第395話 オーガとナーガの居住区を整備した。
オーガとナーガが村へ移住した次の日。
ケンタウロス族とミノタウロス族の手伝いもあって、オーガとナーガの家が完成した。
コロポックル族の結界内に収まったようで一安心、それとお風呂に入れないのは可哀想なので配管をいじって結界内に風呂を作っておいた。
使い方を説明するとしっかり理解してくれたので良し、本当に知能が高くて助かるよ。
コロポックル族は水浴びでいいと聞いてたから特に整備してなかったが、オーガとナーガを見て羨ましくなったのか「作ってくれ。」と早朝に俺の家まで直談判しに来たので、後で対応すると返事をしておいた。
見られるのを嫌ってたのに、すごい大胆な行動をしてきたのでびっくりしたけど。
よっぽど羨ましかったんだろうか、だから最初に聞いたのに。
朝食を終えてフライハイトとカタリナの様子を見た後、コロポックル族の風呂を作るとしよう。
ついでにオーガとナーガが馴染めるかどうかも聞いておかないとな。
「村長、明日の準備もあるんだから今日の仕事は早めに切り上げてよ?」
「あぁ、分かってる。」
俺が考え事をしていると、ウーテが俺の式典用の服を何着も並べながら俺に喋りかけてきた。
いつの間に俺の服がそんなに準備されていたんだろうか。
出来れば派手過ぎず誇張しすぎず、普通な感じの服装がいいんだけど……あの中にはそんなものはない。
何とかアレを着ない術はないだろうか……帰りにリッカへ助けを乞うとしよう。
「風呂が出来たぞ、大きさも合わせてるから問題無い。
掃除は生活魔術を使える人に来てもらうよう伝えておくから。」
「おぉー!
そんちょ、ありがとう!」
コロポックル族はお風呂に群がって次々と俺にお礼を言ってくる、誰が最初に入るか口論になっているがいつ入っても一緒だからケンカしないでくれ。
「そういえば、オーガとナーガはここでの仕事を続けれそうか?」
「まだ1日だけだからな、何とも言えない。
でも凄い真面目で力持ち、コロポックル族も運んでくれるし虫とも仲良くしてる、だから大丈夫だと思う。」
虫とも仲良く出来てるのか、どうやって意思疎通をしているんだろう。
そんな能力があるとは思えないんだけどな、長年生きて身に付いたものなのだろうか。
ウルリケの話を聞く限り、オーガとナーガは相当長生きをしているはずだし。
「そうだ、そんちょこれを人間領に渡してくれ。」
そろそろ帰ろうかと思っていると、コロポックル族の長が俺に声をかけて何かの瓶詰を渡された。
「これは?」
「今までで一番出来がいいホーニッヒだ。
明日は人間領でお祭りみたいなことがあるって聞いたから、コロポックル族からの贈り物。
参加するのは怖いから、せめてもの気持ち。」
「村に流通してるよりいいものなのか?」
「少しいいものかな、本当は村で使ってもらうつもりだったんだけど……。」
村よりいいものを人間領にタダで渡すのはマズい。
俺としてはいいんだが、何せホーニッヒはかなりの高級品だ……それも最高級クラスとなると金貨が数十枚になるだろう。
それがタダというのはな……多分誰に聞いてもダメっていうと思う。
「価値的な問題でちょっとこれはダメかもしれない。
ホーニッヒは貴重なんだ、普通のでも充分だぞ。」
「む、そうなのか?
普通のならいくらでもある、せめて量を渡す――オーガに頼んでいっぱい瓶詰を作ってもらうから待ってて。」
一瓶でいいから、そんなにいっぱい渡したら渡したでまたトラブルになる。
このあたりは外界と交流を持っていないコロポックル族には分かりにくいかもしれない、俺は必死に説得して通常のホーニッヒの瓶詰を一瓶預かった。
これでも充分過ぎるらしいからな、こっそりダンジュウロウに渡すとしよう。
コロポックル族の居住区からの帰り道、リッカの家に寄って式典に着ていく服で悩んでる件を伝えて俺の家まで同行してもらった。
そして現在、妻達とリッカが一緒になってどれがいいか悩んでいる。
俺の願いも空しく、リッカはあの中から選ぶ気満々の様子。
せめてシュムックを散りばめた一番派手なヤツじゃないのがいいな、流石にゴテゴテすぎるし。
「普段通りの恰好じゃダメなのか?」
ダメ元で皆に尋ねてみたが、答えはダメとのこと。
妻達もリッカも俺には威厳と風格を兼ね備えて式典に参加してもらいたいそうだ。
魔族領じゃ全然そんなことなかったし、人間領も何回か足を運んでいるから俺を知ってる人も多い。
別に今更そんな事気にする必要は無いと思うんだけど……。
「村長は自分が神だということ、そしてその重大さを理解していなさすぎます。」
「そうだな、それは僕も思う。
この式典が終わればマックス先生が一緒に村に来られるから、そのあたりしっかり講義をしてもらうといい。」
マックスが来るとは聞いてたが式典が終わってから来るんだな、まあそれが妥当だとは思うけど。
しかし神についても講義を出来るのだろうか、それなら理解するためにも受けていいかもしれない。
人間領では神をどんな風に扱っているのか知っておくべきだからな、そのあたりの知識は持ってないから助かる。
魔族領では結構定着してきてるんだけどな。
俺が「是非よろしく。」と皆に伝えると、全員がため息をついた。
な、なんでそんな残念そうなんだよ。
「イヤミのつもりがそんな真っ直ぐ受け入れるなんて……。」
リッカがイヤミを言うなんて思ってなかった、気づけなくてすまない。
謝るとまたため息をつかれてしまう、一体どうすればいいっていうんだ。
服を決めるのに俺の出る幕が無かったので書類仕事をしていると、エルケが俺を書斎まで呼びに来た。
どうやら明日の服が決まったらしい、見に行くと候補から2着ほどしか減ってない。
決まったと聞いたけど、なんで複数の候補があるんだ?
「最初はこれ、次は食事が運ばれるごとに着替えを挟んでこれからこっちの順番で――」
「却下。」
「「「「「えぇー!?」」」」」
全員から落胆の叫び声が、そしてそれが家に響く。
そんなお色直しみたいなことしてられないぞ、俺は花嫁か何かか。
「どれか一着にしてくれ。」
俺はそう言って書斎に戻った。
全員凹んでいたが、流石に俺も譲れないものがある……あんな回数一日で着替えるのは疲れるし。
それくらいワガママ言ってもいいよな?
俺は少し罪悪感を抱きながらも、自分の事なのでそれを押し殺して書類仕事に再度向き合った。
書斎は静かなので皆の再度意見を纏める声が少し聞こえてくる。
あのシュムックを散りばめた服だけはやめてくれよ……頼むから。
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