第302話 人間領でトラブルに巻き込まれたが、無事ダンジュウロウと話すことが出来た。
人間領でご飯を食べてダンジュウロウが居る城へ向かう。
ドワーフ族と奥さんはキチジロウの所へ向かいながら町を散策するらしい、何かいい物があれば教えてくれと伝える。
人間領は魔族領ほど頻繁に来てないから散策をしっかり出来てないんだよな。
キュウビに連れられて主要な施設は回ったけど、美味しい料理やお菓子は隠れている事が多いし。
そういった店はやはり足を使って探すしかない。
魔族領でも俺が知らない美味しいお店を教えてくれたし、期待しておくか。
「なんかさ、人間領全体が少しざわついてない?
血気盛んになってるというか、見た目がいかつい人が多いというか。」
城を目指している途中にカタリナから町の様子について聞かれる、俺も注意して周りを見てみると確かに前より腕っぷしに自信がありそうな人が多い。
「新しいダンジョンや魔物の討伐依頼、それか催し事があるのかもしれない。
いずれにせよ俺達が関与することじゃないさ、城を目指そう。」
そう言って城を目指していると、ガラの悪そうな男が2人こちらに寄ってくる。
「おい兄ちゃん、あんたのような優男が闘技祭典に登録かい?
やめとけやめとけ、初戦で潰されるのがオチだ。」
「闘技祭典ってなんだ?」
「兄ちゃんどこから来た田舎者だァ?
この時期の人間領は闘技祭典一色だろ、それを知らないなんて相当辺鄙なところから流れて来たんだな。
しかし隣の女、そんな奴が連れてるには勿体ねぇ上玉じゃねェか……俺が隣を代わってやるよ……ぐへへ。」
質問に答えてほしかったが教えてくれなかった、本気で気になってたのに。
しかし俺からカタリナに標的が移ってしまったのはヤバい、いくらなんでもこんなガタイのいい男2人を相手にすることなんて出来ないし。
「あんたらの隣なんてこっちから願い下げよ。
不潔で厭らしくて周りや相手の事を気づかえない男なんて最低。」
「なんだと、このアマ言わせておけば……!」
カタリナが火に油を注ぐような発言をする、流石にマズい!
何とかしなければという思いで出来ることはないかと思考を張り巡らせる――やれることはドリアードの力を借りて身体能力を向上するか
前者は加減を間違えば大怪我をさせてしまうし、後者は大騒ぎになることが濃厚。
なんて色々考えたが、カタリナを心配するあまり体は勝手に動いていた。
ドリアードの力を借りて身体能力を向上し、絡んできた一人を投げ飛ばす――その後石を錬成して拘束具をそいつに付けた状態で作成。
「ぐぁっ……てめェ何をした!?」
「話すつもりはない。」
最低限の返事だけした後カタリナを抱き寄せて城へ向かって歩き出そうとする……が、もう1人が叫びながら俺に向かって拳を振りかざしてきた。
だが身体能力を向上しているからか、村でちょくちょくやっている鍛錬が利いているのかわからないが、そいつの動きは非常に緩慢に感じる。
最初に俺に絡んできた奴と同じ対応をして憲兵に通報、そのままどこかへ連れて行ってもらった。
まったく、闘技祭典とやらを開くのはいいが法令や治安維持の人員配置は見直したほうがいいと思う。
俺のような普通の見た目した奴が歩いてるだけでトラブルが起こるようじゃ、闘技祭典自体を開催しないでほしいという声も少なからずありそうだし。
そのあたりもダンジュウロウとの謁見で言ってみるとしよう、今回俺は被害者だしそれくらいの権利はあるよな?
改めてカタリナと2人で城に向かって歩き出す、カタリナは口数が減って顔が真っ赤になっているけど……緊張の糸が切れたのだろうか?
謁見前に少し時間があるだろうし、もし無理そうなら休んでてもらおう。
無理に参加することはないからな。
ダンジュウロウに謁見するため受付をすると、魔族領と同じように青い顔をして謁見の間へ走っていく。
カタリナの言う通り、今度から事前に伝えておかないと可哀想だな。
ちなみにカタリナは休まなくても大丈夫らしい、まだ顔が真っ赤だから心配なんだけど。
「お待たせしました!
未開の地の村の村長様と奥様、謁見の間へどうぞ!」
可愛らしい受付の人が俺を呼んだので謁見の間へ。
前には居なかった子だな、元気がいいのは良い事だ。
「村長、先ほどは町で無法者が迷惑をかけたようだ……申し訳ない。」
「こっちの被害は無いから安心してくれ、治安維持の人員配置や法令の見直しをしたほうがいいと思ったのは伝えておくが。」
「まさにその通りだ、似たような事が起きぬよう尽力させてもらう。
それよりわざわざ直接訪ねて来たということは他に用事があるのだろう、どうしたのだ?」
「そうなんだよ、相談をしておかないと思って。
魔族領とは話がついているんだが――」
俺は魔王に話した事と同じ内容をダンジュウロウに伝える。
それを聞いたダンジュウロウは頭を抱えてうずくまった、気絶してないだけ魔王より立派だと思う。
「銀の保有については魔族領と同じ返事だ、自由に保有してもらって構わない。
……今はこれしかすぐに返事が出来ぬ。」
「慌てないよ、人間領の状況もあるだろうし。
それより俺は俺で聞きたいことがあるんだよ、闘技祭典って何なんだ?」
「人間は知っての通り魔術適性が非常に低いからな、力と力のぶつかり合いが好きな者が多いのだよ。
なので花の季節と陽の季節の間に腕っぷしに自信がある者が競う場を設けている、それが闘技祭典だ。」
俺はあまり理解出来ないが、好きな人は好きだろうなぁ……村の住民とか物凄い好きそう。
特にオスカーとか、参加したら非難が殺到しそうだけど――強すぎて。
「村でも開いてみるのはどうだ?
世の常識から外れた強さを持つ者同士の闘い、観戦したい者は多数居ると思うが。」
「なるほど村で開催してしまえばいいのか……検討してみるよ、ありがとう。
村から人間領への試食提供、その逆とホーニッヒの数量限定売買権、諸々決まればまた改めて俺に伝えてくれ。」
「そのようにしておく、わざわざ足を運んでもらったのに前向きな返事を出来ずすまないな。」
「気にしないでいいさ、軽々しく返事が出来ないのも分かるし。
それより闘技祭典について聞けたんだ、村の住民は好きそうだし……もし開催するなら招待させてもらうよ。」
「それは楽しみだ、私も観戦は大好きだからな。」
その後退出の挨拶をして城を後にする。
ドワーフ族と奥さんと合流して村へ帰ることに、町の門を出るまでいつも以上にジロジロ見られていたけど何だったんだろうな。
「村長、無頼者をちぎっては投げちぎっては投げしたらしいですね!
見たかったなぁ……!」
「出会った当初は戦いなぞ出来なさそうだったのに、成長しておったんじゃのう。」
「わーわー!
そんなんじゃないから、村長も困ってるでしょ!」
2人から言われて何で見られていたのか分かったよ……そんな噂が立ってたんだな。
それよりカタリナが2人を必死に止めようとするのは何でなんだ、また顔が真っ赤だし。
そうか……村長としてあるまじき姿を見せて恥ずかしいのかもしれない。
帰ったら謝らないと。
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