第423話 リゾート地のトラブルを解決するのに成功した。
あれから船を10隻ほど
入りきらなかったのもあるので、そのあたりに自生していた木や石で港を増設した。
インフラ関連が必要なら言ってくれれば後でやるからな。
今回増やした船で遊覧船の大行列の対応は出来たが、他の所でもある程度の混雑は起きている。
全てを解決しようとメアリーと案を練っていたら、リッカがそこに割って入ってきた。
「村長、メアリーさんありがとう。
まさかこんなに早く解決するなんて思ってなかったよ。」
「困ってたんだし当然のことをしたまでだ。
だが、食堂やその他の施設に派遣している人員はいずれ引き上げるぞ。
サキュバス・インキュバス族が魔族領・人間領へ赴いて水夫の雇用の話をしてくれている、引き上げた後はその人たちを使ってやってくれ。
もちろん村の住民がマックスの適性検査で水夫が向いていると判定が出ればこっちへ送る。」
「重ね重ね感謝するよ、食堂や遊戯施設なんかの行列はそのままでいいからね。」
リッカの言葉を聞いたメアリーは首をかしげてリッカに質問を投げかけた。
「行列はすべからく解決するべきではないですか?」
メアリーの質問には俺も同意、客を待たせても何も良い事が無いと思う。
働いている側は待たせてはダメだと焦り早く仕事を使用としてミスをしてしまうし、待っている客側は待たされるだけイライラが募るだろう。
あまりに待たせ過ぎるとクレームに繋がりかねない、現在そういうのは理不尽な言いがかり以外は耳に入ってないから、出来ればこれからもそれを継続したいし。
「いいんだよ、遊覧船以外の行列はわざと出してくれと僕が指示してるんだ。
待たせ過ぎず、でも待ってもいいかと思う時間を上手く調整してくれってね――僕なりの戦略なんだよ。」
「戦略、ですか?」
「そう、メアリーさんから言わせれば稚拙な物だと笑われるかもしれないけれど。
村の食堂以外にも美味しい物が食べられて遊べる場所がある――それも行列が出来るくらい人気だ、と思ってもらうための種なのさ。
実際この人だかりが村の食堂へ押しかけている様子は無いはずだよ、ここでお腹いっぱいになってるはずだからね。
それに宿泊施設も用意してある、滞在出来る限界まで滞在してもらって限界までお金を落としてもらうつもりさ。」
最期の言葉は悪い笑顔をして言い放った、リッカもこの村に住んでそんな顔をするようになってしまったか……。
メアリーはそれを聞いて考え込む、何かブツブツ言っているのでリッカの言葉を聞いて思う所があったのだろう。
外から来た人には手加減してやってほしい……村は自給自足が確立しているからお金に困ってるわけじゃないし。
「リッカさん、近いうちに村の収入を増やすための話し合いを開きましょう。
そこでこのリゾート地の経営を皆に見てもらい、村に導入できる部分はしていきたいと思うんですが。」
「それは構わないけど、村に導入するにしても新しく始めた事業だけにしたほうがいいよ。」
「何故ですか?」
「人を待たせるというのは、サービスの質という観点で見ると決していい物では無いからね。
現在村で待ちが出るものはデパートと混雑時の遊戯施設くらいだ、それ以外で人が待っているのはあまり見たことがない――それ以外の施設が突如人を待たせ始めたら通常より貯まる不満は大きいものになるよ。
村の評判を維持・向上させるためにも既存のサービスはそのままであるべきだと思うんだ。」
「なるほど……私の経営に関する考えと読みはまだまだですね……。」
メアリーでまだまだなのか、と思ったが今にして思えばメアリーが経営面で出してきた案は割とゴリ押しのようなものが多かったように思う。
基礎知識が無いから戦略を練ってる時に見せるような物凄い閃きは無いのだろう……こればっかりは経験と勉強次第だからな。
メアリーがリゾート地を見渡しながら何か考えているのを眺めていると、リッカが俺に声をかけてきた。
「ちょっと聞きたいけど、村長の目から見てこのリゾート地は成功していると思うかい?」
「あぁ、そう思うぞ。」
「それは村長が前に居た世界と比べてかい?
それとも、この世界で見たものだけを比較対象にしての評価かな?」
その切り返しは予想してなかった、俺が前に居た世界がどういった場所か詳しく話した覚えは無いが……リッカはここより人口が多い場所だと考えているんだろう。
少し考えればそれは分かるだろうけどな、そうじゃないとデパートのような施設を思いつかないし、狭い敷地面積で多くの人を収容出来るような建物を考えないだろうし。
それは良いとして、リッカの質問に答えなければ。
表情はいつもの柔らかい表情ではなくキリッと真剣な眼差しで俺を見ている、リゾート地をここまで成功させてるしこちらも嘘を言っては失礼だろう。
「俺の意見はこの世界で見たものだけを比較対象にした意見だ、俺が居た世界と比べるのは……俺には出来ない。」
「どうしてだい?
村長はこの世界に転移するまでずっと住んでいたんだろう?」
「その……仕事以外で家から出ることがほとんどなくってな。
買い物も夜に空いてるお店で済ませたしご飯は料理店かさっきお店で買ったもの、生活用品は家で注文出来るサービスを使ってたんだよ。」
それを聞いたリッカは相当残念そうな顔をして項垂れる、ごめんって……前の世界に居た俺は自堕落と無気力そのものだったんだ。
メアリーもそんな可哀想な物を見る目で俺を見ないでほしい、さっきまで真剣な事を考えてただろうに。
「流澪、流澪なら前の世界と比較してくれると思うぞ!」
それを聞いたリッカは「なるほど、早速聞いてみるよ!」と言って凄い速さで村へ戻っていった。
よっぽど気になったんだろうな、答えられなくて申し訳ない。
この世界ではズボラにならないようにするから……多分。
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