第251話 カールが持っていた人形について色々確認を取った。
俺は作った覚えのないガラス細工の人形を手に取ってカールに渡す。
僕の、と叫んだが……いつの間にこんなもの持ってきてたんだ?
「これ、来るときにあったか?」
俺はこっそりとケンタウロス族に聞いてみる。
「いえ……少なくとも私は持ってきてません。」
状況を察してくれたのか、ケンタウロス族もこっそりと俺の質問に答えてくれた。
そうなると、このガラス細工の人形の出所は2つに絞られる……俺とケンタウロス族が気づかないようにカールが持ってきてた物が紛れたか、カールが
神のスキルって遺伝するものなのだろうか、特徴的な物が遺伝するのは分かるけどこんな世界の理を無視してるようなスキルが遺伝するって。
だが、まだ決定したわけじゃないしな……俺が知らなかっただけでメアリーや奥様方がこれをプレゼントしているかもしれないし。
確認を急ぐために俺は帰り道の足取りが少し速くなってしまった、カールを置いていかない程度だけど。
まずは奥様方の所へ。
いつも預けられるからか、ここに近づいた途端カールは俺にしがみついて離れなくなってしまった。
「大丈夫だ、ここには用事があって来ただけだから。」
優しくカールにそう告げると、しがみついていた力が少し緩む――分かってくれたみたいだ。
「すまない、ちょっと手の空いてる人はいないか?」
「村長じゃないですか、カール君を連れて……預けられます?」
「いや、そうじゃない。
ちょっと聞きたいことがあってな――」
俺が事情を説明すると、奥様方の一人がカールの持っている人形を横目でちらりと見た。
「ここではこういう人形は与えていません。
それにガラス細工なんて、小さいお子様が割ってしまって怪我したら大変ですし。
カール君はしっかりしてますから大丈夫かもしれませんが、万が一の事がありますので気を付けてくださいね。」
「分かった、ありがとう。」
ここでは与えてないと分かった、それとガラスは確かに危ないから別の素材の人形を渡したほうがいいな。
メアリーによく似ていたので、恐らく母親を模した物ならいいだろう……と思い余った木材でメアリーの人形を
「カール、ガラスは危ないからこっちの木の人形で遊びな?」
「やー!」
即座に断られてしまった、ちょっと悲しい。
メアリーにも聞かないと確証を得られないのでダンジョンへ。
「メアリーはいるか?」
「狩りの成果向上のため今はダンジョンに赴いてますが……見かけた時にお呼びしましょうか?」
「頼む、ちょっと急いでるんだ。」
あまり公にはしたくないが結構な緊急事態だからな、もしかしたらカールが
だが、ペトラとハンナも
いや、プラインエルフ族という種族を思うとカールですら俺を凌駕する魔力量を有している可能性だってある。
このあたりはシモーネに見てもらうとするか、妊娠中だけど大丈夫かな?
オスカーに許可を得て頼むとしよう、簡単に使っているように見える能力とはいっても体に負担を書けているかもしれないし。
待てよ……流澪との子どもは
流石にそれはないだろう、と色々子ども達と未来の子どもの事を考えていたら、メアリーが俺の横に居た。
「どうしたんですか、ダンジョンにカールと来るほど急いでるみたいですけど……何かありました?」
「ちょっとメアリーだけに相談したいことがある、一旦狩り部隊から抜けれないか?」
「分かりました、ちょっとローガーさんに話してきますね。」
俺の言葉を聞いたメアリーは足早に部隊へ戻る、恐らく何かを察してくれたのだろう。
顔は真剣だったし。
「お待たせしました、では開様の書斎へ行きましょう。
長くなるかもしれませんし、帰り際に食堂へ寄って紅茶とティーセット一式を借りていくとしましょうか。」
「そうだな、確かに長くなるかもしれない。」
久々のパパとママに囲まれたカールはこの上なく嬉しそうだ、俺に沢山構ってほしかっただけでやはり母親であるメアリーの事も大好きなんだろう。
あまり構ってやれない父親だけど嫌われてなくて良かったよ……。
ご機嫌なカールを挟んで3人で食堂へ赴き、紅茶とティーセットを借りて家へ帰る。
紅茶を貰う間際に「酒はいいのか?」とドワーフ族に聞かれた、お酒を飲んで話す内容じゃないから遠慮しておいたけど。
「お待たせしました。」
「ありがとう。」
メアリーは紅茶をティーカップに注いで俺に手渡す、一見普通のティーポットだが食堂から家まで運んでも中身は適温のままだ。
何か知らない技術があるのだろうかと思ったが、恐らく生活魔術だろう。
こういうのにも使えるのか、つくづく便利だと実感する。
「それでは話を聞きましょう、どうされたのですか?」
「今カールが持ってる人形に見覚えはあるか?
メアリーによく似たガラス細工の人形なんだけど。」
メアリーは人形に気付いてはいたが、俺の質問を聞いてかなりじっくりとカールが持ってる人形を眺める。
「カール、ちょっと貸してくださいね。」
「ぼくの、ぼくのー!」
カールはメアリーに取られた人形を取り返そうと頑張るが、メアリーに軽くいなされている。
子どもにそこまでしなくても、泣きそうだし返してやってほしいが……こればっかりはしっかり確認してもらわないとな。
「カール、ごめんね。
もう返すから。」
メアリーがそう言ってカールに人形を返すと、カールは人形を抱きしめて部屋の隅で丸くなった。
人形を必死に守ろうとしているようだ。
「結論から言いますと、私はあの人形に見覚えはありません。
あれをどこで?」
「デパートの改装中、急にだ。
いつも預けている奥様方もあれについては知らないんだよ……これは俺の憶測だが、カールは俺の
俺とは一緒に居れたがメアリーが一緒じゃない、3人で一緒に居たい願望が
「そんなまさか……いや、でも開様の考えだと色々辻褄が合いそうですね。
今回ほどしっかりした物じゃないですが、時たま見慣れないものをカールの周りで見つけたことがあったんですよ。
その時は気のせいかなと思ったんですが……。」
メアリーの言葉で、ほぼカールが
「とにかく今はカールの魔力量の確認と、アラクネ族に頼んで魔力増強の装飾品を作ってもらわないと。
つけるのを嫌がるかもしれないが……こればかりはカールの命を守るためだし仕方ない。」
魔力が無くなれば生命力を消費するし、これは必須だろう。
自分でも嫌なのに、我が子の生命力が無くなる可能性を潰さないわけにはいかない。
まずはオスカーを探してシモーネに魔力量の確認を頼んでいいかだな、急いで準備をしないと。
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