第64話 魔族領の会議に参加した。

ミハエルから意見をもらった夜、家に帰ってメアリー・カタリナ・ウーテの3人を交えてどうすればいいかの話し合いをした。


結果としては一度こちらから訪問して、値段が問題なら俺が価格を提示して対応してもらえばいいんじゃないかと。


だが、味に慣れてしまうのも問題があるので魔族領の農家の問題は早めに解決したほうがいいという意見もあった。


確かに村としては魚との交換で全く問題はないけど、魔族領側が問題なのだろうな……貨幣の有無でここまで問題がこじれるとは。


貨幣が流通してないのは未開の地くらいだろうし、仕方ないと言えば仕方ないだろうけど。


あと、技術提供の件も負担にならない程度の賃金を要求してみてはと言われた。


流石にただ働きはさせたくないからな、そのくらいはさせてもらうか。


そして今現在、夜が明けて魔族領へ向かう準備をしている。


「村長、私も付いていこうか?」


ウーテが付いていきたいという表情で見てくる、別に俺一人でもいいがそんなに来たいならいいぞ。


ぴょんぴょん跳ねて喜ぶウーテ、可愛らしいなぁ。


「ウーテさんばっかりにデレデレしちゃダメですよ、複数の妻を持つのは嬉しいですがえこひいきは嫉妬しますからね?」


嫉妬という概念が無いわけではないんだな、少し安心した。


でも全員妻となった以上えこひいきはしないぞ、カタリナには魔族領への出張に誰が行くか、ローテーションにするのかという議題をプラインエルフ族へ持っていってもらってる。


メアリーは妊娠中だから負担をかけるわけにはいかないし、現在ボディーガードという点ではウーテが最適解だ。


他のドラゴンは空の哨戒がある、ウェアウルフ族とケンタウロス族は警備と鍛錬、他の仕事もあるからな。


それにドワーフ族は自分の仕事に没頭しているから、頼みこむかドワーフ族にプラスが無いと付いてきてくれないし、ミノタウロス族は大きすぎる。


「それじゃ、行ってくるよ。」


「行ってきます!」


「気を付けて行ってきてくださいね、余裕があればお土産期待してます!」


お土産か、魔族領で簡単に仕事したら即日でお金もらえたりしないかな?




魔法陣に到着。


「すまん、前に魔王に言伝をお願いしたんだが、急を要する可能性が出てきたのでこちらから伺うことにした。

 今から行って会えるか確認を取ってもらっていいか?」


見張りの魔族にそう伝えると「かしこまりました、確認を取ってくるので少々お待ちください。」とのことだ。


勝手に行って心証を悪くしてもイヤだし、待ってようか。


しばらくすると見張りの魔族が戻ってきた。


「魔法陣を出た先に案内役を待機させております、そちらについていってください。

 現在会議中ですが、可能なら参加してほしいそうです。」


魔族の政治会議に俺なんかが出て大丈夫かと思ったが、多分原因は村にあるし……仕方ないか。


「わかった、対応ありがとう。」


そう言って魔法陣をくぐりそこにいた案内役についていくと、前に話し合いをした部屋に通された。


「会議中失礼いたします、未開の地の村から村長がお見えです、お通ししてよろしいでしょうか?」


「うむ、通ってもらってよいのじゃ。」


魔王がそう言ったので「失礼します……。」と弱気気味に入っていく。


「元気が無いの、どうしたのじゃ?

 空いてる席に座ってよいぞ。」


原因が村にあると思っている会議に参加する時に元気なんか出るわけがない、誰だってそうだと思う。


「近々行くと言ったのに氷の季節になっても行けなくてすまんの、何せ魔族領は未曾有の食糧難にあるので対応に追われておったのじゃ……。

 その件で未開の地の村の村長である開どのから食糧の買い取りの話をしておったのだが、商人ギルドのギルド長が申すには高価過ぎるとあっての……質の悪い物でいいので安値にならんじゃろうか?」


やっぱりそうだったか、やはり大事な商談を安易に進めると問題になるのは前の世界も今の世界も一緒だな。


「その件はこちらの要望だけ伝えて終わりになっていて済まなかった、対応が遅れたのには俺にも責任があるだろう。

 だが、村の作物は出来も味もほぼ均一だと生産者である俺が断言する、よって魔族領の質の悪いものを安値で譲るという要望には応えれない。」


俺がそういうと魔王が「そうか……美味い作物じゃからの、細心の注意を払っておるのじゃな。」と残念そうだ。


「だが、俺は俺の力で誰かを助けれるなら助けたい。

 肉も野菜も、魔族領の民間の卸値程度で譲ることを考えている、後は魔族領の農家に行って何が問題かを見極め、解決することにも協力したい。」


「よいのか!?

 ギュンターが美味すぎるというほどの作物じゃぞ、魔族領としてはこれほどありがたい話はないが、利益のためなら最高級のものと同等の値段を請求しても誰も文句は言わんのじゃぞ?」


別に利益を求めてるわけではない、それにそんなお金があっても使う場所は魔族領しかないんだから絶対持て余すし。


食糧を輸出してお金をもらわず、こちらが魚や調味料を請求したら卸してもらう程度でもいいくらいだ。


「構わないぞ、別に恩を着せるつもりとかは無いから安心してくれ。

 魔族領の住民の数はわからないが、村に大きめの貯蔵庫を2棟作ってそれを満杯にしてある。

 魔族領の準備が整い次第すぐに卸せる状態だ。」


「そこまでしてもらっておるとは……しかし急を要するのも事実じゃ。

 謹んでその案を飲ませてもらうのじゃ、大臣!

 以前の議題で候補にあった市場の近くにある適度な広さの土地をすぐに確保するのじゃ!」


「御意に!」


「数日くれないかの、未開の地の村の卸売市場への窓口と転移魔術の魔法陣のスペースを作らせるゆえ。」


「土地だけでいい、まずそこに転移魔術の魔法陣を展開させてくれ。

 まずは民の飢えを解決することが優先だと俺は考える、建物なんかは使っていってこちらの便利なように建てておくから。

 土地代が必要なら、魔族領で仕事を見つけて稼がせてもらうさ。」


周りから「確かに食糧難の解決は急務……その提案が最適解か、この御仁何者……。」なんて声があがってるが神からスキルをもらっただけで、中身はただの人間だぞ。


「わかったのじゃ、協力感謝するのじゃ。

 この恩はいずれ返すからの。」


「恩を着せるつもりはないって言っただろ、俺は魔族領に魅力的なものがあるから友好な関係で居たいだけだ。

 それに最初に言ったがこの問題の解決案が早く出なかったのはきちんと話を詰めなかった俺にも責任がある、その責任分の対応はするつもりだぞ。」


「村長、プラインエルフ族とか他の種族の仕事については話さなくていいの?」


ずっと横に居たウーテが小声で話しかけてくる。


そうだった、その話もしないとな。


「食糧の件についてはこれでほぼ解決だ、仕入れた分のお金の計算は悪いが魔族領に任せていいか?

 食糧が足りなければその都度生産してすぐに魔族領に出荷するようにする。

 後これは別件なんだが、こちらの技術を魔族領に提供する際に対価を支払ってほしい。

 肉や魚の鮮度を保つ、その他食糧の長期保存、水浴びをより快適にする技術等々……いろいろ生活が豊かになる技術は持ってるつもりだ。」


「その話も詳しく聞かねばならぬようじゃの。

 議事録書記よ、一言一句逃すでないぞ。」


話は長くなりそうだ、確保するという土地にミハエルを連れて行ってくれと先に言えばよかった。

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