第284話 コロポックル族が無事村に移住した。
コロポックル族を連れて村に帰ると陽が落ちる少し前、思ったより早く帰る事が出来て良かった。
「ここが村……すごい!」
「コロポックル族の住む範囲はこっちだ、ついてきてくれ。
それと流澪、ハチミツを持って食堂に行ってくれ。
前の世界ではどう使ってたか、どう使うかという相談を進めておいてくれると助かる。」
「まっかせて!
知ってること全てを伝えておくわ!」
頼りになる、現状一番ハチミツの使い方に詳しいのは流澪だろうからな。
「ホーニッヒ、舐めるだけじゃダメなのか?」
「それでもいい、けど料理やお菓子に使うともっと美味しいものが作れるんだよ。」
コロポックル族は舐めるだけだったんだろう、ハチミツは栄養価が高いからそれだけでも充分だったのかもしれない。
コロポックル族にどういう住居がいいか聞くと、小さいながらも俺達が住んでるような形の家がいいようだ。
憧れはあったみたいだが、難しかったらしい。
それもそうだろう、コロポックル族が住む大きさで倒れないように作るのはかなり大変なはず。
軽い物は倒れやすいからな、設置面積を広げればそうでもないがそれはそれで使いにくいし不格好。
素材を消費するだけで倒れそうにない頑丈なコロポックル族用の住居が完成、コロポックル族に内見をしてもらったが大満足のようだ。
「そんちょ、でいいのか?
家感謝する、コロポックル族の長としてお礼を言うぞ!
それと、イムカーはどこでやればいい?
他にも虫を扱う仕事はあるけど。」
「村長だ、呼び方は何でもいいけどな。
仕事をしてくれるなら村としては大歓迎だ、衣食住を保障するのは当然だと思ってる。
イムカーは、コロポックル族が住む居住区の裏がいいだろう。
あそこなら他の住民に虫が悪さをする事は少ないだろうし。」
「分かった、じゃあそこに花を植える!
そんちょはこれと同じものを作ってくれ!」
そう言って手渡されたのは養蜂箱、近くで見るのは初めてだがこんな造りになってるんだな。
なんか凄そうな中身をしているし、もしかして案外コロポックル族って頭がいいのか……?
喋り方が舌足らずだから、見た目も相まってちょっと幼く感じるんだよな。
やはり人を見た目で判断してはいけないな、皆対等に向き合っていかないと。
でも俺の家族だけはちょっと贔屓させてもらう、それくらいいい……と信じたい。
俺は倉庫で養蜂箱を作り終え、コロポックル族の所へ持っていく。
花を一輪ずつ丁寧に植えていたので少し作業を中断してもらう事に、そんなことしてたら花の季節が終わってしまいそうで。
近くに居たラミア族に花の種を植えてもらって俺が
コロポックル族からは大歓声があがる、それくらいの声量をいつも出してくれれば会話に困らないんだけど。
「しかしコロポックル族が村に移住するなんて、すごいですね。」
生活魔術を使ってくれたラミア族が、割と本気で驚いた表情をしながらぽつりと呟いた。
「何がすごいんだ?」
「コロポックル族って幸運の象徴らしいです、伝承では聞くけど存在が確認出来ない……半ば伝説のような存在で。
まさか生きてる間に見れるなんて思ってませんでした、それにマーメイド族も喜ぶと思いますよ?」
「確かに、ウーテが居なかったら姿を見せてなかったはずだしかなり幸運だったかもしれない。
だが、なんでマーメイド族が喜ぶんだ?」
「コロポックル族って釣りや漁業の技術が発達してるらしいですよ?」
ラミア族から思いもよらない情報が。
森の中に住んでたから特に何も思わなかったが、確かに移住の準備の時にいくつか魚が見えた気がする。
たまたま獲れたものだと思っていたが、もしその情報が本当なら自分達で漁業をする技術もあるという事だ。
魔族領や人間領と力を合わせれば漁獲量が更に増えるかもしれない。
コロポックル族が人前に出れるかどうかが問題だけど。
嫌がるなら無理にさせる必要もないからな、ハチミツだけで俺としては大満足だし。
「とりあえずマーメイド族には話をしてみるよ。
手伝いと情報ありがとうな。」
「これくらいお安い御用です。
村長も頑張ってくださいね。」
そう言って手を振りながら去っていくラミア族、今特に頑張ることは無いんだけどな?
「開様、現状の説明をお願いします。」
後ろからドスの聞いた声が聞こえてきたので慌てて振り返ると、メアリーが少し怒った様子で俺を睨んでいた。
もしかしてこれを頑張れってことなんだろうか、怒られることは何もしてないぞ?
「――と、言う訳だ。」
「状況の把握は出来ました、ですがウーテさんが居たとは言え安全が約束されてない場所へ気軽に赴いたのはまだ怒ってます。
しかも流澪さんまで一緒に……何かあったら大惨事どころではありませんよ?」
「済まない、ウーテが大丈夫だっていうから軽率に行動しすぎた。」
「今後はもう少し護衛を増やすように、それなら私も文句は言いませんから。
それより、早く食堂に行きましょう!
ホーニッヒ……いえ、ハチミツでしたっけ?
どういう味でどういう料理に使えるか気になるので!」
メアリーも最初は怒っていたが、ハチミツが楽しみすぎるのが見ててよく分かった。
途中涎が垂れて来てるのが分かったし、必死に口元を拭ったりして隠していたけど。
「俺もそれは気になるし、食堂に行くとするか。」
「はい!」
俺はメアリーとハチミツがどうなるか楽しみにしながら食堂へ歩いていった。
だが食堂の手前、広場でメアリーが立ち止まる。
「どうしたんだ?」
「今日は流澪さんと2人で過ごす日でしょう?
開様が私と一緒に居るのを見たら、流澪さんが残念な気持ちになるんじゃないかと思いまして。」
そこまで気づかなかったな。
「ありがとう、それじゃ先に行って流澪と話してるよ。」
「はい、私も数分したら行きますので。」
俺はメアリーと分かれて先に食堂へ行き流澪と合流する、俺を見た時の嬉しそうな表情を見る限りこれが正解だったんだろう。
メアリーには感謝しなきゃな、それと俺はもう少し女心を勉強しよう。
流澪とドワーフ族のハチミツに対する熱弁を聞きながら、俺は心の中で反省した。
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