第83話 村の中にプールを作った。
ドワーフ族にセメントの製造速度を高めてもらって1週間。
大きめに作ったつもりの倉庫が、もうパンク寸前まで在庫を確保出来てしまっている――やはりドワーフ族恐るべし。
総合的な技術量ならドワーフ族が間違いなく一番だろう、メアリーとラウラがドワーフ族と繋がりを持ってくれてて本当に良かった。
さて、そんなことよりこのパンク寸前のセメントを消費しなきゃな。
「なぁ、これは前に入れてた粉を入れてるやつなのか?」
建物の基礎にも使うから強度はあるに越したことはないので聞いてみる。
「うむ、ちゃんと強度の高い練り石じゃ。」
よかった、今更これに粉を混ぜてくれなんてとても言いづらい量だからな。
ケンタウロス族とミノタウロス族を呼んで、プールの設置予定場所までセメントを運んでもらう。
俺はその間にプールの大きさの目星をつけるため地面に線を引いている、最初は普通の25mプールのようなものを考えていたが遊び心が無さ過ぎてやめた。
今は丸く線を引いてるが、いびつになってしまいちょっと困っている……想像錬金術でプールを作れば丸くはなるんだろうが、どのくらいの大きさになるか目星は付けたい。
「村長何をしてるの?」
俺が線を引いては消し、引いては消しを繰り返しているとミハエルが声をかけてきた。
「ここにプール……水遊びをする施設を作りたいんだが、丸い形にしようと思ってある程度の大きさを知るため線を引いてるんだがどうもうまくいかなくてな。」
「わかったわ、ちょっと待ってて。」
ミハエルはそう言って倉庫へと走っていった、丸を書くための道具なんてなかったと思うが何をしに行ったんだろう。
しばらくするとロープと杭を持ったミハエルが戻ってきた。
「で、どのくらいの大きさの予定なの?」
「この広場の近くで開けてるスペースの半分くらいだな。
遊具も作りたいから、あまり面積を使いすぎないくらいがいい。」
ミハエルにそう伝えると、俺が書いては消しを繰り返してた中心あたりに杭を打ち込んでロープを縛り付けた。
そこまでやってミハエルが何をしたいかに気づいた、コンパスの要領で円を描くのか。
「それなら大体このくらいの半径ね。」
ロープの長さを調整し、杭を中心に綺麗な円を描いていくミハエル。
そんな方法思いつかなかった……いや実践されるとものすごい古典的な方法なんだけどさ。
「これでいいかしら?」
「バッチリだ、ありがとうミハエル。」
「村長ってやる時はきちんとやるのに、抜けてる時はとことんよね。
まぁ堅苦しくなくて私は全然いいんだけどさ。」
まったくもってその通りだ、いろいろ抜けてるところは俺も自覚してるがその時には思いつかないんだよな。
もっと色んなことを考えるようにしたり、頭を柔らかくして思考しなきゃいけない。
ミハエルが円を描いてくれている間にセメントも運び終わったみたいなので、円の大きさのプールを思い浮かべる……よし光ったな。
想像錬金術を発動し、円の場所にプールを完成させた。
「おぉー、ここに水を張って水遊びをするのね。
子どもたちは喜びそうね、大人も喜ぶかもしれないけど。」
カタリナのような意味なのか純粋な意味なのか、まぁどっちにしても犯罪が起こらなければ問題ないだろう。
この世界の女性は強いというか気にしないというか、お風呂上りにタオルを体に巻き付けただけの状態なのに広場で酒を飲むからな。
目のやり場に困るというか、子どもの情操教育に悪いというか……でも誰も注意しないからそれがこの世界の普通なのかもしれない。
見てるほうも見られてるほうも楽しんでるように見えるし、俺は見てないけど。
ほんとだぞ、ちょっとしか見てない。
「でもこれ、練り石よね?
