第415話 フェンリルとフラウが村へやってきた。

フェンリルとリリー……いや、フラウが居る大霊峰に行ってから1週間が経った。


現在村はデパート開店で非常に賑わっている、色々新しい催しもやっているみたいで、そちらも大盛況。


買い物が終わり、荷物を宿に預けた後はリゾート地へ向かう人が非常に多い。


釣りの噂はそこそこに広がっているという事だろう、それに釣具をデパートで買っている人も見かけるのでそれを試しにも行っているみたいだ。


「いやー、今回のデパートは非常に良かった!

 特に陽の季節にも関わらず、店の中が涼しいのが嬉しかったね!」


「そうね、前来た時は風が気持ち良かったけどやっぱり暑かったから……これはいいと思う!」


男女2人の魔族が帰る道すがら、デパートの感想を言い合ってたのが聞こえた。


デパートの中が涼しいのは非常に好評みたいだな、成功したようでよかったよ。


「あのぉ……本当にフェンリルは冷気を建物内に振りまくだけでいいんですか?」


大霊峰から帰ってすぐは書類仕事に追われて何も出来なかったが、今は時間が空いたので村の案内をしてるフラウに声を掛けられる。


概ねこの村と俺の事情は理解してくれたので話がしやすい、この村に来て3回くらい気絶してるけど。


「いいんだよ、さっきの声にもあったように成功している。

 この熱気はフェンリルやフラウじゃなくてもキツいんだ、それにあの建物の中は人口密度が物凄い……外以上に暑苦しくなっているだろう。

 そこにフェンリルが程よい冷気を送ることで暑さが緩和されてるというわけだ、今回も風を建物内に巡らせているからそれに冷気が乗って非常に涼しくなっているはず。」


「ふふ、それなら良かったです。

 私にも少し力が残ってれば、村のために何か出来たんですが……。」


「気にする事はないさ、今は観光気分で楽しんでくれればいい。」


現在フェンリルとフラウは、試しに村へ移住してもらっている。


理由は大霊峰に居ても特にメリットが無い、むしろ生活がままならないというデメリットしかないからだ。


フェンリルは大霊峰へ瞬間移動出来るので管理は容易だし、麓に住んでいる住民も山頂まで崇めに来るわけでないみたいだからな。


よって生活が安定している村で暮らせるかどうか試してもらっているわけだ。


最初の2日は暑さでへばっていたみたいだけど。


それもそうだよな、体感マイナス30度はある場所からいきなり30度近い温度の場所に来たら誰だってそうなる。


差は60度……そう考えれば俺を含めた村の住民はよく体調を崩さなかったな。


「そういえば、村の住民が大霊峰の鉱石を少し貰っていったらしいんだが大丈夫だったか?

 あの時はバタバタしてて話すのを忘れてたんだけど……。」


「大丈夫ですよ、村長達が使わなければ誰も使う事なんてなかったですし。」


「それならよかった、村の住民は何かに興味を持つとそれに一直線だからな。

 俺もその気があるから、あまり強くは言えないんだけれど。」


現在鉱石は鍛冶・装飾品・魔術・黒魔術観点で解析が行われているらしい。


その道の大ベテランばかりだから、適切な使い道が分かるのも時間の問題だろう。


釣具に適した鉱石だといいなぁ。


「そういえば鉱石で思い出しましたが、村ではダンジョンを有効活用しているんですよね?

 大霊峰にはいくつかダンジョンがあるから岩壁に近づくなと、フェンリルから聞いてましたが。」


「それは本当か!?」


まだウルリケが住んでたダンジョンのダンジョンコアの回収もまだだが、ダンジョンコアの所在が分かるだけでも大きな進歩だ。


「大霊峰の管理って雪崩や猛吹雪の抑制くらいで、あの地に何があるかなんて管理してないんですよね。

 なので、探せばもっといろいろあるかもしれません。」


「ちなみに探索は自由にしていいのか?」


「自然を含めた生態系を破壊しなければ自由にしていいと思います。

 四大精霊の皆さんを怒らせるのは嫌なので。」


それはそうだ、特に自然を蔑ろにしたらドリアードは相当怒るだろうな。


あそこには相当な魔素もあるというし、あそこから得れる力は未開の地と比べても遜色ない質と量だろう。


新たな発見の為に探索班を送りたいが……あんな危険な地に住民を送り込むのは些か憚られるな。


「ちなみにオスカーというドラゴン族の方とキュウビという獣人の方……ですかね、それとローガーという獣人の方の3人は大霊峰に向かわれてます。

 何でもフェンリルより強い存在が居るかもしれない、そして探索もしなければという事でして。」


フラウからとんでもない言葉を聞いて肩をうなだれる俺。


どうしてそんなことを相談も無しにするんだ、あの3人なら誰にも負けないと思うけどさ。


それよりシモーネ、どうして妊娠してるのに一人になるからと止めなかったんだ。


「ちなみに見送りは、ドラゴン族のシモーネさんという方が笑顔でされてました。

 お土産よろしくって言われてましたよ。」


楽観的過ぎる、少しは心配してあげてほしい。


あの過酷な大霊峰だぞ、そんな旅行みたいな感覚で行く場所じゃないと思うんだけど。


俺の感覚がこの世界に適応出来てないのだろうか、ちょっと不安になる。


「あの3人は少なく見積もってもフェンリルより強いです、安心してください。

 それより村長、もっと村の事を教えてくださいね!」


フラウは上手く会話を逸らし、俺の腕に捕まって案内を促してくる。


分かった、案内するから離れなさい。


俺がロリコンに目覚めたかのような目で周りから見られてるから、頼む。

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