第190話 村に活版印刷所を建築した。
話し合いが終わった次の日、俺は印刷所を建設するため土地を見繕いに行くことに。
施設側も結構土地は余っているが、ここまできちんと考えられて配置されているのでかなり慎重に考える。
色々見回って考えた結果、商店街と広場の中間にある土地に決定。
ここなら色んな話を聞きやすいしマーメイド族も立ち寄りやすいだろう、他の人にも相談したが全員賛成だったのは嬉しい。
ミノタウロス族とケンタウロス族に声をかけて資材を運んでもらう、その間に俺は背負い籠を持っていってドワーフ族からワイバーンの牙を入るだけもらいに行った。
結構な量のワイバーンの牙が貯まっていた、すぐに加工しやすいように洗ってくれてもいたので流石だ。
皮もきちんとなめして干してあったし、使う日が来るかどうかはさておいて。
建設予定地に戻ると既に材料は運び終わっている、今まで建物をたくさん建ててきてその度に頼んでいたからか目分量でどれくらい材料が必要か分かるようになったらしい。
そんな料理感覚で建築資材が分かる人が出るとは思ってなかった、普通にすごいと思う。
実際に
俺はミノタウロス族とケンタウロス族にお礼を言って、完成した建物に不備が無いかラミア族に確認してもらおうと呼びに行くことに。
とりあえず俺が必要だと思う部屋なんかは作ったつもりだが、実際に使う人がどう思うかは別だからな。
「作業場が少し手狭かもしれません、後は印刷した物を乾かす場所が欲しいですね。」
ものすごいダメ出しされてしまった、これでも結構広めに取ったつもりだが……どういう作業のやり方を考えているんだろう。
作業机も2mくらい取ってあるのに。
だが作業者が狭いと言うなら改善するしかないな、俺はラミア族からの要望を取り入れて
乾かす場所は版を作ってから増設するとしよう、それ以外は大丈夫だと言ってもらえたのでこれで行こうと思う。
「版の大きさはどれくらいがいいとかあるか?」
「読みやすい文字の大きさであれば問題無いと思います、大体四方が指の第一関節の半分ほどあればいいかと。
それより大きくてもいいですが、使える文字数が減るので正しく情報を伝達出来るかどうか分からないですね。」
情報の切り貼りは極力避けてもらいたいので、少し小さくても5㎜四方くらいで版を作ることにする。
前の世界で見出しだけで読者を釣っていたようなマスメディアのようになるのは避けて欲しい、あれで何度騙されたことか。
そもそも記事を読んでも一部を切り取って誇張していた記事もあるしな、気になって全文を調べたら前後の記述が一切なくて伝わり方が変わるじゃないかと思ったことが多々あったし。
そういうのは排除したい、というかそういう自己顕示欲全開の掲示物を出すのはやめてほしいんだよな……もし読まれないとしても記事として出した以上責任を取れるものが望ましい。
色々考えながら
だいたい3㎜四方くらいか、かなり小さいがテスト用のインクに付けて捺印してみると普通に読めるので問題無さそうだ。
後は乾燥させるための部屋だ、ラミア族にそのまま確認してもらいたいので待機してもらいミノタウロス族とケンタウロス族に声をかけに行く。
資材を運んでもらいそのまま増築、最初は想像通りダメ出しをもらったが3回目の手直しで了承をもらえたのでこれで完成。
結構大掛かりな建築になったが問題無いだろう、余っている土地を活用しただけだし……特に何か建てたいという要望も今のところなかったからな。
印刷所はいずれ必要になる施設だし今先行投資してもいいはずだ、先行投資と言っても土地だけだし。
インクの出所が分からなかったがドワーフ族が作っているそうだ、ドワーフ族は手先が器用だから言われれば納得。
そもそもインクって溶剤を使っているイメージだったが、どうやら鉱物や種子、それに豆なんかを使っているそうだ。
この先文明が発達すれば俺が思っているようなインクや消えないインク何かが開発されるかもしれないが、俺か流澪がこういうのもあると言わなければ何の疑問も持たずに時は流れるだろう。
それくらいこの世界の住民は文明の発達にそこまで興味が無い、というか目先の利益に捕らわれないというのが正しいか。
テンガイと大臣は例外だけど。
いや、蒸気機関を開発した人間領はある程度文明の発達に興味があるかもしれないな……魔王も人間領は色んなものを使う技術があると言っていたし。
商店街を見たが魔族領には無い武器も多々見受けられた、ボウガンなんかがまさにそうだな。
弓のような技術が無くても遠距離攻撃をある程度手軽に出来るのがボウガンだし、練習は必要だけど。
っと、考えが逸れたな。
俺はそのまま残りの版を作りラミア族に確認してもらう、足りない字は無さそうなので問題無く印刷を開始出来そうとのこと。
この後ラミア族は試しに活版印刷をして今後より良くするために手順を考えるそうだ、これ以上は俺も専門外だし考えていることも無いので任せることにする。
さて、俺は鍛錬に行くとするか。
久しぶりというほどではないが、日課になっていたものを数日行わないと久しぶりに感じる。
まずは柔軟と筋トレをして体を慣らすところだ、久しぶりとは言え鍛錬を始めた当初よりは余裕でメニューをこなすことが出来る。
「村長、そこまでなまってないようで安心した。」
「リッカか、俺も安心してるよ。」
俺を見つけたリッカが声をかけてくれた、人間領のトラブルで心に傷を負ってないようで安心したよ。
実の兄が事実上の死刑を言い渡されているからな……自分がそのために動いているし少しは辛かったと思うが。
「人間領のトラブルでは助かった、この村の皆が居なければもっと迷惑をかけていたし……流澪殿にも辛い思いをさせていたよ。
それと父上から預かっていたものがある、話し合いが終わって落ち着けば渡そうと思っていたんだ。」
そう言ってリッカが俺に紙を手渡す、俺はそれを受け取るとそれはダンジュウロウから俺に宛てた書面だった。
内容は次に来るときには都の外に柵を立てた土地がある、そこを好きに使ってくれというものと、その土地の使用許可書が同封されていた。
それもダンジュウロウの直筆で、これを見せれば人間領の誰にも文句は言われないだろう。
「それと村長が持っている通行証があれば、人間領で何をやっても村長の自由。
もちろん危険な行為はダメだけど、村長ならそんなことするはずないし。
それじゃ渡す物は渡したから、鍛錬頑張って……刀術の指導が必要なら声をかけてね。」
そう言ってリッカはリザードマン族と刀術の鍛錬をしに戻っていった。
俺も鍛錬をしなければならないが、こんなにも人間領で早く行動を起こせるとは思ってなかったので何をするべきか頭をフル回転させて考える。
……鍛錬が終われば妻達に相談しよう、俺一人で悩んだってしょうがないし。
そう思い直して俺は頭を鍛錬に切り替えた。
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