ザラザラ過ぎて皮をすりむいたりしないかしら?」
俺がどうでもいいことを考えてると、ミハエルが意見をくれた。
ツルツル過ぎると滑って転んで余計にケガをするだろうと思ってこれにしたんだが、確かに結構ザラザラしてるから肌が弱い人は負けてしまうかもしれないな。
「それならお任せを!」
ミノタウロス族がドワーフ族の倉庫へ走っていく、今日は皆でDIYをしているような気分だな。
想像錬金術で何でも出来ると思っていたが、それでも問題点を探せばあるものだし技術で解決するならそのほうがいい。
便利だけど、頼りすぎるのは良くないと思っているからな。
食糧に関しては死活問題なので存分に頼らせてもらうが。
そうしていると、ミノタウロス族が砥石を持って戻ってきた……まさかこれ全部削る気か?
「ふんっ!」
ミノタウロス族が力を入れて1回擦ると、その部分がツルツルになっている……砥石もすごいがミノタウロス族の力がすごすぎる。
「私がこれを磨いておきますよ、それならザラザラでけがをすることもないでしょう。」
結構広いが1回でツルツルになるならミノタウロス族にはそこまで苦じゃないのかもしれない。
「それなら頼んだ、俺はその間に遊具を作るために材料を取ってくるから。」
「お任せを!」
そう言ってケンタウロス族と倉庫に行く、ウォータースライダーなんかあれば絶対ウケそうだよな……俺も久々滑ってはしゃぎたいし。
しかしそうなると木も鉄もセメントもダメだ……これだけのためにプラスチックが欲しいが、そんなものこの世界には無いしな。
そもそも原油も石油もない、どこかを掘れば出てくるかもしれないがそんな途方もないことをウォータースライダーのためだけにするのもどうなのかと思う。
現在光源は植物油をしみ込ませた松明とかがり火だけだ、地中に油が埋まってるかもしれないなんて誰も知らないだろう。
……待てよ。
「とりあえず今日のここでの作業は終了だ。
俺はちょっとダンジョンに行ってくる。」
「わかりました、お気をつけて。」
「私は今日中にここを磨いておきましょう。」
もう3分の1位くらい終わってるのか、ものすごい早いな。
「なら私はダンジョンに付いていこうかしら。
最近は少しずつ戦闘訓練も始めたから、でもあのダンジョンに出るのは動物くらいだけどね。」
もし動物に襲われたら、俺じゃ勝てないだろうし助かるよ。
そのままミハエルと一緒にダンジョンへ、俺はダンジョンコアに話しかける。
『おーい、ダンジョンの改築で話があるんだが。』
ダンジョン内でダンジョンコアに向かって頭の中で言葉を思い浮かべると通じる、どういう原理なのかはさっぱりわからないけど。
『久しぶりだね、よっぽどじゃないとなんでも受け入れれるくらいポイントはあるよ。
次は何を出すの、異世界の魔物?』
そんな物騒なやつ呼ぶわけがないだろ、というかそんなこと出来るのか。
『石油を出してほしい、出す区画は俺が指示してそこで固定することは可能か?』
『石油がどういうものかわからないけど、君が思い浮かべてくれたものなら生成は出来るよ。
それが出る区画も固定出来るから安心して。』
よし、これで燃料とプラスチック原料の両方が確保出来たぞ……次の氷の季節はもっと過ごしやすくなるはずだ。
石油があれば灯油を想像錬金術で生成出来るはずだし、ストーブを作ってもいいな。
あまり多用すると環境破壊に繋がるかもしれないけど、この村程度なら世界の自然浄化作用で何とかなるだろう。
『よし、それじゃ入ってすぐ右側に広めの空間を作って、そこから湧き出るようにしてくれ。』
『わかった、すぐにやっとくね。』
さてと、ドワーフ族のところに行ってドラム缶を作り、明日は石油を組み上げてウォータースライダーを作るぞ。
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