第370話 村から突如騒音と地響きが発生したので何が起きたか確認しにいった。

マティルデが報告書を送るため、マルクス城へ転移魔法陣を設置。


ミハエルは別の仕事をしていたが、途中で抜けてこっちを優先してもらえた……無茶をさせてしまって申し訳ない。


今度何かで埋め合わせをするとしよう。


マティルデに転移魔法陣の使い方を説明、何が起きてるか分かってない様子だがこればっかりは慣れてくれ。


逐一俺がマティルデをマルクス城に連れて行くのもめんど……いや、出来る状態にないかもしれないし。


マティルデと別れて家に帰って書類仕事でもやるかと思った矢先、結構な轟音が村に響き渡る。


それに少しの地響きも――一体何が起こったんだ!?


俺はどこが発生源か感覚を研ぎ澄ませる、ドリアードの力を借りるとこういう事も出来るんだな。


今気づいたよ。


村の住民も訪問者も何が起きたか不安になっているし、早く原因を突き止めて解決しないと。


地中から何かが攻めて来たとかなら面倒だが……これはどうも違う気がする。


俺はこの振動を知ってる、何度も感じたことがあるものだ。


俺の記憶を信じてクリーンエネルギー機構研究施設あたりに感覚を研ぎ澄ませると……ビンゴだ。


やはり機械の駆動音だったか、だがここまで大きくなるものなんだな。


俺は研究施設を訪れる。


「一旦機械を止めれるか?

 振動と騒音で村が少し混乱しているぞ。」


「……やっぱりそうよね。

 分かったわ、稼働停止っと……。」


流澪は少し残念そうにクリーンエネルギー機構の試作機の稼働を停止。


動いていたという事はオスカーとウーテの能力で蒸気が発生しているはずだが、それは大丈夫かと聞くと稼働が停止した段階で過剰蒸気を逃がす弁から蒸気を逃がす作りになってるらしい。


流石そのあたりの設計に抜かりは無いな。


だが、ここまで騒音が起きてしまったのはどういう事だろうか。


技術不足……というわけでもなさそうだが。


「嫌な予感はしてたけどやっぱり的中したわね。

 圧倒的知識不足と資材不足よ、機構の仕組みに関する知識はあるけど騒音対策となると別の知識が必要だと思うんだけど。」


「普通に制振シートや吸音材なんかじゃダメなのか?」


「試作機はそれでいいかもしれないけど、本製品になると更に巨大化するのよ……。

 拓志の対策で多少はマシになるとは思うけど、完全に対処するのは無理ね。

 はぁ、どうしようかしら……。」


流澪はため息をつきながら困り果てた表情を浮かべている。


制振シートや吸音材なんかは想像錬金術イマジンアルケミーでどうとでもなるな、石油だってあるし。


待てよ、知識不足なら俺らの世界から持ってくればいい。


マルクス城は異世界訪問をして技術や食材を仕入れているし、時間はかかるかもしれないが持って帰って来てくれるかもしれない。


「俺らの居た世界から技術を拝借するか。」


「どういう事?

 いくら神でもそれはアマテラスオオミカミが言ってたように禁止なんじゃないの?」


「マルクス城に居る天使族が俺らの世界から技術なんかを持ち帰ってるから、頼めば何とかなるかもしれない。」


「はぁ!?

 なんでそんな大事な事を報告してないのよ!?」


あれ、言ってなかったっけ。


でも言っていれば流澪はそっちにかかりっきりになって、何を持ち帰りたいか決めてるだろう。


完全に俺の報告忘れだな。


「すまん、言い忘れてた。」


「~~ッ!

 ……でもいいわ、その話は無しで。」


「無しって……それでいいのか?

 いくら何でもこれ以上の騒音や振動を村の中で発生させ続けるのは許可出来ないぞ?」


「大丈夫よ、これも課題として私を中心に他の技術者と力を合わせて解決するから。

 これくらい自分の力で出来なきゃ、エルケちゃんから言われた空飛ぶ城なんて夢のまた夢だもの!」


変なところで負けず嫌いだなぁ……だが、流澪なら多くの知識を持っているしそれを応用したりすれば本当に何とかするかもしれない。


「分かったよ、また進展があったら教えてくれ。

 俺にしか作れない資材があれば言ってくれたら用意するからな。」


「ありがと、頑張らせてもらうわ。」


そう言って流澪は試作機と設計図を交互に見比べながら作業に移った。


これ以上居ても邪魔になるだろうし俺はこの辺りで退散するとしよう。




少し小腹が空いたので食堂へ、すると少し珍しい2人組が紙を広げて話しているのが見えた。


キュウビとシュテフィ、力ある女性2人だがあまり仲良くしている様子は見かけない。


「――こういう場所なんだけど、地図を作っている間に見なかった?

 相当風化してるだろうから難しいかもしれないけど……。」


「この地図でいうとどのあたりだ?

 それが分かれば思い出せる、どういう景色かどうかは頭に全て残っているぞ。」


流石はキュウビ……並外れた記憶力だな。


測量している間に記憶したんだろう、俺どころかほとんどの人が真似出来ない能力だ。


しかしシュテフィはキュウビに何を尋ねているんだろう、俺は少し離れた場所でフライドポテトとソーセージ、それにビールをいただきながら聞き耳を立てる。


特に気にする事じゃないんだろうけど、組み合わせと真剣さから何か気になるんだよな。


「……多分このあたり。」


「ここならよく覚えているぞ、かなり風化した都市のようなものがあった。

 それと私一人じゃどうしようもないような難易度のダンジョンも生成されていたはず。

 色が変わってるだろ、あまりに危険すぎて立ち入りを制限するべきだと複製しているラミア族に伝えてあるんだ。」


「「「「「ダンジョン!?」」」」」


キュウビの言葉を聞いたヒルデガルドとドラゴン族やウェアウルフ族、リザードマン族が反射的に大声を出す。


ヒルデガルドが一番大きかったな。


「キュウビ殿、そこを攻略しよう!」


目にもとまらぬ速さでキュウビに近づき両手を掴んでお願いするヒルデガルド、いきなりの事で固まるキュウビとシュテフィ。


……これは、今日か明日にでもダンジョン攻略の話し合いは始まるだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る