第65話 会議が終わった、魔族領の対応に移るぞ。
現在、魔族領の会議に参加して村から提供できる技術の説明をしている。
話す前にミハエルを呼んで転移魔術の魔法陣を再展開してもらうようにも頼めたので安心して話すことが出来るな。
村でしか出来ない技術はこちらが請け負うが、風呂なんかの魔族領だけで解決できる問題はどうすればいいかをキチンと説明。
木を伐採しすぎることもあるかもしれないが、その時は頼ってくれれば想像錬金術で何とかすると伝えた。
「すごいのじゃ……全部すごいのじゃがなんで水浴びをお湯にするということが思いつかなかったのじゃろう、料理とか温かいと美味しいはずじゃのにの。」
発明はそういうものだ、常識とは違うことを気づいたり考えたりしなければ何も生まれない。
そうやって発展していくものだからな、ここまで文明があって風呂が無いのは俺もびっくりしたけど。
「首都や農村なんかの風呂に関しては、商人ギルドから土木技術者を出してもらい順次対応していくのじゃ。
じゃが、この城の風呂に関しては開どのに一任したい……想像錬金術とやらを見てみたいのじゃ。」
「それは構わないが、商人ギルドの一番おいしい仕事を奪うことにならないか?」
「この首都の対応だけで土木技術者が総動員じゃ、城から取り掛かってしまうと民への対応が大幅に遅れるのじゃよ。」
なるほど、確かにそれはそうかもしれない。
それなら、ということで城の風呂増築は村が引き受けた。
材料は城が準備してくれるらしい、材料が揃い次第呼んでくれればすぐに対応しよう。
「そして、食糧の保存関連じゃの……こればかりは生活魔術とやらを持った種族に来てもらうしかなさそうじゃな。
賃金はどうしようかの、唯一無二じゃからかなりの額を払うようにしてもいいのじゃぞ。」
「それに関しては改めて返事をする、またなぁなぁな返事をして問題が起きても嫌だからな。
技術提供をすると賃金が出ることが分かっただけで今は充分だ。」
「そんなことは当たり前じゃぞ、良い働きをしたものには相応の報酬が無いと発展しないからの。」
前の世界ではそんなことなかったからな、魔族領はトップに恵まれている。
後は農村の不作に関してだな、これも食糧問題の次に急がなければならない問題だ。
「不作に関してはそろそろじゃないかと予想はしていたのじゃよ、じゃが魔族領の人口が大幅に増えての……そちらの推移を見誤っておって備蓄が追い付かなかったのじゃ。
また農村には開墾から頑張ってもらわねばならぬし、そちらに割く人員も現在調整中じゃ。」
その一言で原因が分かった、連作障害が起きている。
しかもそれを知らない……そういうものだと受け取っている、だから不作の予測やそれに関する準備をしているんだ。
「魔王の一言で原因が分かった、そしてその対策も教えることが出来る。
強硬策で今いる場所を治すことも、新しい土地の開墾を手伝うことも可能だが、どうする?」
「なんと、開どのは賢者か何かなのかの……流石は神に選ばれた者じゃ。
これに関しても報酬は払う、開どのが都合のいいようにしてくれればいいのじゃ。」
なるほど、全てを一任するということか……一度農村を見てみないと答えは出せないな。
暮らしの豊かさと利便さを見て、それから決めることにしよう。
あと、俺は適当に選ばれただけで賢者なんかではない。
しばらくすると、会議をしている部屋の扉が開いた。
「魔王様、先ほど頼まれていた土地の確保を完了いたしました。」
「村長、魔法陣の再展開が出来たよ。
今まで使っていた魔法陣は消えて使えなくなったから、帰る時は今展開したほうから帰ってね。」
「2人ともご苦労なのじゃ。
衛兵、魔法陣の見張りをしている者に移動するようにと伝えるのじゃ。
お姉さまはその場所への案内をよろしく頼むのじゃ。」
「人使いの荒い弟だこと、まぁ今は魔王だから従うけどね。」
魔王じゃなくても弟のお願いくらい聞いてあげてくれ。
「ウーテ、他に話し忘れてることはないか?」
「うーん、漁師の件は一度言ってるから技術提供に含まれてるし……これで全部だと思うわよ。」
なら安心だ、話忘れて対応が遅れたら面倒だからな。
「魔王、土地の確保と魔法陣の展開が終わったので俺は出荷の指揮を取りに村に戻りたい。
そちらから食糧の受け入れの人員の配備をお願いする。」
「もちろんじゃ、迅速な対応感謝するのじゃよ。
ギュンター、すぐに商人ギルドに戻り人員の確保と配置を、開どのの言葉に甘え今は金の準備は必要ない。
受け入れ次第国からの配布という形を取り民間に配るのじゃ。」
「御意、すぐに取り掛かります。」
何はともあれ、丸く収まって良かった……魔王が来るまで待っていたらもっと大事になっていたかもしれないな。
ミハエルやグレーテあたりからもっと村に儲けを出せなんて怒られそうだけど、まぁそれは上手く受け流すとしよう。
村長は俺だからな、そのくらいの職権乱用は許してくれ。
「では俺たちもこれで、食糧が足りなくなれば遠慮せず言ってきてくれよ。
後もう充分になったらそれもそれで伝えてくれ、その後魔族領の農村に行って視察と解決に向かって動き出すから。」
「何から何まで本当に助かるのじゃ。
事が落ち着いたら必ず私自ら村に出向かわせてもらう、その時は歓迎してほしいのじゃ。」
もちろんだ、盛大な宴会を開くことを約束する。
魔王と家臣たちに軽く一礼をしながら、俺とウーテは会議室を後にして村と魔族領を繋ぐ新しい魔法陣へ向かっていく。
場所が分からないと思っていたが、会議室の外でミハエルたちが待ってくれていたので一緒に行くことにする、どこに行けばいいか不安だったからよかった。
「村長、これからまた忙しくなりそうね。」
「そうだな、しかし農村の不作は方向性が決まればすぐに解決出来そうだから後は魔族領の頑張りと支援次第だと思うぞ。
俺に出来ることは極力するつもりだけどな。」
連作障害の対策は知識としてある、だが新しい作物が育つまで農村は収入が無いも同然だからな……そこの支援をあの魔王が考えてないとは思わないが頼られたら助け船は出そう。
そんな話をしながら城を出てしばらくすると、「ついたよ、ここが新しい魔法陣の場所だ。」とミハエルが両手を広げて紹介してくれる。
そこそこ広い土地だな、これなら保管庫を何棟か立てて常時配備しておくのもいいかもしれない。
外の入り口の見張りは魔族領が出してくれるというし、村の一部として考えながら使うことにするか。
軽くこの土地の使用方法を考えながら、俺たちは魔法陣に入って一度村に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます