいんだ?」


「分からぬから日干しと窯焼き両方作ったんじゃよ。」


なるほど、と言いかけたがこの量は明らかにやりすぎなので今後注意してほしい。


とりあえずミノタウロス族とケンタウロス族を呼んできて、どちらも同じだけ出荷して持って帰ってくるのは大丈夫か聞いてみると「全く問題ありませんよ。」と力強い回答をもらえた。


魔族領へ聞きに行ってもいいんだが、今はザビーネも仕事の佳境だろうしあまり邪魔は出来ない


……前の世界で仕事が忙しくて猫の手も借りたい時に来客が来るとストレスがすごかったからな。


閑話休題。


とにかく資材の準備は出来たのでミノタウロス族とケンタウロス族に頼み、魔族領まで陸路で運んでもらう。


商人ギルドまでの道を知ってるケンタウロス族が居たので、荷運びと先導をその人に頼み久々の交易部隊を編成してもらう。


ウェアウルフ族とドラゴン族が警備に着くらしい、相変わらずこの村の戦力は頼りになるな……こういう時に失敗はないと信用出来る。


荷造りも終わったので出発の見送りへ、道中気を付けてな。




何とか氷の季節までにやることが全部終わったな、後は交易部隊の帰りを待ってイベント日時の確認と台詞の練習くらいだろうか。


一息ついて食堂で食事を取る、ドワーフ族に驚かされっぱなしでいつもより早めにお腹が空いてしまった。


そういえばラウラが早ければ出産するかもしれないな……しかしハーフドラゴンになって卵生と胎生どちらなのだろう……ドラゴン族って卵生なイメージがあるんだけどな。


気になったので家に帰ってウーテに聞いてみることに。


「なぁウーテ、ドラゴン族って卵生なイメージがあるんだが……実際どうなんだ?

 そろそろラウラが出産するかもしれないし、ハーフドラゴンになってどっちになるんだろうと気になってな。」


「ドラゴン族は人間の姿だと胎生よ、なのでラウラさんは普通に赤ちゃんを産むと思うわ――大分お腹も大きくなっていたし。

 ドラゴン族の姿で夜の営みをすれば卵生だけど……体が大きすぎるし卵を温めてると全然動けないから苦痛らしくって、最近は人間の姿で繁殖するのがほとんどだわ。」


なるほど、その時の姿によって違うのか……恐らく羽を生やした状態では寝づらいだろうし普通に赤ちゃんが産まれてくるだろうな。


カールはプラインエルフ族として産まれた、お母さんの種族に寄るらしいからな……だがラウラの場合はどうなるのだろう。


ドラゴン族なのか、プラインエルフ族なのか――はたまたハーフドラゴンという新種族なのか、気になるけど産まれたら分かるだろう。


神殿建設イベントと出産日が重なってお祝いに行けないようなことが無いのを祈るか、もしすぐに行けなくても怒らないとは思うけどこの村に最初期から居てくれているラウラの出産だ、すぐにお祝いしたい気持ちがある。


「私も早く村長の子ども欲しいなぁ、この前私1人を相手にしてもらった時に妊娠してるといいんだけど……まだ分からないのよね。

 特に体の変化もないし、少し匂いに敏感になったけど鼻の通りが良くなっただけだろうし。」


「あぁ、女性の月事が終わってからってやつか……まぁ何度も言うが子どもは授かりものだから。

 だが個人的には2人同時は正直しんどかったから助かったぞ。」


「やっぱりそうだったのね、無理させてしまって申し訳なかったわ。

 好きだからやることはやるけど、今後は話し合って一人ずつのローテーションを組むようにするから。」


そんな仕事のシフトみたいな感じで愛情表現をしていいのだろうか、でも妻が言うのだからいいんだろうな……。


「焦らなくても時間はまだまだあるさ、でも俺としてもカールの弟か妹は早く欲しい気持ちもあるんだよな。

 お互い試せることは試して頑張ろう、もちろんカタリナもだけどな。」


「えぇ、私たちもやれることが他にないか話し合ったり他の奥様方から色々教えてもらったりしておくわ。」


多少の焦りこそあるが、子どもを作らなきゃという強迫観念が無いことが幸いだな、あれはストレスになって自分を追い詰めたりもし妊娠しても早産になってしまったりといいことが無い。


前の世界の田舎では、やれ早く子供を作れだ孫を見せろだと散々言われている人も居てかなり可哀想だったな……そういうストレスも田舎の過疎化と少子化の原因の一つだったんだろう。


この村ではそういう心配はない、俺の知らない間に色んな人が妊娠してるし出産してる。


もちろんお祝いはしているが、基本個人の所有物がないので言葉だけになってしまうがな。


……いや、今は魔族領の貨幣があるか。


イベントの日時を見て数日早めに前乗りし、出産祝いを買うのもいいかもしれない。


メアリーにしてやれなかったのが悔やまれるが……メアリーとカールにもお土産を買って、誕生日にお祝いするようにすれば許してくれるだろう。


そう思うとイベントは早めに終わってほしいな、交易部隊は行き帰りどちらも荷物はあるので数日は帰って来ないだろうし。


まぁ出来たらでいい、気長に待つことにしよう。


「村長ごめん、ちょっと体が重いから外の空気吸ってくるわね。」


ウーテが突如そう言って足早と外に出ていく、顔色が悪かったけど大丈夫なのか?


心配になった俺はウーテを追いかけたが、ドラゴンの姿になって飛んで行ってしまったのでこれ以上追いかけることが出来なかった……帰ってきたらどうしたのか聞いてみようか。

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