第384話 遠隔会話の魔術に必要な機構の製作の様子を見に行った。
遠隔会話の魔術に使う機構の話が出た次の日。
俺は日課とカタリナ・フライハイトの様子を見た後、クリーンエネルギー機構研究施設へ。
「これで出来たかしら。」
中に入ると流澪の声が聞こえる、もう完成したのか。
昨日流澪は寝ずに設計図を書いてたらしい。
その頑張りもあって、ドワーフ族・ダークエルフ族・クズノハがその日の夕方に完成までこぎつけたみたいだな。
結構複雑そうなものなのに、よく出来たな。
「大丈夫か、無理してないか?」
「まだ若いし、このくらいの無茶は今のうちにやっとかないと。
でもウルリケさんにこれで大丈夫って確認と遠隔会話のテストが終われば寝させてもらうわ……ふわぁ。」
流澪は大きなあくびをしながら俺に返事をする、やっぱり眠いは眠いんだな。
「じゃが、聞いておった必要な仕様は全て組み込んでおるし問題無いじゃろ。
後はこれによってどの程度離れて会話が出来るかの試用しなければの。」
クズノハも少し疲れ気味だが、遠隔会話が楽しみなのは耳と尻尾を見れば分かるな。
結構感情が耳と尻尾に出るから見ていて飽きない、可愛いし。
「そのウルリケはどこに居るんだ?」
「この施設の隅っこで寝てるわよ、ほら。」
流澪が俺の死角になっている部屋の角を指差すと、そこには丸くなって寝ているウルリケの姿が。
本当に封印されるほど強い力を持った吸血鬼族なんだろうか……こうして寝ている姿からは想像も出来ない。
だがシュテフィと同様に髪も肌も真っ白で、瞳は青だった。
それに数千年も長生きしているとなると、やはり吸血鬼族なんだろう。
疑問があるとすれば、シュテフィが危惧していた老いをウルリケからは何も感じないということだ。
シュテフィが今の若々しい姿なのは体と魂が分離した状態で封印されていた時、体の時間をシュテフィの能力で止めていたからだったはず。
ウルリケがそんな事を出来るという事は聞いてないし、一体どうなっているんだろう。
ただ見た目に反映されてないだけで、実際は老いているんだろうか。
今度聞いてみよう。
閑話休題。
「ウルリケさーん、起きてー。」
「ふがっ……あい!」
ダークエルフ族に体を揺さぶられながら起きるウルリケ、すごい寝ぼけてるが大丈夫か?
言葉づかいが怪しいけど。
「ウルリケさん、言ってた魔術中継機と魔力蓄積機を兼ね備えた機構を完成させたの。
試験をしてもらっていいかしら?」
「え、もう出来たんですか!?
もっと先の話だと思ってたんですけど……。」
「どうしても明日までに使いたかったのよ、結構無理をしたわ。
それじゃよろしく……ね……。」
流澪はウルリケに簡単な説明をするだけして近くの椅子にもたれかかって眠ってしまった。
若いとは言っても無理をしていたんだろう、後で毛布をかけてやるとするか。
「ウルリケ殿、流澪殿が寝てしもうたし我が分からぬところは説明するのじゃ。
よろしく頼むのじゃよ。」
「……わかりました!」
ウルリケはグッと両手を前で握って気合を入れ、そのまま機構のチェックをしながら何か魔術を展開し始めた。
いつもの柔らかい表情では無く真剣な表情、ウルリケもかなり職人気質なところがあるんだろう。
「それじゃクズノハ、後は任せたぞ。
俺は流澪に毛布を取ってくるから。」
そう言ってこの場を離れようとすると、クズノハは慌てた様子で俺を呼び止めてきた。
「ダメじゃ村長、ここに居ってもらわねば困るのじゃ。
この機構は村長に仕上げをしてもらわねばならぬからの。」
「仕上げ?」
「村長、ここに使ってないオレイカルコスの塊があるだろう?」
ドワーフ族がニコニコとしながら玻璃とオレイカルコスの塊をポンポンと叩いている。
「クズノハさん……でしたっけ?
村長の仕上げってこの機構のここのくぼみに入る何かとこれに被せる箱のようなものですか?」
「流石じゃの、少しいじっただけで分かるんじゃな。
その2つを高性能な物にしようと思ったら流石に1日じゃ無理じゃったからの、それを村長に作ってもらおうと思ってるのじゃ。
それ以外の確認は終わったかの?」
「後15分くらい時間をください……しかしこの村の技術力は凄いですね。
まさかこれほどのものを作れるなんて、私もこういう研究もしたかったなぁ。」
ウルリケはチェックをしながら羨ましそうな目で皆を見る、生体研究以外にもこういうものに興味があるんだろう。
分野は違うはずなのに凄いな。
「別にやれば良いのではないか?
村長としてはどうなんじゃ?」
「別に問題無いぞ。
ただ生体研究は既に奥様方の講義もあるだろうし、それも一緒にしなければならないだろうけど。」
「いいんですか!?
講義なんてお安い御用です、それに私も人との話し方を教えてもらってるので!」
嬉しそうに飛び跳ねて喜ぶウルリケ、そんなにはしゃいだら転ぶぞ……あ、転んだ。
ウルリケは恥ずかしそうに起き上がり、何事もなかったかのように再び機構のチェックに戻る。
それによって、俺も含めた皆も笑うのを必死に堪えている状況になってしまった。
結構辛いんだけど、笑うと可哀想だし……あ、ダークエルフ族とドワーフ族が流澪の毛布を取りに行くと言って外で出て行った。
ずるいぞ。
ウルリケの試験が再開して15分ほど経ったろうか。
「村長、ここにはめ込む魔力を増幅・蓄積させるものを準備してもらっていいですか?」
「とは言っても……こういう事に関して俺はそこまで知識が無い。
クズノハ、俺は何をすればいいんだ?」
「先ほどウルリケ殿が言った物は玻璃だけで作ることが出来るんじゃ。
それを
なるほどな。
それじゃ
大きさもちょうどくらいだし成功だ。
「これでいいか?」
「村長何したんですか!?」
ウルリケが目を見開いて俺の肩を掴んで叫ぶ。
これ以上近づくとキスになっちゃうから離れてくれ、説明するから。
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