第117話 救助しに行ったマーメイド族がその日のうちに村へやってきた。

メアリー達がマーメイド族を救助しに行ったその日の昼過ぎ、カールをベビーカーに乗せて村の見回りをしていると、行商を見つけたので暖房器具をあるだけ注文。


それと石油が出荷できる段階になったのを魔王に伝えてほしいと言伝を頼んだ。


暖房器具は神殿建設イベントの後で村に運び込まれるらしい、本格的に寒くなる手前に手に入りそうでよかった。


アラクネ族の収入も増えて、村で使えるお金がだいぶ増えたので今回から現金払いにする。


村の住民同士ではお金のやり取りは行わないし、村にずっとお金を寝かせていても何もメアリーの言う通り貨幣価値が変わって魔族領の経済が混乱してしまう。


そうなる前にちゃんとした目的で使っていかないとな、ただでさえ村の住民は結構な額を稼いでるんだから。


行商も特に稼いでいるドワーフ族とプラインエルフ族には営業をかけているらしい、たまにしっかりと住居周りを見ると村で作ってない物がチラホラと見える。


自分たちで稼いだお金だから何も言わないが、無駄使いしすぎないようにな?


だが貯蓄したからと言って将来への不安が軽減されるとかではないのか、やっぱりどんどん使っていいぞ。


俺の家にもちょくちょくと物が増えてきている、カタリナも装飾品とかを付けているので恐らくカタリナの物だろう。


自分のお金なので何も言わないが、時折カタリナが寂しそうにしている……もっと構ってあげたほうがいいだろうか。


子どもが出来てないのはカタリナだけだ、ほんの少しくらい贔屓してあげてもいいかもしれない。


メアリーとウーテに怒られない程度だけどな、何だかんだ嫉妬という概念はあるらしいから。




しばらく村を見回っているとダークエルフ族から声をかけられる。


「村長、やっとキノコが出来ました!

 シメジ・シイタケ・エリンギ・エノキ……マイタケもありますよ!」


「お、やっと出来たんだな。

 俺も楽しみにしてたんだ、近いうちにマーメイド族がこの村に来るからその時の宴会で早速使ってもらおう。

 ドワーフ族に渡して調理方法も一緒に教えてやってくれ。」


「わかりました、お任せください!」


やっとキノコが食べられる、しかも前の世界でメジャーなキノコが目白押しだ。


畜産で牛乳もそこそこの量が生産されているらしいし、バターを想像錬金術イマジンアルケミーで作ってもいいかもしれない。


流石にバターは俺が作ることになるかな……原材料と完成品を見せたとしても再現は難しいだろうな。


キノコのバター炒めが食べたいので、牧場に行って牛乳を分けてもらい想像錬金術イマジンアルケミーでバターを作った。


「村長、何ですかそれは?」


牧場を管理しているケンタウロス族に尋ねられた。


「バターというんだ、牛乳を勢いよく振ってクリーム状にして加熱して低温保存……他にも工程があったはずだが忘れてしまった。

 とにかく牛乳と塩で作れる食品だよ、これがあれば料理の幅もだいぶ広がるはずだ。」


ケンタウロス族が興味津々にバターを見つめている、畜産から作れるものが増やしたいのだろうか。


「これ、もう1つ作っていただいてよろしいでしょうか?

 牧場とドワーフ族で研究して特産品にしたいです!」


「それは構わないが……かなり難しいと思うぞ?

 牛乳や羊毛、他にも色々してくれて助かってるんだし。」


「やってみたいんです、雨の日なんかはあまりやることが無くて暇を持て余してましたし。」


それなら、という事でバターの研究・作成を牧場管理しているケンタウロス族に一任することに。


頑張ってくれ、もし出来たらある程度保存も利くし行商に新しく売りに出せるかもな。


……売れたら売れたでまた村に入ってくるお金が増えるのか、技術と特産品が出来るのはいいけどお金が貯まりすぎるのも考え物だ。




牧場を後にすると、続々とマーメイド族を引き連れてケンタウロス族とミノタウロス族、それにドラゴン族が帰ってきていた。


あれ、レヴィアタンとクラーケンの討伐を加味してもう少し時間がかかると思ってたけど……そんな1日で終わるものだったのか?


