第63話 カタリナとウーテが妻になった。

朝目が覚めると、カタリナとウーテが俺にくっついてスヤスヤと寝息を立てていた。


最初はカタリナの冗談だと思ったが、寝る前に気持ちは真剣だということも話している。


順序が逆な気もするが、それは許してもらおう。


「ん……村長起きたの?」


俺が体を起こすとウーテが目をこすりながら目を覚ました、眠いならまだ寝てていいぞ。


「大丈夫、今日から旦那様でもあるんだし、メアリーさんは身ごもってるんだから私が身の回りのお世話をしなきゃ!」


やたらと張り切ってるな、でもそんなお世話してもらうほどやることもないからいつも通りでいいぞ?


カタリナはまだ寝息を立ててるし。


大丈夫だと言っても、やりたいらしいので思ったことをしてもらうことにする。


やることが無いと気付いてくれたらいつも通りの生活になるだろう。




「んんー、よく寝たー。

 おはよう、村長、ウーテ。」


着替えをしていると、カタリナが背伸びをしながら寝室から出てきた。


「おはよう、カタリナさん。

 私の気持ちに気づいてくれたのは嬉しいけど、ちょっと寝坊しすぎじゃない?」


ウーテが可愛く頬を膨らませてカタリナを睨む。


「ごめんね、大分寒くなってきたから人肌がすごく気持ちよくていつもより寝てしまったわ。

 補佐役であり妻でもあるんだからシャキッとしなきゃねー。」


言葉と行動が合ってない、椅子に座ってテーブルに突っ伏しながらそう言っても説得力がないぞ。


まぁ今は仕事も少ないだろうし、見回りさえ終われば鍛錬所か技術交換会に行くくらいだろうけどな。


ウーテは俺の身の回りのことが終われば空の哨戒に行くらしい、気を付けていってくれよ。


「ただいまー、昨日はお楽しみでしたか?」


メアリーがニヤけた顔で俺を見てからかってくる。


「まったく、何のことかわからなかったが……前にカタリナから言われた時は冗談だと思ってたからびっくりしたぞ。」


「前から相談は受けていたんですが、開様が忙しかったので機会が無かったんですよね。

 で、カタリナから今晩いいかどうか聞かれたので協力しました。

 やっぱり私の眼は確かでしたね、まさかドラゴン族まで妻にしてしまうとは!」


そう言うと、ウーテが耳まで真っ赤にしながら顔を隠している。


自分で言うのは大丈夫だが、人に言われるのは恥ずかしいのだろうか。


お腹が空いたから朝食を食べに行きたいんだが、女三人寄れば姦しいというか……会話が盛り上がってて切り出せそうにない。


そう思ってると全員のお腹がググゥーと鳴ったので、皆で頷いて食堂に向かった。




その後は祝われたりからかわれたりが広がっていき、結局2日続けて宴会になってしまった。


ウーテの両親からも「娘のことをよろしく頼みます。」と言われてしどろもどろになってしまう。


しかし、メアリーとラウラの両親には挨拶したことがないな、でも2人は何も言わないし両親側もアクションを起こしてこないことを考えると何か事情があるのだろう。


深く突っ込みすぎないためにも、そっとしておくことにする。


宴会も終わり夜、風呂に入って帰るとカタリナとウーテが俺の家に居た、帰らないのか?


「初夜を終えた瞬間別居なんてイヤよ?

 私たちは村長の家に住むに決まってるじゃない。」


「そうよ、両親にも許可は取ってあるし旦那様である村長の家に住まない選択肢はないわ。」


確かに、一夫多妻に慣れなくて俺の感覚がおかしいのかもな。


メアリーもうんうんと頷いてるし……本当に嫉妬とかはないんだなぁ。


そういえば、ラウラはどうした?


「あぁ、伝えていませんでしたね。

 ラウラはクルトの一緒に別の家に住むことになってそちらに引っ越しています。

 家はドラゴン族の居住区で余っていた家を拝借しているはずですよ。」


そうだったのか、まぁ2人も夫婦だしそのほうが落ち着くだろうな。


「それじゃ、今夜もよろしくね。」


カタリナが流し目で誘惑してくる、ウーテも必死にマネをしてるがプロポーションの差と照れてる表情から色気というより可愛げが出てしまっているが。


「今日はダメです、昨日はカタリナたちが開様と寝たでしょう?

 私だって開様と久々にくっついて寝たいので今日は我慢してくださいっ!」


メアリーの言い分に2人は納得し、今日は別の部屋で寝ることに。


妊娠してるし本当に普通にくっついて寝ただけだがな。




それから数日。


とうとう氷の季節がやってきた、魔族領から何も連絡はないが大丈夫だろうか。


見張りの魔族に聞いてみようか。


「特に何も伺っておりませんが、魔王様も相談役も多忙な様子なのは耳にしております。

 知っての通り食料の流通が非常に悪くなっており、その対応に追われているかと。

 今衛兵の中ではこの村の見張りが一番当たりの配備だと言われるくらいです、ここは村の方が食事を持ってきてくださるので。」


そこまでなのか、向こうが来ると行っていたから待っていたが……一度こちらから向こうに行って出来ることをしたほうがいいかもしれないな。


「情報をくれて感謝する、それから魔王に言伝を。

 俺が一度会いたいと言っていたと伝えてくれ。」


「承りました、必ずお伝えしておきます。」


頼んだぞ、もう知り合いも何人か居るし村の住民であるミハエルとグレーテの故郷の危機を見捨てるわけにもいかない。


ミハエルとグレーテにも一度相談したほうがいいかもしれないな。




かなり寒くなっているがケンタウロス族の作ってくれた防寒着のおかげで、見回りをする程度なら苦ではない。


食糧難さえ乗り切れれるなら、未開の地の住民は突出した技術を持っているのを肌で感じる。


鍛錬所に行くと、思った通りミハエルが鍛錬に混ざっていた。


「ミハエル、少しいいか?」


俺が呼ぶと、ミハエルが振り返り「ちょっと待ってて!」と言った後、鍛錬を続けた。


邪魔をするつもりはないし、やることもないので待っているか。


しばらくすると、鍛錬を終えたミハエルが汗を拭きながらこっちにやってきた。


「ごめんね、待たせちゃって。」


「そんなに待ってないし、これといった仕事も無いから問題ないぞ。

 魔族領の対応について相談があるんだ、あの話し合い以来音沙汰がなくてな、見張りが言うには食糧難の対応に追われてると聞いた。」


「なら、それ以上でもそれ以下でもないとは思うけれど……でも確かにあれからそこそこ日にちは経ってるわね。

 支援を受けれるなら早めにこちらに来ると思うけど……心当たりはないかしら?」


心当たりと言われてもな、魔族領に送った食糧の代金はいずれ購入する魚の代金として立て替えてくれと言ったくらいだな……でもそれもこちらから技術提供をするから漁師の数と待遇改善もお願いしてるぞ。


「それよ。」


どれだ?


「商人ギルドのギルド長……ギュンターと言ったかしら?

 あの人の話を思い出して、最高級料理店以上の品質を誇っている村の食糧が高すぎると問題になっているのよ。

 それに向こうには無い生活魔術という技術の提供、これにもお金が発生すると踏んでいるでしょうね、貨幣経済が普通になってるならその考えが当たり前でしょうし。

 村長は値段の説明はしてなかったし、魔族領あげての買い物ならギュンターが会議に呼ばれているだろうから値段云々の説明はしていると思うわよ?」


……そこまで考えてなかった。


明日にでも魔族領に行こう、取り返しのつかなくなる前に行動だ。

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