第303話 パーン族の長と話をする事になった。
魔族領と人間領を訪問した次の日。
朝食を食べて見回り前に書斎で仕事をしていると、メアリーが仕事をしている俺の横に立ってきた。
「開様、カタリナから聞きましたよ。
暴漢から身を挺してカタリナを守ったらしいじゃないですか、物凄い嬉しそうでした。」
肘でつっつきながらからかってくるメアリー。
そうか……昨日謝ろうとしても顔を真っ赤にしたまま目を合わせてくれなかったのはそういう事だったんだな。
そんな状態だったから謝れなくて、何か悪いことをしてないか不安だったんだよ。
「そりゃあな、カタリナは戦闘が得意じゃないし。
俺だって不安だったが、ドリアードの力と
「どのようにされたんですか?」
「身体能力を向上して相手を転ばせた後、
咄嗟にした事だから不安だったけど何とかなった。」
「
今までとは違った使い方だからな、その場で出来た俺もビックリしている。
何時でも出来るかどうか試したいけど、誰かを拘束することなんてないし……あるとすればパーン族の上位くらいか。
「村長、村長ー!」
メアリーと俺が話していると外からイェニファーの声がする、結構慌ててるみたいだ。
「どうした、何かあったのか?」
書斎の窓を開けてイェニファーに返事をする。
「パーン族の長が帰って村長と話をされたいと。
いつ話せるか知りたいとの事だったのですが、どうされますか?」
3日と聞いてたが少し早かったな、しかし考えている時に帰ってくるとは。
「時間はいつでもいい。
長はどこで話をしたいと言っていた?」
「パーン族の里でと伺ってます。」
謝るのに村でも足を運ばないとは、どこまでも図々しいな。
数日里を離れれるということは、生きるための力と知識があるということ――危険な道でも村まで足を運ぶ意思くらい見せてほしかった。
意思さえ見せてくれたら転移魔法陣を利用させたのに。
だが帰ってくれば話をさせろと言った手前何もしないわけにはいかない。
「分かった、昼前に向かうと伝えてくれ。」
「承知しました。」
俺の返事を聞いたイェニファーは、結構なスピードで転移魔法陣へ向かって飛んで行く。
ハーピー族ってあんな早く飛べたんだな、いつもゆっくり飛んでいたから知らなかったよ。
「開様、パーン族の長との対談は私も行っていいでしょうか?」
「別に構わないぞ、完全武装で向かわせてもらうけどな。」
一切あなた達を信頼してないぞという意思表示と対策はさせてもらう、それじゃ何人かに声を掛けて長と話をしに行くとするか。
同行してもらうのはメアリー・ラウラ・ローガー・ハインツ・シモーネの5人。
中でもラウラがヤバい、結構キレている……既にハーフドラゴンの姿になってるし力が口から洩れているし。
その力、触れたものを消滅させるんだから引っ込ませておいてほしい。
「メアリー姉を危険な目に合わせた奴に容赦なんて無用ですよね……?」
無表情で怖い事をつぶやくラウラ、目から光が消えてるしめっちゃ怖いんだけど。
大丈夫なのだろうか、いきなり無属性の力で消滅させないでくれよ?
「ラウラちゃん、まずはしっかり話を聞きなさい。
消し飛ばすのはそれからでもいいわ、いつも通り索敵魔術を展開して情報を集めるのよ。」
シモーネがラウラを宥めてくれるがその内容も怖い、血気盛ん過ぎる。
「村で保護したパーン族は良い奴らだが、村長が拘束しているその上位とやらは屑と聞いてる。
処断する時の初撃は任せてもらおう、ラウラ殿やシモーネ殿では苦しまぬうちに殺してしまいそうだ。」
「私もお手伝いしますよ、四肢を弓で打ち抜いて抵抗を許さないようにしますから。」
ローガーはともかく冷静に皆を止めてくれるだろうと思っていたハインツすら血気盛んな側だった。
メアリーは慌てながら皆を宥めている、俺も気持ちは一緒だが村長として対応しなきゃいけないからな。
それに時間が経って少し頭は冷えている、メアリーも無事だし。
何よりパーン族上位の能力を解明しておかないと、有用性があるなら村に使ってもらうつもりだし。
もちろん無償で。
さて、それじゃあパーン族の里へ向かうとするか。
出来れば行きたくないけど。
パーン族の里に到着すると、長と牢に入ったパーン族の上位が土下座をして出迎えてくれた。
一瞬誰が長か分からなかったが、牢の外に居るパーン族が一人いるのでこの子だろう。
“子”と表現するくらい華奢なんだよな……物凄いやせ細っている。
「パーン族の長、エルケと申します。
この度はお詫びを入れる立場にも関わらず、私共の謝罪の為ご足労いただき申し訳ございませんでした。」
弱々しい声で俺に謝罪の言葉を述べるパーン族の長、能力というより事情があるような気がしてきた。
「未開の地の村の村長、開 拓志だ。
とりあえず事の顛末を聞かせてもらおうか。」
「理由はこの牢に入っている者が話した通りです。
私は
ですが一族の罪は私の罪、地籠さえ出来る環境ならばいかなる罰も受け入れましょう。」
「地籠とは何だ?
初めて聞いた単語だが。」
「御子や神官の前ではお伝え出来ません。
実際見せたほうが早いですし地籠を行う場所まで行きましょう。」
「長!
それはあまりにも――」
「お黙りなさい。
私が知らぬ間に一族を疲弊させたうえ、他種族の誘拐という罪を犯したお前たちが意見する権利はありません。
洗いざらいこの方々から事情を聞いた後、お前たちには処罰の内容を伝えます、それまでその牢に入っていなさい。」
上位が何か言おうとしたが長に一蹴される、こいつらホントに喋らせてもらえてなくてちょっと不憫になる。
だがパーン族で処罰が下るなら俺から何かする必要はなさそうだ、そのあたりはエルケに一任するとしよう。
その後はエルケに案内されながら地籠をする場所まで案内される、下り階段の洞窟をずっと下っていて感覚がおかしくなりそうだ。
「パーン族って、上位が馬鹿なだけで他の人達はまともなのだろうか……。」
「エルケさんにも敵意は無かったです、上位はあんな風になっても私達に敵意を持ってますが。」
「ちょっと拍子抜けしますね、平和なのはいいことですけど。」
「とりあえず地籠とやらは何なのかを知るところからかしら。
宗教種族だからあまり良い事はして無さそうだけれど。」
シモーネの言う通り地籠の内容が気になる、同じ種族に話せなくて俺達には話せるというのも良く分からないし。
メアリーも考えてはいそうだが確信が得れないのだろう。
「着きました、ここが地籠をする場所です。」
「これは……。」
エルケの案内の先で見たもの、それはバチバチとエネルギーを発している何かがそこに存在している。
「これは?」
「災厄の集塊と呼ばれるものです。
これを代々抑えているのがパーン族ですから。」
災厄の集塊……また物騒な名前が出てきたものだな。
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