第286話 流澪にダーツの投げ方をしっかりと教わった、まさかこれがやりたい事だったとは。
流澪に引っ張られて着いた先は遊戯施設、何かやり残した事があるんだろうか?
「拓志はダーツやったことないの?」
「遊びに行った時にたまにやる程度だ。
カウントアップも最高500点ちょっとだし、それも偶然調子がいい程度だから素人もいいところだぞ?」
「麻雀はイカサマされなければそこそこ強そうだったのに、ダーツはからっきしなのね。
村長たるもの、道楽に付き合える程度の腕は持ってないとダメなんじゃない?
この施設にある遊びでは一番回転率がいいし、準備が一番簡単だから流行ると思うわよ?」
確かにダーツはボードと矢さえ準備出来ればすぐに始められるからな、設置する高さや的までの距離なんかは決まってるけどそれくらいは教えるし。
俺じゃなくて流澪が。
流澪の先見の明が正しいなら、確かに今のままでは恥ずかしいことになるかもしれない。
「せっかくだし教えてあげよっか?
まぁそのつもりでここに来たんだけど。」
「プロとマンツーマンレッスンが出来るなんて役得だな、是非お願いしたい。
けど、流澪はそれがしたい事なのはなんでなんだ?」
「拓志と一緒に居れるしくっつけるでしょ?」
純粋にスキンシップをご所望だったみたいだ、そっちも役得なので良し。
「――セットアップの時にまだ腰がぶれてるし、狙う場所・目・ダーツが一直線になってないわ。」
「これでもダメなのか……というか後者はきちんと出来てるつもりだぞ?」
スキンシップをされながらも普通に厳しい指導をされている。
最初よりかは大分うまくなったが、まだまだらしい……それでも5回投げて1回は狙った所に入るだけでもすごい成長したと思うんだよな。
「えぇ……それじゃ右目を瞑って左目だけでボードを見て投げてみて。」
「分かった。」
そんな事をしても変わらないと思うが……と半信半疑で言われた通りにしてみた。
そしたら何とビックリ、相当狙いやすい。
まだまだブレはするけど狙った場所に行く比率がさらに上がった。
「拓志、視力は普通なんだけど乱視が入ってるわね。
それに右利きだけど利き目は左、そりゃあれだけ教えても上達速度が遅いワケよ。」
「待て、そんな事があるのか?」
自分でも知らなかった事実にびっくりする、というかダーツを通してそこまで分かる流澪が普通にすごい。
「あるわよ、プロにも矯正するのすごく大変だった人が居たし。
でも乱視かぁ、眼鏡の技術は無いし……あ、そうだ。」
「私生活には困らないし大丈夫だ。」と言った瞬間に流澪がナイフをゆっくり振り下ろす。
「何をしたんだ?」
「拓志と乱視の関係を切ったの、これで治ったはずよ。」
最近
だが、せめて体に関わることは本人に一言確認してほしい……ちょっと怖いから。
しかし私生活で全然気にした事なかったけど、乱視が治って何か変わるだろうか。
そう思いダーツボードの前に立つと明らかに見え方が違う、なんというか……ぼやけてない。
え、この距離でここまで変わるって結構酷かったんじゃないだろうか?
「どう?
ボード見えやすくなった?」
「全然違うな、試しに構えてみたがあまりに違いがあって驚いてる。」
試しにカウントアップを1ゲーム通してみたが、スコアが882と過去最高記録を大幅に更新。
狙った所にズバズバ入るとすっごい気持ちいいんだな。
「上出来じゃない、かなり良くなってるわ。
次は綺麗なテイクバックのやり方だけど――」
それから流澪による熱の入った指導を受けていると、メアリー・ウーテ・カタリナの3名が俺達を呼んでいる。
「いつまでやってるんですか、日が落ちてるどころかもう夜中ですよ!?」
「心配して探してたらまさかこんなところに居るなんて……。」
「ずーっと明かりがついてるからおかしいと思ったのよね。」
確かに松明とろうそく、それにランプは何度も交換してたな……お腹も備蓄されてるファストフードをつまみながらダーツをしてたから特に気にならなかった。
プレイの邪魔にならないよう窓を少なめにしたのがダメだったな、時間がどれくらい経ったか全く分からなくなる。
矢を抜いて帰る時に窓を見れるんだが……指導されながらだと外を見ずに流澪やボードを見てしまうからな。
「済まない、心配かけた。
流澪、風呂に入ってご飯を食べて帰るとしようか。」
「そうね。
皆、心配かけてごめんね?」
もじもじしながら謝る流澪、それを見た3人は笑顔で流澪を許すような返事をした。
そんな照れる場面でも無かったと思うけど。
とりあえず風呂とご飯だ、フライドポテトと唐揚げしか食べてないからちゃんとしたものが食べたいし飲みたい。
家に帰って準備をするとしようか。
風呂と飯を済ませて寝る準備、いつもより少し遅い時間になってしまった。
一応パーン族と何を話すか軽くメモを書いておくとしよう、後で聞き忘れとかあったら嫌だし。
「拓志、入っていい?」
俺が考えながらメモを取っていると流澪の声がした、てっきり寝たかと思ったがまさか書斎を訪ねてくるなんてな。
「いいぞ。」
特に拒む理由も無いので流澪を書斎に招き入れる。
「今日は振り回してごめんね。
でも楽しかった!」
「気にするな、俺も楽しませてもらったしダーツもすごい上手くなったからな。
それに乱視とか自分では絶対気づけない症状が治せたのも有難い、お礼を言うのは俺の方だよ。」
ペンを走らせながら流澪と会話をする、実際今日は流澪に色々してもらった日だからな。
本人が満足してるならいいが、俺もいい事が沢山あったから流澪が心配することは何もないんだよな。
「その仕事ってもうすぐ終わるの?」
「そんなに時間はかからないが、どうした?」
「今日最期のワガママを聞いてもらおうと思って、ね。」
まだ何かあるのだろうか、だがもう寝る時間だし流澪もパジャマ姿だからな……何をするんだろう。
少し悩んだが表情と仕草で何をしてほしいかを察する、そういうことか。
俺もダーツの指導によるボディタッチでそういう気分にならなかったと言えば嘘になるので、それを思い出し仕事を早く済ませようとペンを動かす速度を早める。
……これでいいだろう、別に俺一人でパーン族の対応をするわけじゃないし。
重大な抜けがあれば誰かがフォローしてくれるはずだ、俺は住民を信じる。
決して仕事を投げ出したわけじゃないからな?
流澪も待たせてるし、早めに切り上げただけだ。
俺は自分にワガママのようでワガママじゃないと言い聞かせながら、流澪を連れて俺の寝室へ向かった。
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