「おかえり、えらく早かったな。

 2日くらいはかかると思ってたんだが、レヴィアタンとクラーケンはドラゴン族の敵じゃなかったか?」


「いや、そもそも戦っておらん。

 ウーテの治療で恐れをなして逃げておったわ、なのでマーメイド族の里の物資を引き上げて村に帰って来たのだ。」


なんだそりゃ、と思ったが生物の本能で無理だと思ったんだろうな……お気の毒に。


それより皆が危険な目に合わなくてよかったよ、アストリッドはげっそりしてるけど……大丈夫か?


「私も必要なかったですね、引っ越しの指示をする程度でした。」


メアリーも少し残念そうに言っている、なんで皆そんなに血気盛んなんだ……危険じゃなければそれに越したことはないだろうに。


とりあえず皆に片付けが終われば休むように伝える、マーメイド族の住居を急いで準備しないとな。


「アストリッド、マーメイド族の住居なんだがどういうところがいい?

 仕事の事は一旦置いてくれていい、まずは住める環境を整えてやりたいんだが。」


「私たち、本当に村に住んでいいんですか?

 レヴィアタンとクラーケンが居なくなったから里の復興をしてもいいんですが……。」


「一旦逃げただけでまた戻ってくるかもしれないだろ、それに村に住めばそんな天敵も居ないし海水でなくていいなら住居だって整えてやれる。

 仕事は……いいことを思いついたから後で相談だな、とりあえず住居を整えて夜まで休んでくれ、今日は歓迎会と謝罪を兼ねた宴会をするから。」


俺がアストリッドにそう言うと「そんなお構いなく!」とピチピチ跳ねてジャンピング土下座みたいなポーズをとった、どこで覚えたそんな事。


俺が構うのでアストリッドの意見はスルー、アストリッドが意見を出さないので族長らしき人に声をかけて住居の希望を聞いた。


水の中に日光を遮る空間があればいいらしい、ベッドや家具も特に要らないとのことなのでウーテの能力とセメントがあれば一瞬だな。


でも、ウーテは妊娠してるし能力を使わないほうがいいのかもな……確認を取ったほうがいいかもしれない。


ウーテを探すと、食堂に向かっていたので呼び止めた。


「なぁウーテ、マーメイド族の住居を作る際に能力を使ってほしいんだが……妊娠してても大丈夫なのか?

 ラウラとかは魔術を使うのを控えてるし、ダメなら別の方法を考えるけど。」


「それくらい大丈夫よ?

 それに妊娠して全力でオスカーおじ様とシモーネおば様に能力を使ってきたのよ?

 あ、オスカーおじ様に能力を使わせるくらい成長したのよ、褒めて!」


自他共に認める世界最強にそこまでさせるのは素直にすごいので褒める、でも無理はしないでくれよ?


マーメイド族を休ませてやりたいので、食堂の前に能力を使ってもらう事に。


全員分入っても問題無いプールに近い空間を作って排水口をお風呂の分と接続、そこにウーテの能力で水を張ってもらって中にセメントで家族分の住居を作って完成。


これだけ作ってもポーションを飲まなくていいのは本当に楽だな、アラクネ族には感謝だ。


ウーテは仕事が終わったので食堂へ、俺はマーメイド族を呼びに行くことに。


「居住区が完成したぞ、不満があれば言ってくれればすぐに直すから。」


「え、もう出来たんですか!?

 しかもすごい立派だし、何が起きたんですか!?」


宴会の時に説明するから、とりあえず今は疲れてるだろうし休んでくれと促して休んでもらう。


この居住区しか自由に移動出来ないのも可哀想だし不便だな、陸上でもある程度自由に移動できる方法も考えてやらないといけない。


車椅子の原理で何とかならないだろうか、ドワーフ族やダークエルフ族と相談してみよう。


それより宴会をするとドワーフ族に伝えなくては、バターも使ってキノコ料理もたくさん作ってもらうぞ。

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