第388話 リッカを元の姿に戻すための話し合いをした。

「それじゃリッカちゃんが人間に戻るためにどうすればいいかだけど――」


現在広場で俺とドリアード、それにリッカと捜索に加わっていた人で話し合いが行われている。


あの後、俺とドリアードとリッカの3人で瞬間移動をして村へ帰還。


広場へ向かっていると皆に出迎えられたので、リッカは皆に話があると切り出して肌を露出。


皆はもちろん驚いたし、どうすればいいかその場で話し合いが始まった。


もちろんリッカがどうして魔族になったかという説明の後に……それはそれで信じれないという人がほとんどだったけど。


皆からある程度意見が出たところで割って入ったのがドリアード、村に戻る前にも何か知ってる風だったから期待はしている。


最悪俺の力で元に戻してもいいけどな。


「今この村では魔力を貯蓄する機構があったわよね?

 あれの応用で体内の魔素を一時的にそっちに移すことで、魔族から人間に戻れるわ。

 また魔族になりたければそこから受け取ればいいんだし。」


「なるほど……それなら流澪さんとウルリケさんをはじめとしたクリーンエネルギー機構の研究者たちを筆頭に意見を乞わなければ。」


「そうね、そうするのが早いと思うわ。」


クリーンエネルギー機構も現在静音性を求めるのに忙しいはずなのに、他の事で手を取らせてしまって申し訳ないな。


今度何かで埋め合わせをしよう。


「ドリアード、その技術は広めすぎると私の破壊対象になる。

 もう少し節度を持ってもらいたいな。」


ドリアードが解決策を提示して、それについて話し合いが進んでいるとイフリートがいきなり現れてドリアードを問い詰めだした。


少し険しい表情だ、イフリートが破壊しなければならない技術とは……もしかして相当危険な技術なのか?


「安心してイフリート、この技術を制御出来るのはこの村だけよ。

 現代の技術じゃ加工技術が追い付かなくて満足いく結果にならないわ、それくらい私も見てるから。」


「しかし、この村は技術を外に出しているだろう。

 それを参考にしたり模倣したりして、技術が広まる可能性を考慮してないのか?」


「……だそうだけど、神であり村の責任者である村長の意見はどうなのかしら?」


ここで俺に振ってくるのかよ!


どうって言われても、その技術がどう危険なのか分からないし。


まずはそのあたりから教えてもらわないとな。


「イフリートは何でこの技術を危険視しているんだ?」


俺の質問を皮切りに、他の住民も俺に乗っかってきた。


一部の人は何となく分かってるみたいだけど、皆やっぱり疑問だったんだな。


「なるほど、確かに理屈が分からないと疑問に思うのも仕方ないが……いくら仕えるべき神とはいっても自分で疑問を解決する姿勢は持っていてもらいたい。

 なので一つだけ大ヒントを与えよう――災厄の集塊と呼んでいたものが居ただろう、あれを思い浮かべれば自ずと答えは見えてくる。」


災厄の集塊か。


あれが危険だったのは、中に封印されていた災厄の集塊が周りに溜め込んだ魔力を吸収して災害を起こす……だったよな。


だが今回は災厄の集塊のような存在の周りに魔力を溜め込むわけでもない、それなら大丈夫なんじゃないだろうか。


「なるほど。

貯め込んだ魔素、及び魔力の軍事転用を懸念しているのですね。」


ハインツが閃いた事を発言する。


確かにそれなら大問題だが、そんな事が可能なのか?


「ハインツ殿、ご名答だ。

 一か所に凝集した魔素・魔力はそれだけで脅威なんだ。

 災厄の集塊と呼ばれた程度じゃまだまだだが、この技術を極めていくとそれを軽く凌駕する魔力の貯蓄が可能だ――そしてそれは、魔族領や人間領を軽く吹き飛ばす程度の爆弾にもなり得る。」


イフリートの言葉を聞いた人達は、全員顔色が青くなって固まってしまった。


リッカも元々青い肌がさらに青くなってしまっている。


「それなら技術の軍事転用を禁止すればいいんじゃないか?」


「過去にもそういった意見があり私はこの技術を見逃していましたが、結果は一部地域の魔素消滅と当時敵対していた種族が住む島の消滅。

 そういった過去を知っているから、私はその技術を危険視しているのです。」


俺の質問も一刀両断、そんな過去を知っているなら神である俺からも何も言えない。


それに魔素が消滅した地域は恐らく人間領、心当たりがあるからこそ反論の余地が無くなった。


だが、この技術を使わないとリッカの立場も危険だ……仕方ない、俺の力で何とか――。


「イフリート、脅しはそこまで。

 言ったでしょ、この技術を正しく扱えるのはこの村だけだって。」


「脅しなどではない、私は本気だ。」


「それなら現実を見せてあげましょう、ちょっと私についてきなさい。」


ドリアードはそう言った瞬間、イフリートと一緒にどこかへ瞬間移動したのか消えてしまった。


「村長……。」


リッカは不安げな表情で俺を見つめてくる。


「人間領の式典も近いし、このままじゃまずいのは俺も理解しているさ。

 最悪俺の力で何とかするから安心してくれ。」


イフリートが納得しなければそうするしかないからな、実際危険な技術みたいだしそれを俺の監督下じゃない所まで広がるのは流石に看過出来ないという気持ちもある。


まさか爆弾の原材料のようなものになるなんて思いもしなかった。


だがよく考えれば、魔力によって様々な事が出来ている……前の世界で言えば電気やエネルギーのようなものだ。


この世界にもそれは存在しているけど、その一種が魔素・魔力だろう。


そう考えれば軍事転用の危険性も考慮するべきだった、俺の思慮が足りなかったな。


空気が重くなった場で考え事をしていると、ドリアードとイフリートが帰って来た。


ドリアードが言う現実は見れたのだろうか?


「皆、すまなかった。

 この村以外の技術とあの機構の仕様書を査読させてもらったが、ドリアードの言い分を全面的に飲もうと思う。

 よって先ほどの私の言葉は忘れてくれ、リッカ殿もその技術で魔族と人間を好きに行き来すればいい。」


あまりの手のひら返しに全員がキョトンとしてしまう。


ドリアードだけがドヤ顔でふんすと鼻を鳴らしているけど。


どうしてこうなったか説明してもらうぞ。

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