第383話 遠隔会話の魔術を実用化させるために動き出した。
「なんだどうした、きちんと説明して――」
俺はクルトの家に行って、ウルスラにデレデレしているオスカーを引っ張って出産施設まで連れて来た。
「ちょっと急ぎなんだよ、すまないな。」
「まったく……内容くらい話してくれても良かっただろう。」
「と、いうわけで。
ウルリケ、説明を頼む。」
「うぇぇぇ!?
アタイがですかぁ!?」
俺が話すより詳しく説明出来るだろうし、そのほうがいいだろう?
そんな涙目にならなくてもいいのに……。
「――と言う訳なんですが……。」
キョドりつつも少し早口で説明をしたウルリケ。
もうちょっとゆっくり喋ったらもっと分かりやすかったのに、長らく一人で居たみたいだし追々慣れてくれたらいいけどな。
「理解した。
村長はこの技術が欲しくて、災厄の集塊の封印に使われてた黒魔術を応用したいと。」
「そういうことだ。
それで災厄の集塊本人に話を聞きたいんだが、オスカーの中に居るから来てもらったんだよ。」
「早速返事をしたので伝えよう。
あの術式はそこに魔力を貯める事しか出来ないから、送ることは不可能だと言ってるぞ。
中に居た時に暇すぎて解析したから間違いないらしい、改造も相当難しいそうだ。」
「そうなのか……。」
少し残念だが仕方ない、ずっと封印されてた本人からの言葉だし改造のしようもないだろう。
かといって代わりの技術や物も皆目見当がつかない。
仕方ないがウルリケには1人1人頑張ってもらって――。
「あ、待って。
もしかしたらクリーンエネルギー機構で使ってる技術を流用すれば出来るかも。
詳しくは流澪ちゃんとかクズノハさんに意見をもらわないといけないけど。
魔力を貯蓄しつつ送れたらいいのよね?」
「はい、それが出来れば後はこちらで調整します。」
「じゃあ多分大丈夫。
問題は今がデパート期間っていうのと、私がこの状態な事よね。
動けるには動けるけど、フライハイトが心配だし。」
「む……。」
オスカーがカタリナの言葉を聞いて少し顔をそむける、どうしたんだろう?
「まあ急いでるわけじゃないしいいさ、出来れば早い方がいいだけで。
ウルリケはそれが無くても出来る準備をしていてくれると助かる。」
「分かりました!」
とりあえずこの場はこれで解散。
その後カタリナから確認したい書類を持ってきて欲しいということで、研究施設に行って該当する書類を取ってカタリナに渡した。
ちらりと見せてもらったが、図以外は何が何だかさっぱり……辛うじて材料が書いてあるのは分かったけど。
それから、今日はこれと睨めっこするから家に戻って流澪にこのことを説明しておいてとの事。
俺はそれを了承して家に戻る、また明日な。
家に戻ってしばらくすると妻達も荷物をどっさり抱えて帰って来た。
また倉庫を拡張しないと……もうそれ入りきらないだろ。
それは置いておいて。
全員お腹が空いてるということで一緒に食堂へ、そして食事中に流澪へ遠隔会話の件について話した。
「――というわけなんだが、デパートが終わったら対応してくれないか?」
「なに呆けた事を言ってるのよ……。」
「えっ?」
話し終わって返事を聞こうとすると、少し怒ったような声が聞こえてくる。
何か気に障ることがあっただろうか?
「明日のデパートは不参加よ、私は遠隔会話を1日で最低でもメアリーさん達と出来る所まで持っていくわ!
これがあればデパート最終日、こういうのを見つけたけど欲しいかどうか確認出来るわよ!」
完全に物欲にまみれた目をしている、そこまで買い物に命を掛けなくてもいいと思うぞ。
「こうしちゃいられないわ、さっさと食べてウルリケさんはもちろんクズノハさんにラミア族、ダークエルフ族とドワーフ族にも来てもらわないとね。
拓志、書類はカタリナさんの所にあるのよね?」
「あぁ、今カタリナが書類と睨めっこしてるはずだ。」
「それなら食事が終わって、カタリナさんにご飯を届ける時に書類のコピーを取ってきて。
それにカタリナさんが気づいた事をメモ書きしておいてくれると助かるわ、私達は実物の模型を引っ張り出して相談してるから。」
そう言った流澪はすごい勢いでご飯をかきこみだす、はしたないし喉に詰まらせるぞ。
俺は頼まれたことに返事をしようとしたが、何か無茶な事言ってたのに気づく。
「おい流澪、この世界でコピーなんて無茶言うな。」
「紙とインクを持っていって、
……ほんとだ。
頭の回転と発想が凄いな、思いつかなかったよ。
それを聞いたメアリーはぽつりと「じゃあ活版印刷所は必要無いんですかね……?」とつぶやく。
あれはあれで必要だから、俺が毎回書類をコピー出来るわけじゃないし。
ほら、近くに居たユリアが涙目になってるから。
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