第371話 高難易度ダンジョンについて、過去最大規模で話し合いを行った。

キュウビが高難易度のダンジョンを発見していると発言した次の日。


現在村が出来た歴史の中でも最大規模の人数で話し合いが行われている。


最初は神殿で話し合いをしていたんだが、冒険者ギルドに所属している魔族や人間まで参加したいと申し出て来たので、急遽広場に場所を移した。


デパート開催前ということもあって参加出来てない種族も居るが、ほぼ全ての種族が誰かしらこの話し合いに参加している。


まさかこんな人数が参加するとは。


「さて、もう飛び入りで参加する種族も居ないか?」


やや不機嫌なオスカーがこの場を取り仕切っている。


本来俺の仕事だが、戦闘面に関してはオスカーに任せるのが一番なので任せることにした。


本人もそれを希望していたし。


不機嫌なのは、キュウビがそんな情報を持っていながら自分に教えてくれてなかったことが理由。


小学生のような理由だが、キュウビもキュウビで理由があった。


発表していい時まで待てないだろ、というオスカーへのツッコミにも似た配慮である。


それはその通りだろう、キュウビと夫婦の契りを交わすという発表でも1日くらいしか我慢出来てなかったし。


オスカーの問い掛けには誰も反応しない、この前までは「もしかしたら〇〇が参加するかも……。」という意見が出ていたのでこれで全員だろう。


「もう全員と見ていいだろうな、かなり大規模になってしまったが……。

 ではこれよりワシの妻であるキュウビが発見していた高難易度ダンジョンの攻略部隊について話し合いを始める。

 まずは是が非でも参加したい者を募ろう、この村でも屈指の実力者であるキュウビが単騎で攻略をためらう難易度だというのは今一度伝えておくぞ。」


オスカーの言葉の後にメアリー・ウーテ・ヒルデガルド・リッカ・ハインツ・シュテフィが挙手をした。


意気揚々と参加していた冒険者もオスカーの言葉を聞いて挙手をためらっているのが分かる、実際仕方ないと思うぞ。


戦闘面でキュウビより強いのってオスカーとシモーネ以外に居るのかな……他のドラゴン族の表情を見る限り俺の考えで正解な気もする。


本気で模擬試合をしたら……一体どうなるんだろうな。


それは機会があれば見せてもらうとして。


そのうえであの6人は挙手している、その勇気は評価されるべきだが……蛮勇に取られるかもしれない。


「ふむ……今のところ6人か。

 ではダンジョンの詳しい説明をキュウビにしてもらうとしよう――キュウビ、何故あのダンジョンは1人では攻略出来ぬと判断した?」


「まず見たことも無い色のオークとオーガ、それに八岐大蛇のような少し違うような……恐ろしい魔物が入り口から視認出来た事だ。

 そして何より怖いのはそれらが軍隊の如く統率を取り戦線を敷いていることだった、あのような光景は長く生きてきたが見たことが無い。

 個々の撃破なら十分可能だろうが……何とも不気味だったので危険だと判断した。」


それは流石に不気味だが、俺が出会う前のタイガはダンジョンから出てきたオークの集団暴走スタンピードに襲われてたし……もしかしたらダンジョンから生まれた魔物はそういった事が出来るのかもしれない。


でもオーガも八岐大蛇のような魔物も同じ戦線か、やっぱり怖いのに変わりはないな。


「ヤマタノオロチ……ってどんな魔物なの?」


シュテフィはキュウビに訪ねる。


「多頭の蛇の魔物だよ、しっかり数えてないが7か8ほど頭があったので八岐大蛇のようだと説明させてもらった。

 まあこれは人間領に伝わる伝説に出てくる魔物だから、実在したかどうかは眉唾物だが。」


「その見た目ならナーガね……それならやっぱり。」


何かを知ってるようなシュテフィ、この戦闘好きの住民が多い村で6人しかダンジョンに行きたがってないという過去類を見ない難易度のダンジョンだ。


そもそもシュテフィはキュウビにダンジョンの事を聞いたのではなく、場所の事を聞いていたな。


このダンジョン自体は見つけていたが、このタイミングで知れたのはあくまで偶然。


となると、この場所に何かがあったということをシュテフィは知っていたということだよな。


情報は少しでも多いほうがいい、知ってることは聞いておかないと。


「何か分かるのか?」


「分かるというか知ってるというか。

 ここって遥か昔、吸血鬼一族が隠れ住んでた里があったところなのよ。」


それを聞いてすぐに疑問を投げかけたのはミハエルとグレーテ。


「待って、それはおかしいわよ。

 吸血鬼って魔族と人間が力を合わせて倒したんでしょう?」


「そうですよ、ということは過去に未開の地は一度踏破されているってことに……。

 なんで何も記録が残ってないんですか?」


「それは流石に知らないわ。

あえて理由を考察するとしたら、元々魔物が危険なのを承知で吸血鬼の根城を叩きに来てた感じだったし……危険すぎるが故に危険だという情報以外何も記録を残さず子孫が近づかない事を祈ったってところかしら?」


確かにそうかもしれない、魔族領の冒険者ギルド基準でSランクでもここの魔物には苦戦するからな……。


名声欲しさに無茶をする人は仕方ないが、それ以外の犠牲は抑えれているし2種族の先祖がやったことは正解だろう。


危うくそのグレーテもその犠牲になりかけてたのは置いておいて。


「だが、そこに里があったというだけではナーガの件で納得しないだろう。

 他に何か分かるんじゃないか?」


「村長も成長したわね、その通りよ。

 そこのダンジョン……恐らく所有者は吸血鬼族の生き残りよ――しかもその中でもぶっちぎりで頭が良くて性格が悪い奴。

 まさか生き残ってたなんてね……。」


シュテフィはげんなりした表情でそう呟く。


シュテフィ程の実力者がそう言うんだ、しっかりと作戦を立てて攻略部隊を組まなければな。


「さて、必要な情報は出たようだ――本気でそのダンジョンを潰しにかかろうか。」


オスカーが目を光らせて今まで一番邪悪な笑みを浮かべてそう呟いた。


怖すぎるからやめなさい、ほら……冒険者が気絶してるから。

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