第29話 いざ、ダンジョン攻略⑵

巨大な蛇は口を開いてこちらを睨んでいる、まずい。


どうすればいい、と思考を巡らせていたら蛇の顔にいくつもの穴が開いて無くなった。


蛇はそのまま力無く倒れる。


「ふーーっ……。

 開様、大丈夫ですか!?」


メアリーの声がする。


振り返ると弓を構えていた、あれやったのメアリーか。


「おぉ、見事な弓術だ。」


「すごいわ、ここまでの弓さばきは見たことないわねぇ。」


オスカーとシモーネも感心している。


「ありがとうメアリー、助かったよ。」


「いえいえ、危険な目に合わせてしまって申し訳ございません。」


気にしなくていいぞ、助かったんだから。


「無事でよかったです、食料も手に入りましたし。」


食料?


蛇って食べれるの?


「血抜きさえしてしまえば問題なく食べれます、さっぱりしていて美味しいですよ。

 寝てる間に血抜きをして、明日食べましょう。」


ちょっと怖いが、食べれるなら挑戦しよう。


さて、食事をして寝るか。




起床。


朝食を済ませて野営の片付けだ。


設営を見てたから、片付けは手伝えるぞ。


そう思って手伝おうとしたが、「休んでてください。」と皆から言われてタイガの上でゴロゴロ。


最近はタイガとスキンシップ出来てなかったから、ここぞとばかりにスリスリしておく。


タイガからもスリスリを返された、かわいいなぁ。


ん、片付けが終わったみたいだ。


タイガ、行くぞ。




再び奥を目指して進んでいく。


特に迷路のような作りでもなく、分かれ道に正解と行き止まりがある程度。


選択肢を虱潰ししていけばいずれ最奥に着くな。


しかし今日も戦闘が無い、ダンジョン攻略と言うか洞窟探検だな。


「敵が出ないとつまらんなぁ。」


オスカーはやっぱり戦い足りないらしい。


狩り部隊も戦えなくて欲求不満っぽい。


氷の季節にあれだけ鍛錬してたからな。


まぁ俺は安全に越したことはないと思っているので良しとする。


次回の攻略に役立ちそうな情報は得られないが。




しばらく進んで少し開けた場所に出たので食事休憩。


昨日の夜仕留めた蛇を調理するらしい……怖さ半分楽しみ半分だ。


俺は次からの教訓のため蛇肉を見ておく。


もしまた襲われた時、想像錬金術イマジンアルケミーで仕留めれるからな。


攻略部隊が皮をむいて、シモーネに渡している。


今日はシモーネが作ってくれるらしい。


手際がドワーフ族並みにすごい、これが母か。


あっという間に完成。


いただきます。


感想としては鶏のササミのような触感と味。


淡泊だが美味しい。


小骨が少し気になるけど、それ以外は何も問題はないな。


それより味付けが抜群に合っている。


シモーネすごいな。


「私も料理とか出来たほうがいいんですかね……?」


メアリーが食べながら不安そうに聞いてくる。


村に住んでる限りドワーフ族が作ってくれるから出来なくてもいいと思うぞ。


苦手なら無理するなよ、メアリーは狩りと補佐で頑張ってくれてるんだからな。


そう言うと、笑顔でうなずき食事に戻った。


元気が一番だ。




食事も終えて再度進む。


すると通路に、ゲームなんかでよく見た宝箱がある。


「やったぁ!

 ダンジョンの宝箱は当たりが多いですからねー、何が出るかなー!」


メアリーがウッキウキで近づいて開けようとしたその時。


「メアリーさん、開けるのをやめなさい!」


シモーネが怖い表情で叫び、メアリーを止めた。


「ハヒィッ!」


体が固まり、泣きそうな表情でシモーネを見るメアリー。


まぁ実力あるドラゴンにいきなり叫ばれたらそうなる。


しかし、どうした?


「その宝箱には魔物が居ます。

 生命力も魔力もこの目に映ってるわ。」


ミミックか!


擬態しててもシモーネにはわかるのか。


「えっ、私の索敵魔術には反応が無いですよ?」


ラウラがシモーネに疑問を投げる。


「その索敵魔術はこちらに敵意がある者に反応するでしょう、怯えているとはいえ敵意があるからダンジョンの魔物にも反応しているのです。

 ですがこの手の擬態に敵意はありません、油断したものを捕食出来ればいいのですから。」


なるほど、だから索敵魔術には反応が無いのか。


しかし、これどうするんだ。


通り過ぎて後ろから襲われても危険だしな。


「蹴って潰せばよかろう。」


オスカーが思いっきり宝箱を壁に向かって蹴飛ばした。


ドゴォンッ!とすごい音を立てて宝箱が壁にぶつかり爆発四散。


粉々になった……。


解決方法が豪快だな。


「あーあ、中に入ってた戦利品まで粉々じゃないか。」


クルトが残骸を確認して、オスカーに文句を言う。


「む……すまん。」


もったいないけど、ケガが無いならそれでいいさ。




ミミックも粉砕してさらに奥へ。


するとタイガが急に先頭に飛び出し、前方に向かって唸り出した。


何事かと見てみると、通路の先には扉がある。


「ここが最奥ですね、中にダンジョンコアとそれを守る魔物が居るはずで……って!

 タイガ様!?」


メアリーが説明している間に扉を体当たりで破り、奥に突っ込むタイガ。


「グォォォォッ!」


どうしたんだ、ものすごい怒ってるように聞こえるが。


「全然暴れてないから最後くらい暴れさせろー!

 ……って言ってるです。」


タイガも欲求不満だったみたいだ。


コアを守る魔物はメアリーの読み通りオークだった。


いつものオークより一回り以上大きくて武器持ちだったが、タイガによって瞬殺。


フンスッと鼻を鳴らし、オークの死体に足を乗せてドヤ顔をしている。


「あのデモンタイガー、ワシとシモーネの次に強いかもしれん。

 あれだけやって全然本気じゃなさそうだしな。」


「そうねぇ……クルトやウーテを含めたドラゴン族でも勝てないかもしれないわ。」


嘘だろ、タイガってそんな強かったのか?


狩り部隊も「タイガ様、狩りの時は遊びに行く感覚くらいだったんですね……。」と驚いてる。


それくらい今は本気でオークに襲いかかったんだろう。


欲求不満をぶつけにいってただけだが。


少しオークが気の毒になったが、最奥に着いたということで肉にして食事休憩。




食べ終わってダンジョンコアに目をやる。


周りに魔物を発生させることもなく、最奥で静かに光り続けるダンジョンコア。


「開様、ここが本番です。

 ダンジョンコアをダンジョンコアに錬成してください。」


「わかった。」


俺はダンジョンコアを思い浮かべ、想像錬金術イマジンアルケミーを使用する。


すると、ダンジョンコアが光って錬成が発動出来ることが確認できた。


成功だ!


俺はダンジョンコアをダンジョンコアに錬成した。

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