第213話 デパート利用権の転売対策について話し合いをした。
書斎で今日の話し合いの内容や伝えるべきことをメモしていると、扉をノックする音が聞こえる。
「入っていいぞー。」
それに返事をするとメアリーが顔を覗かせて「そろそろ話し合いのお時間ですよ。」と教えてくれた。
集中していたのか分からないが、もうそんなに時間が経っていたのか。
「教えてくれてありがとう、すぐに準備するよ。」
メモは途中だけど、8割がた完成はしているし困ることはないだろう――前の世界で働いてた時のように完成してなければ怒られるなんてことはないし。
俺はメモを持って部屋に行き、着替えをして玄関で待ってくれていた妻達と合流。
ウーテが子ども達を奥様方に預けて来てくれるそうでお願いしたら、いつの間にか作っていた3人用の籠に子ども達を入れてドラゴンの姿で運んでいった。
危なくないのだろうか、カールがキャッキャと喜んでる声が聞こえたので怖くはないみたいだけど。
俺はメアリーとカタリナの3人で広場へ向かった、ウーテは送った後すぐにこちらに来るとのことだ。
広場に着くとほぼ全員が集まっていた、オスカー・シモーネ・流澪がまだみたいだな。
全員が集まったら始めるか、そう思って席に座るとドワーフ族がお酒とおつまみを運んできてくれた。
「屋根が出来たからの、こういう風に使ってもいいじゃろ。」
元々は観光に来てくれた人や行商の人へ食事を出すためにつけたものだが、確かにこういうことが出来るのは便利かもしれない。
幸い酔いつぶれて話し合いが出来なくなるような人は村に居ないからな、流澪には飲ませれないけど。
皆がお酒とおつまみを楽しみながら談笑していると、最後にオスカー達が3人揃って広場に到着。
珍しい組み合わせだな、オスカーの能力について話を聞いてたのだろうか。
でもそれならウーテも一緒に呼ばれそうだけど、まぁいいか。
「よし、全員集まったし話し合いを始めよう。
ドワーフ族が用意してくれたお酒やおつまみは楽しみながらでいいからな。
まずは魔族領の商人ギルドからもらった意見なんだが、デパート利用権を転売する動きが確認出来ているらしい……抽選会がどのように行われているか教えてほしいのと、転売の対策について意見があればどんどん話してくれ。」
「なるほど、それでワシが呼ばれたという事か。
まずは抽選会の運びを説明しよう――と言っても、そこまで難しいことはしていないのだが。
羊皮紙で作ったくじを順番にひいてもらっている、当たりが出ればデパートを利用出来る……はずれればまた次回挑戦してくれ、という感じだな。」
概ね思っていた通りだな、この世界じゃ抽選会と言ってもそれくらいが限度だろう。
魔術で何か出来るなら話は別だが、そうじゃなければ他にやりようがない。
「転売されるというなら抽選会を有料参加にすればいいんじゃないかしら?」
「それはダメよ。
参加費を立て替えることも出来るし、有料にした分金額を上乗せして売ればいいだけだから。」
流澪から反対意見が出る、まさにその通りなので俺もシモーネの意見は取り入れれない。
その後、様々な意見を出してくれているがどれにも抜け穴がある……そもそもテクノロジーが発達した前の世界でも完璧な転売規制が出来ないのに、この世界でそんな事が可能なのだろうか?
村の頭脳と言っても過言ではないメアリーもずっと考え込んでいる、どうやっても確実に当選者だけがデパートを利用する方法が思いつかないのだろう。
「あまり推奨したくないけど、一番確実な方法はあるわよ。」
その声を聞いた全員がその主の方向を向く、発言したのはシュテフィだった。
「確実な方法があるなら是非採用したいが……推奨したくないというのはどういうことだ?」
「呪いを使えばいいわ、幸い私がそういった魔術も扱えるし。」
推奨したくない理由がそれを聞いて分かった、呪いは流石に躊躇うだろう……する側も悪意は無いしされる側もいい気分ではない。
「どういった呪いがあるのですか?」
メアリーがシュテフィに質問を投げかける、まさか採用するのか?
