第301話 魔王と謁見の続きをした。

魔王が気絶しているので再び待機。


今度は大したことはないのが分かっているのでクズノハの膝枕で眠る魔王。


「クズノハはコロポックル族の事話してなかったんだな。」


「公になってない情報を話すほど我は愚かではないぞ?

 新しい料理の品目が増えた、くらいは話すがの。」


「少し安心したわ、コロポックル族なんて伝説みたいなものだし。

 村の居住区でもかなり分かりづらいところに住んでいるから、村を訪問してる人も気づいてないみたいなのよね。

 村長はそこまで考えてなさそうだけど。」


カタリナの言う通りだ、確かに言われると分かりづらい場所なのは偶然。


花畑なんかを作るために土地を広げやすかったからという理由しかないんだよな。


「コロポックル族が移住してきたのは黙ってたほうがいいのか?」


「魔王様やダンジュウロウ様には話していいと思うけど……ホントに偉い人にしか知らせないほうがいいと思うわ。

 理由としては冒険者のお宝の1つになってるホーニッヒの価格崩壊が起こる、それによって起こる不利益は冒険者だけじゃなく村まで広がるから。

 他にも理由があるけど、これが一番大きな理由ね。」


「そこまで貴重なのは何か理由があるのか?」


「我も気になってそのあたりを調べてみたのじゃ。

 味・保存性・多岐にわたる使用用途・希少性……このあたりが評価された結果じゃと見ておる。

 ただ赤子に与えるのはダメというのが唯一の欠点と言われておるくらいじゃな。」


確かにハチミツは色んな用途がある、そのまま食べてもいいしお菓子に混ぜてもいいし。


何なら水を混ぜて発酵させると蜂蜜酒が出来るんだよな、ある程度ハチミツの貯蔵が出来たら試してみるのもいいかもしれない。


ただ赤ちゃんは確かにダメだ、乳児ボツリヌス症を引き起こしてしまうからな。


どういう病気なのか詳しくはないけど……。


ただ何故そこまで貴重なのかは理解出来た、養蜂の技術が確立されるまでは流通させたとしても魔王やダンジュウロウと直接繋がっているルートのみにするとしよう。


「うーん……。」


「気が付いたか、まったく何回も気絶しおって……。」


「クズノハ、人前で何をしておるのじゃ!?」


膝枕に気付いた魔王が顔を真っ赤にしてクズノハから離れる、恥ずかしかったのだろう。


「初心なのは分かっておるが、村長の前でならこれくらいいいじゃろ。

 我も他の人の前でするつもりはないから安心してほしいのじゃ。」


「むむむ……じゃが恥ずかしいものは恥ずかしい!

 それより村長、ホーニッヒを格安で流通とはどういう事じゃ!?」


良かった、気絶直前の記憶はあるみたいだな。


それなら理由を話すだけで話が通じるだろう、カタリナとクズノハに言われたことを意識して魔王に理由を伝えるとするか。


「これは誰にも言わないでほしいんだけどな――」




「未開の地の村は本当に何でもありじゃな、ドラゴン族とはまた別の意味で伝説となっておるコロポックル族が移住しておるとは……。」


「そういう訳だ、まだ村にも十分な貯蔵量はないからそこまで流通させることは出来ないけど。

 いずれは村限定でどんどんホーニッヒを使った料理やお菓子、それにお酒を提供するつもりだから楽しみにしててくれ。」


「もちろんじゃ!

 もう既に楽しみじゃの……ホーニッヒは数回食べたことがあるが非常に甘くて美味しかったのじゃよ。」


実際この世界のハチミツは物凄い美味しい、まだコロポックル族謹製の物しか食べたことないけど。


野生の物で売り物になるほど高品質なら間違いなく美味しいだろうし、魔王が楽しみにするのも分かる。


コロポックル族には頑張ってもらわないとな、島の開拓次第では漁にも人員を割いてもらう可能性はあるけど。


そのあたりはパーン族がどういった仕事に適性があるか次第か……羊の獣人だし漁の適性はないかもしれないけど。


だが膂力さえあれば投網を引き揚げる作業くらいは出来る、期待しておくとしよう。


「村長、ちょっと聞き捨てならない単語が魔王様との会話であったんだけど。」


「どうしたんだ?」


カタリナが割と真剣な顔で問い詰めてくる、何か変な事を言っただろうか?


「ホーニッヒを使ったお酒なんてほんとにあるの?」


「それ我も気になっておったぞ。」


「私もじゃ、村なら出来るのかと流したが2人とも知らぬのじゃな。」


そうか、ハチミツの味は知られているが高級ゆえそれを酒にする発想がなかったんだな。


作り方は簡単だったはず、水を入れて放置で発酵したら出来たはずだし。


もっといい作り方はあると思うけど、俺がゲームか小説で知った蜂蜜酒の作り方はこれだったんだよな。


当時はそんなので酒が出来るのかって感心したっけ、だからこそ記憶に残ってるんだけど。


「出来るぞ、最初は俺の試作から……その後ドワーフ族が試作を重ねて皆に提供するという流れになるだろうが。」


「私の出産が終われば是非飲みたいわね、その頃にはドワーフ族の試作段階も終わってるでしょうし。」


「私は試作段階でも飲みたいのじゃ!」


「我も気になるのじゃ。」


この世界の住民は本当にお酒好きだな、飲まない人ももちろん居るんだけど。


「その時が来たらな、まずは生産量の拡大と貯蔵を主だった目標にしなければ。

 その間は料理やお菓子に回すのが主な用途になるだろう。」


それを聞いた魔王とクズノハは残念そうな顔をする、カタリナはまだ飲めないのでほっと一安心したような表情だ。


本当は試作段階でも飲みたいのだろう、俺が知ってる作り方は絶対そこまで美味しくないからやめておいたほうがいいんだけどな。


「そういえば話は逸れたが、カタリナの案は受け入れるのか?

 俺としては村のお菓子作りの活性化にも繋がるし、嬉しいことが多いんだけどな。」


「魔族領はその提案を受け入れる!

 じゃがホーニッヒの事を隠しながらギュンターと話し合わなければならぬ、対応まで少し時間が掛かることを許してくれ。

 村の試食提供に関してはいつ行ってもよいぞ、それは明日にでも話を通しておくのじゃ。」



「分かった、それじゃその時は連絡してくれ。」


その後は少しの世間話をして謁見を終了、ドワーフ族と奥さんも用事を終えて俺達を待っていた。


4人で一度村に帰りそのまま人間領へ。


お菓子以外にも食べたいということで、人間領で食事をする事になった。


まさかこの世界で七草粥のようなものを食べれるとは思わなかったぞ、これかなり好きだったんだよな。


他の3人にも好評で良かった、前の世界じゃ嫌いな人が多くて寂しい思いをしてたし。


ただカタリナの「雑草入ってるの?」という感想は途中で口を押さえてしまった、禁句だからそれ。

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