第357話 2つ目のダンジョンコアを稼働するために話し合いを開いた。

「皆集まってくれてありがとう。

 俺が神になり妻達とオスカーが不死になったことで、メアリーが所有するダンジョンコアの稼働をいつしても問題無いことに気付いた。

 それに伴って今稼働しているダンジョンと、新規に稼働するダンジョンで明確に目的を分けようと思っている、主に鉱石と作物や食料関係だが……何か案はあるか?」


食事が終わって食堂を出ると、メアリーとウーテが各長に声をかけてくれていたのか続々と広場に人が集まっている。


いい加減集会所を作らないと。


今でこそ我慢出来るが、氷の季節真っただ中に話し合いをするとなると広場では寒すぎるし。


今でもちょっと寒いけど。


「鉱石に関してはボーキサイトが完全に余ってきています、村長が使うのであれば更に採掘を続けますが。

 それと他にシュムックの種類があればという声が挙がっています、何かご存知無いですか?」


「今何があるんだっけ、ちょっと教えてもらえる?」


イェンナの質問に対して反応したのは流澪。


女の子だし色んな宝石の種類を知っていそうだ。


「ボーキサイトは現状倉庫の棚の一角を完全に埋めてる状態だったのを確認している。

今のところ使う予定も無いし、この機に一旦生成を止めるとしよう。」


経年劣化で傷んだとしても想像錬金術イマジンアルケミーを使えば元通りになるのは確認してるし。


相変わらずずるいな、この能力。


「それじゃ私は宝石……じゃなかった、シュムックの種類について考えてるわね。

 イェンナさん、よろしく。」


「はい、お願いします。」


流澪とイェンナは2人で話し合いを始めた、今後大事になることだししっかり案を出してもらおう。


「鉱石類は問題無いが……強いていうなら鉄と石炭の量を増やしてほしいかの。

 オレイカルコス製の武具や農具は村のみの流通なので、逆に量を減らしてもらって構わん――むしろ現状が多すぎるくらいじゃ。」


「オレイカルコスについては分かったが、今更鉄と石炭がそこまで必要になるか?」


今鉄を使っているのは建物や家具、それに魔族領や人間領に流通させている武具や農具くらいのものだ。


そもそも建物だって鉄を使用している場所をオレイカルコスにすれば更なる強度が見込めるし、むしろ鉄は減らしてもいい気がする。


「現在新しい鉄の精製方法を試しておるんじゃよ。

 これを納得出来るところまで完成させれば、今までの鉄は全て過去になるくらいの純度を持った鉄が出来る。

 村で作る特産物の品質向上のためじゃ、頼めるかの?」


「そう言われたらしないわけにはいかない。

 そうするようにしよう。」


オレイカルコスという金属があっても、自身の技術力向上に貪欲なドワーフ族はすごいと思う。


まあ村でしか使わないからというのもあるんだろうけど……普段は職人気質だけど外交に関する事とか考えてくれてるのだろうか。


実際ドワーフ族が作った武具を求める冒険者はかなり増えてきているし。


それだけ質が高いという事なんだろうな、魔族領や人間領の品と比べると最高級なものなら0が2つほど増えるらしいけど。


……ちゃんと還元してやってくれよ。


「鉱石はこのくらいでいいかな、シュムックは流澪とイェンナに任せるとして。

 他に何かある人は居るか?」


「金・銀・銅の採掘の本格化を進めてもいいと思うのじゃ。」


結構危険な意見を出してきたのはクズノハ、一体どうしたのだろうか。


「一応保有自体は問題無いと言われてるが、魔族領や人間領に何かあったら村が疑われるのは嫌だから極力避けたいんだが……一応理由を聞いておこうか。」


「これは我が魔族領で仕事をしている時に知ったのじゃがの……貨幣の規格を変更しようという意見が魔族領と人間領で出ておるのじゃ。

 偽貨幣が出回りつつあり、それを一般領民が見抜くのは困難だというのが主な理由じゃの。

 もちろん重罪じゃからこれらを企てた組織・個人の特定は進めるが……まずそれを無力化するために貨幣の規格変更というわけじゃ。

 そして造幣をするのは、この未開の地の村が最適だろうという意見が大多数と言う訳なのじゃよ。」


まさか俺の知らないところでそんな意見が出てるとは思わなかった。


偽貨幣を作ってるんじゃないかと疑われるのが嫌だから貴金属は保有したくなかったんだが……まさかその貨幣を作ってくれと言われる可能性があるとは。


「だが魔族領か人間領にも造幣する施設はあるだろう、その人達の仕事はどうなるんだ?」


「最大限の援助をしつつ次の仕事を探してもらう事になる……気の毒ではあるが偽貨幣を生み出さない為には大掛かりな改革が必要らしいのじゃ。

 情報・技術漏洩……造幣職人の抱き込み――それらが起こらないだろうと考えられるのが未開の地の村というわけじゃよ。」


確かにその心配は村なら不要だろうな、どんな金を積まれても皆何とも思わないだろうし。


それに武力で言う事を聞かせるというのも不可能だ、そんなことしたらどうなるか……少し知識があれば分かることだろう。


「分かった、それじゃ貴金属の採掘を開始するということで。

 それとクズノハ、魔王とダンジュウロウに伝えておいてくれ――造幣に携わった職人が希望するなら村は受け入れるとな。」


「うむ、伝えておく――って何じゃと!?」


「え、どこに驚く要素があった?」


「職人を受け入れると言ったところじゃ、本当に良いのか?」


「当たり前だろ、造幣のノウハウを教えてもらうには職人達の力は有難い事この上ない。

 それに村なら職人達の安全も保障出来るし。」


それを聞いたクズノハは、何時の間に作ったのだろうと思う手帳をめくって何かを書いている……職人達の対応に困っていたのだろうか。


話が出た時点で言ってくれれば意見を出したのに。


その後皆に問い掛けてみても鉱石に関する意見は出てこなかったので、この話はいったん終わり。


次は作物・食糧に関する意見だ。


こっちのほうがメインではある、色んな種族の長が目を輝かせてるからな。


さて、皆の意見を聞こうじゃないか。

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