第419話 意外な人物から声を掛けられて外へ出かけた。

倉庫へ溜め込んだ石の使い道に悩み続けて3日。


現在倉庫に貯め込んでいる石を外に運び出す作業が行われている、使用用途が決定したからな。


ここにある大半の石を魔族領・人間領が買い取りたいそうだ。


理由は石切場の仕事は相当危険であり、労働者に大きな負担をかけないための保険とのこと。


俺達としても在庫処分になるしwin-winの取引だ、ちなみに加工費は無料にするというと怒られた。


技術を安売りしてはいけないらしい……確かに言われればその通り。


前の世界の悪い癖が抜けてないな。


この一連の問題が解決して流澪は余程安心したのか、少し熱を出してしまっている……そんなになるなら最初からやらなきゃいいのに。


まぁ最初は怒られると思ってなかったんだろうけど。




石の件はサキュバス・インキュバス族が魔族・人間と商談をしてくれているので、もう俺の手からは離れた。


俺は俺の仕事をしなければ……そう、神殿兼俺の家の図面と睨めっこして頭に叩き込む作業だ。


隠し通路は――流澪の体調が良くなったらでいいや、まずは大元を作らないと。


建設予定地である現在の俺の家の前で図面を広げていると、聞いたことある声で俺を呼ぶような声がした。


「縺薙s縺ォ縺。繧上?∵搗髟キ」


「ん、あぁ……え!?」


あまりにナチュラルで気付かなかったがホブゴだ、フードを深く被ってマントを着ているから誰か分からなかったぞ。


しかし何を言ってるのか分からないのは不便だな。


オスカーもよく通訳が出来るくらいホブゴの言葉を理解出来ているものだ……これを完全に理解するなんて一つの言語の解読と大差ないぞ。


もしかしてオスカーって頭がいいんだろうか、名実ともに最強の脳筋だと思ってたけどそうじゃない場面もいくつかあったし。


ホブゴはホブゴで図面をじっと見てるし……俺はどうすればいいんだろう。


しばらくホブゴの様子を見ていると、図面の一部を指差した後に村の北を指差した。


指差した図面は俺の像が乗る祭壇の真ん中、最上級のシュムックが入る予定の部分。


もう一度同じ動作をするホブゴ、付いてこいってことだろうか?


村にホブゴが居る事にも驚きだが、よくよく考えるとホブゴもかなり頭がいいはずだし――何より地に足ついて世界を旅している年月ならホブゴがこの世界で最長だろう。


世界の形を知ってるのはオスカーとシモーネだろうが、どこに何があるか一番詳しいのは恐らくホブゴだ。


次点でキュウビかな?


俺はホブゴに付いて村を出て、ずっと真っ直ぐ歩く……果たしてどこまで歩くのだろうか。


ちょっと不安になってきたぞ――と思っていたら、後ろからタイガ・レオ・トラの3匹が追いかけて来た。


タイガは俺に乗れというジェスチャーをしてくれたので遠慮なく乗らせてもらう、するとレオもホブゴに同じようなジェスチャーを送った。


何か喋っていたようだし、デモンタイガーもホブゴの言葉が分かるんだろうか……?


ホブゴは恐る恐るレオに乗り、向かう先を指差すとデモンタイガー自慢の足の速さでぐんぐんと平野・森・山を駆け抜けていった。


ちょくちょくと俺を乗せていたからか、振り落とされないギリギリの速さを保ってくれるタイガ。


季節も相まって風が気持ちいい……なんて思いながら周りを見ているとシュテフィの一件で広がりっぱなしになっている地割れが見えた。


あれもいずれ塞がないといけない、あのままにしておくと不都合があるかもしれないし。


なんて考えていると、先頭を走っていたレオは器用に崖を伝って地割れの底へ降りて行った。


え、嘘だろ?


タイガもそれを追って軽快に降りていく、走ってる時は気持ちいいけど崖を下るのはただただ怖いぞ!?


タイガはぐおぐお鳴きながら楽しそうに降りてるけど……こういうのが好きなのだろうか。


1分ほど下って最下層に到着。


「縺薙l縲√&縺」縺阪?逾ュ螢?↓菴ソ縺医↑縺?□繧阪≧縺具シ」


ホブゴは目の前にある岩を指差して何かを言った。


どう見てもただの岩だ……これと村から取れる最上級のシュムックを取り替えろなんてとてもじゃないが言えない。


「繧?縲√%繧後′菴輔°蛻?°繧峨↑縺?°窶ヲ窶ヲ縺サ繧後?」


ホブゴは少し考えた後、目の前の岩を拳で少し砕いて破片を俺に見せた。


視線に入ったのはこの世のものとは思えない煌めきを放つ宝石……まさかこの大きな全部そうなのか!?


ホブゴはこれを岩でなくこの宝石だと気づいていたという事だろう、つくづく実力が底知れない。


とりあえず持って帰って相談だ、これはアラクネ族とドワーフ族が騒ぎだすぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る