「呪いが顕現する時期や内容まで割と自由に決めれるわよ?
一方的にかける契約魔術と思ってくれればいいかしら、どこかでいい思いをさせないと呪いじゃないでしょ?」
そういうものなのだろうか、だがゲームでも強い力と引き換えに呪われて何かしら制限されてたりもするからそうなのかもしれない。
「それなら当選者には特に負担をかけることなく転売を防ぐことは出来ますが、推奨したくない理由はなんでしょう?」
「呪いを解く人材がどれだけ村に居るか分からないからよ。
私はかけることも解くことも出来るけど、あの人数全員解呪しようものならそれだけで一苦労だわ。」
「解呪ならラミア族が可能ですよ?」
「マーメイド族も出来ます。」
「プラインエルフ族も一部の人は可能ですね。」
呪いをかけれるのはシュテフィだけだが、解呪に関してはかなり人員を確保出来そうだ。
そもそも何で解呪なんか必要になるんだろうと思い聞いてみると、魔物が持ってる武器やダンジョンで手に入れた物は呪われたものがあるので、それを解くためらしい。
後は単純にそういったことが出来ない種族から依頼された時に、食糧や資材を要求するためだそうだ。
確かに村が出来る前の未開の地なら、それも生きる手段の一つに組み込まれててもおかしくない。
「それなら呪いを採用してもいいかもしれないな。
しかし、抽選会に絶対シュテフィが行かなければならない事を考えると結構前倒しで抽選会を行わなければならないが、大丈夫か?」
「私が行く必要はないわ、当選者の数を予め決めてその分だけ装飾品を作ってくれればそれに呪いをかけるから。
内容は解呪するまで外せない、デパートの期間が終了しても外してない場合は頭痛と腹痛くらいでいいかしら?」
確かにそれなら利用権を渡すことは出来ないな、俺が思っていた呪いよりかなり平和で良かった。
「緊急の用事が出来て仕方なく不参加の場合もあるでしょうし、もう少し呪いが発現する期間を伸ばしてもいいですね。
その場合は村の駐屯地を訪ねてくれれば対応するという形が一番でしょう。」
「よし、それで行こう。
装飾品の準備はアラクネ族とドワーフ族に任せようと思うが大丈夫か?」
「任せておけ。」
「お任せください。」
これで転売については解決しただろう、当日売るものはデパートに入らないと誰も分からないし犯罪に利用するのは難しくなったはずだ。
しかしファンタジーな世界ならではの解決法だった、前の世界には呪いなんて無かったし。
「さて次は、カタリナが俺に買ってくれた鉱石についてなんだが……売ってた行商も俺もカタリナも何か分からないんだ。
これについて何か知ってる人は教えてほしい、採掘出来るのは人間領みたいだ。」
俺が机の上に鉱石を置くと皆続々と鉱石を見に集まってくる、だがほとんどの人が何も分からないと言って席に戻っていった。
だがそれを見て「嘘でしょ……?」とミハエルだけがわなわなしている。
「これが何か分かるのか?」
「魔法金属よこれ……魔族領王家の鎧に使われてるやつ。」
「そうだったのか、ならこれも買い取って村で使うとしよう。」
俺が安直に考えているとミハエルが慌てだす、どうしたんだ?
「これ、魔族領では鉱脈が無いし採掘された記録も無いのよ。
人間領で採掘出来るという事は、過去もっと交流が深かったということかもしれない。
ちょっと知り合いの歴史学者に渡したいから借りてもいいかしら?」
「構わないぞ、一応カタリナが買ってくれたものだから返してほしいけどな。」
「当たり前でしょ、安心して。」
鉱石もとりあえず正体は判明してよかった、後は人間領からの取引関連をマーメイド族から聞かなければ。
でもその前に夕食だ、ドワーフ族がものすごいいい匂いをさせて料理を運んでくれているからな。
食べ終わったら続きをやるとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます