第189話 話し合いの続きが無事終わった。
昼食も終わり話し合いを再開。
「では次は私からの意見を話させていただきますね。
人間領で見た技術で非常に魅力的なものが一つありました、活版印刷というものです。
現在村に掲示している掲示物はダークエルフ族が一つ一つ丹精込めて作ってくださっていますが、もし忙しくなれば質が落ちる可能性や必要な時に掲示出来ない可能性がありますよね。
それを版さえ作ってしまえば同じものを量産することが可能な技術が活版印刷です、これを村にも導入したいと思いまして。」
「それは助かる技術だわ、あれはあれでかなり手間だし朝の話し合いで任された熱機関の開発は、キノコの栽培と石油精製の管理をする者以外は極力総出で行いたいもの。
版の作成というのがよく分からないけど……具体的にはどういうものなの?」
ノラがメアリーの意見に喜んでいる、確かに今は枚数こそ少ないもののもし増えることがあればそれだけ仕事量が増えるからな。
それに熱機関の開発は人手があればあるだけいいだろう、手先が器用なダークエルフ族に頼む仕事は多いから活版印刷が確立出来れば負担を軽減出来る。
メアリーはよく見ているな、だからこそ活版印刷に食いついたのだろう。
「まずは1文字1文字の版を開様の
この仕事はマーメイド族に情報収集を、文面の構成と掲示物の作成は手が空いてる種族にお願いしたいのですが。」
「情報収集がマーメイド族はまたどうしてだ?
マーメイド族は陸上移動に適していないし、他に適任が居ると思うが。」
メアリーが考え無しに言っているとは思えないが確認を取る、だが俺にはマーメイド族が適している理由が思いつかない。
「マーメイド族が一番他の種族と濃く交流をしているからですよ。
村の商店街での店番に魔族領と人間領の漁船の護衛……一種族で現状交流のある全ての種族とほぼ毎日交流しているのはマーメイド族です。
村の住民とも商品の説明や売上の受け渡しなどありますからね、一番外の情報を持ってるのは現状マーメイド族です、そこから話題になりそうなものを掲示物で掲載して広く知ってもらうのが目的です。」
言われてみればそうだ、気づかなかったがマーメイド族は今や情報通と言っても過言じゃないんだな。
陸上移動が苦手な故に店番で住民と来訪した魔族との交流、水中移動が得意故に漁船の護衛で漁師とコミュニケーションを取っている。
漁の出来高なんかで商人ギルドと話すこともあるだろう、言われなければ気づかなかったよ。
「では掲示物の作成はラミア族が引き受けます、現状手は少し余っていますので。」
ユリアが掲示物の作成を名乗り出てくれた、よろしく頼むぞ。
「では開様はこの話し合いの後文字の版の作成をお願いしますね。
1文字あたり20個ほどあれば1つの掲示物に間違いなく足りると思いますので。」
結構量があるな、だが
「素材はどうするんだ?
鉄だと重すぎるし硬くて丈夫な素材にあまり心当たりはないけど。」
「ワイバーンの牙を使っちゃいましょう、オレイカルコスが出てきてからめっきり使わなくなって余っちゃってますし。
もったいない気もしますがこのまま使わない可能性もあるので、強いて言うなら商品向けの武具に使う程度でしょうか?」
「だが売り物にしたほうがいいんじゃないか、使っては無いかもしれないがいい素材なのは間違いないし。」
「ワイバーンの牙を使わんでも充分物は売れておる、良い物なのは間違いないし村で使うほうが有意義じゃろ。」
素材を管理しているドワーフ族から使っていいと取れる意見が出された、確かに売り物は鉄や鋼で充分だろう。
急にワイバーンやドラゴン族の素材を使った物が出るとその他が売れなくなる可能性もあるし。
その分値段を上げたらいいんだろうが、村にお金が集まりすぎる。
現在でも充分集まっているのに……これ以上は妻達と計画していることを実行する時に使う事を加味しても余り過ぎてしまうし。
いつ使うことになるだろうな、2人の進展を今度聞いてみなければ。
「それと人間領には号外というものもありました、緊急時や大きな出来事があった時に出す告知物ですね。
それを出すかどうかの判断もラミア族に任せていいでしょうか、文面に関してはお任せしますので。」
「大丈夫です、仕事がいただけるのは有難い事なので。」
活版印刷についても話がまとまった、これで解散かと思ったが「私からもいい?」と声が挙がった。
声の主はシモーネ、オスカーとデートをしていたが何か気付いたことがあったのだろうか。
「人間領で主に採掘出来る玻璃というものだけど、あれ自身に魔力が蓄積されてるわ。
人間は魔術を使う習慣が無いから気づいてないのかもしれないけど、質がいいものほど魔力の蓄積量も多いの。
何かに使えないかドワーフ族とアラクネ族に意見を聞きたいのだけど。」
そのあたりを活かせるのは確かにその2種族だろうな、ドラゴン族も村の技術者を認めてくれているみたいだ。
最近この村に来たシュテフィやリザードマン族、ラミア族にハーピー族からはどよめきが聞こえる。
ドラゴン族が他の種族に意見を乞うのは珍しいことらしいからな、びっくりしているんだろう。
シモーネから意見を乞われて考える2種族、最初に口を開いたのはアラクネ族だった。
「加工してみないことには分からないけど、より強い効果を持つ装飾品が完成すると思うわ。
シュムックも加工の際に魔術反応を起こして使用者に効果を与えるようになるから、その反応が強く出る可能性は充分に考えれるわね。」
そういう仕組みだったのか、アラクネ族が何かしていると思ったが……それなら自分達が欲しい効果の装飾品を量産出来るからな。
俺の魔力量増加の装飾品を作る時も結構な数を作ったらしいし、自分達で何かすることは出来ないのだろう。
「武具の加工としては硬度による、だが魔術を使役する際にそれを増幅させる手甲なんかは作れるはずだぞい。
アラクネ族の装飾品を組み合わせて作ろうと思っていたが、基本売り物じゃから遠慮していたんじゃよ。
そういう鉱物があるなら是非取り扱ってみたいの、幸いラミア族や古代吸血鬼と言った魔術に長けた種族も居ることじゃしな。」
そういう使い方もあるのか、魔力増幅なんかは杖のイメージがあるが……わざわざ同じ効果を持ってるのに片手を塞ぐ意味は無いか。
ゲームなんかでは杖が当たり前だったが、なんでだろうな。
「玻璃の有用性は充分にありそうだけど……ダンジョンから生成するという手もあるのよね。
村長、どうするか決めてもらえるかしら?」
「採掘部隊の現在の負担はどんな感じだ?」
「可もなく不可も無くと言った感じかしら、ドワーフ族・ミノタウロス族・アラクネ族・ラミア族と私で採掘に当たれているから人手は足りてるけど。
ただ仕分けと品質管理の人手が少し厳しい気がするわね、ただでさえシュムックを5段階評価しているし。」
「なら人間領から仕入れることにするか、まずはお試しで50キロほどあれば充分だろう。
マーメイド族は次の交易の時に積んできてもらうようお願いしてくれ。」
「分かりました!」
シモーネもただデートをしていたわけじゃないんだな、もしかしたら玻璃は最初の商店街で気づいていたかもしれないけど。
だが村で活かせる資材が増えるのは有難い、もしかしたら他にも活かせる方法があるかもしれないし。
「よし、玻璃に関してもこれで終わりだな。
じゃあ解散でいいだろうか?」
全員から大丈夫だと言う意思表示があったので解散する、まさかこんな長く話し合いの時間を取るとは思わなかったよ。
さて、俺は久しぶりにゆっくりカールの顔を見ることにしよう。
奥様方に預けているので足早にそちらへ向かってカールを見つけて、すぐに抱き上げる。
その後メアリーもカールを見に来て二人でカールと遊んだり、育児について奥様方と話したりしながらその日を過ごした。
時期的に早ければ俺達の言葉を徐々に理解してくるらしい、喃語ではあるが会話が成り立つこともあるそうだ。
あまり構ってやれてないがカールはカールでしっかり成長している、恥ずかしくない父親としていられるよう頑張らなければな。
そのためにも明日から鍛錬も再開だ、体が鈍ってなければいいけど。
だがまずは活版印刷のために文字の版を作ることだな、印刷所も明日土地を見繕って作るとしよう。
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