第296話 パーン族が泣いている理由が判明した。

「お、おい……どうしたんだ?

 そんな食事しながら泣いて、味が合わなかったか?」


俺が尋ねるとパーン族は首を振る、とりあえず美味しいと思ってくれてて一安心。


むしろ今までそういった人達が出てきてない事に気付いてびっくりする、俺は外国の料理とかそこまで好きじゃなかったし。


「美味しい食事をお腹いっぱい食べれるのが嬉しくて……。

 里では農作物も狩りの成果もほぼ全て上位の方々に取られていたので……。」


「よく反乱を起こさず耐えていたな。

 よっぽど見返りがあったと見えるが、何があったんだ?」


「特にありません、強いて言うなら異端牢に収容されない事と危険な魔物から守ってくれていた事の二点でしょうか。」


やはり力を活かした恐怖で下の者を従えていたのか。


「それより私達はこれからどういった事をすればいいのでしょう?

 ここまでの食事、このあとすぐ命を取られたり一生涯どこかで働いたり異端牢のようなところへ収容されても誰も文句は言いません。」


「いやいや、そんな心配はしないでくれ。

 まず食べ終わったら住居の作成だ、どんな所に住みたいか言ってくれればすぐに準備するし、どういう造りの家があるか見たければ村の居住区を見学してもいい。

 そして明日からはしばらく教育施設で職業適性訓練を受けて、適性の高い仕事に今後従事してもらうつもりだ。」


パーン族の今後を説明、特におかしいところはないよな――パーン族の里に帰ってもらうつもりは無いし。


というか上位に痛い目見せるのに帰してしまうと意味が無いからな、今まで奴隷のように働かせていた人達が居ない牢でしっかり反省してほしい。


「そんな……里に帰らなければなりませんし、そこまで長期的に助けていただくわけには。」


「里には帰らせない、というより今は帰れないと言ったほうが正しいな。

 パーン族の上位は俺の妻を誘拐したからな、今は俺が作った牢に収容している……誰であろうと破れないだろうし出すつもりもない。

 だから村にはしばらく住んでもらうつもりだ、その間の世話くらいはさせてもらう。」


「しかし、それだと帰れば異端牢に収容されてしまいます!」


「なら村にずっと住めばいいんじゃないか?

 俺は別に構わないし、他の住民も歓迎してくれると思うぞ?

 それよりここでずっと話すのもあれだし、居住区で家を見学しながら話をしよう。

 この後解決しなければならない問題もあるし早めに決めてくれると助かる、後で修正も出来るから安心してくれ。」


話していたパーン族は「こいつ何言ってるんだ?」みたいな顔を浮かべつつも、俺の後を歩いて相談をしつつ住居の見学及び希望の提案をしてくれた。


少しずつ慣れていってくれるといいな。


それとロルフが物凄いバツが悪そうにしている、何も悪い事してないんだから気にしなくてもいいのに。




パーン族の住居を完成させて、今日は自由にしてくれと伝えてまずは妻と相談するため帰宅。


メアリーとウーテは事情を知ってるし今後の事を相談しやすいな、なんて考えて家に帰ると誰も居ない。


「誰か居ないかー?」


リビングで呼びかけてみても返事が無い、本当に誰も居ないようだ。


広場にも居なかったし、一体皆どこに行ったんだろう……研究施設だろうか?


そう思って足を運んでみるもカタリナとダークエルフ族とドワーフ族が一生懸命試作機を組み立てていた。


小型だと聞いてたけど結構大きいんだな、ちょっとびっくりしてる。


「メアリーやウーテ、それに流澪を見なかったか?」


「こっちには来てないわよ?」


カタリナに聞いてみるもここには来てないらしい、本当にどこに行ったのか。


それから食堂、鍛錬所、ダンジョン等々……思いつくところ全て回ったがどこにも妻達が居ない。


それどころかオスカー・シュテフィ・ローガー・ハインツ・ヒルデガルドと言った島の問題解決に必要な戦力の長まで見当たらない。


皆どこに行ったのか、既に島に向かっているならいいけどそんな報告は聞いてないし。


そうだ、シモーネならオスカーから何か聞いてるかもしれない。


そう思ってオスカーの家に向かっていると、通りがかったケンタウロス族に声をかけられた。


「あれ、村長は話し合いに参加されないんですか?」


「話し合いって何のだ?」


「流澪様が見つけた島に生息しているストーンカと巨大になった魔物や動物の討伐についてですが……村長はご存知では?」


まさに話し合いをしたかった内容なんだが、既に話し合いをしているとは聞いてない。


しかし何故このケンタウロス族が知っているのだろうか。


「俺も参加したいが、皆どこにいるか分からないんだよ。」


「遊戯施設に居ますよ?

 特に危ない案件では無いので遊びながらでもいいだろうというオスカー様の提案です。」


それを聞いた俺はがっくりと膝をついて項垂れる、今まで妻達を探していた時間はなんだったんだ……。


「俺も参加する、一緒に行くとしよう。」


「だ、大丈夫ですか……?」


ケンタウロス族に心配されるが気が抜けただけなので大丈夫だと伝える。


全く、するにしても一言欲しかった。


俺はケンタウロス族と話し合いがどこまで進んだか聞きながら遊戯施設を目指す、島の件以外にも大事な話をしているみたいだ。


後で皆には大事な話に遊戯施設を使うのは注意しないとな。




遊戯施設に到着すると、皆はダーツをしながら話し合いをしていた。


麻雀やトランプはそういうのには向いてないからな、ここにある遊びでは妥当だろう。


だがそんな事は問題ではない。


「全く、こんなところで話をするなら一言欲しかったし大事な話を遊びながらもどうかと思うぞ。」


「まだ稼働してないのでいいかと思いまして。

 それに皆から広場での話し合いはそろそろやめようかという意見も出ていたんですよ、村の外から来られている人もかなり増えましたし。

 なので遊戯施設の紹介がてら仮にここで、となったんです。

 伝えてなかったのは完全にミスですが!」


メアリーから事情を説明された、だが理由を聞いて納得。


そういった施設も作らないといけないな、飲食が気軽に出来るから広場でいいやとなってしまっていたよ。


ミスを全て無くせとは言わないが、せめて報連相はしてほしかった……前の世界の概念だけど。


内容は粗方ケンタウロス族から聞いたが、改めて詳しい話を聞くとしよう。


シュテフィにも聞きたいことがあるし。


あ、俺もダーツやらせてくれ。

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