第264話 オスカーから部隊編成について学んだ。

ニルス達と話して昼ご飯を食べた後、オスカーと話をするため家を訪ねた。


サキュバス・インキュバス族の集落へ移住、もしくは現状の手助けをするために部隊編成をしたいことを伝えると快く快諾。


後は任せておけと言われたが、シモーネが妊娠してるし俺も何かあった時適切な動き方を知っておきたいので一緒に行動することに。


俺が指示すれば動いてくれるんだろうが、それが適切なのかその場で判断する材料が無いからな……俺が不安なまま指示を出しても、それは皆に伝わってしまう。


他の人が助けてくれるかもしれないけど、出来るなら助けを借りずに有事を収めたい。


そのためにはこういった事で経験を積んでおかないと、いつでも誰かがやってくれるだろうと思っている村長にはなりたくないし。


「では村長、今回の件で必要なのは膂力・機動力・食糧・戦闘技術が基本だ。

 そこに指揮を任せられる人員が数人と、その下で動く人員がある程度動けば村の実力であれば機能するだろう。

 村長はどの種族を選べば適切だと思うだろうか。」


「それに当てはまるのはドラゴン族・ウェアウルフ族・ケンタウロス族・ミノタウロス族・リザードマン族あたりが妥当だろう。

 それと今回はニルス達が黒死病に罹っていたこともあって、疫病の対応に流澪も向かってもらうつもりだ。」


「ほぼ適切だが、ワシならそこにハーピー族も加える。

 ドラゴン族も全員を部隊に動員出来るわけではない、他に空の哨戒を任せれるのはハーピー族だけだからな。

 こういう部隊編成のコツは、やるべきことの見定めと動員出来る人の能力をきっちりと把握することだ。

 判断を急かされてない状況なら少々待たせても問題無い、まずは適切な指示を出せるところからだろう。」


オスカーに勉強したいとは言ったが、ここまで丁寧に教えてもらえるとは思わなかった。


それと同時に適当に必要な人を連れていってるかと思ったが、そこまで考えてしっかり判断していたことを知る。


脳筋だなんて思っていてすまない、やはり力だけでドラゴン族を束ねているわけでは無いんだな。


経験なのだろう、今後はこういう機会があれば部隊編成を任せず参加させてもらうとするか。


とりあえずオスカーは各種族へ通達しに、俺はドワーフ族の所へ行って食糧の確保と準備をお願いしに向かった。


頼みにいった数分後に用意されたものが出てきたのにはびっくりしたけど。


ニルス達から里の人数を聞いていて予め準備していたらしい、皆ちゃんと経験から学んで考えながら仕事してるんだなぁ……。




食糧や他に必要な準備、それにオスカーが招集した種族が集まる。


もちろんそこには流澪も、今回は初遠征ということもあって緊急時以外は仕事を任せるつもりはないらしい。


流澪は「別にいいのに。」と言いながらも結構ガチガチになっている、無理するんじゃないぞ。


その間にオスカーは手際よく各種族へ通達して部隊を編成していく、ここが一番大事なところなのでメモを忘れないようにしておこう。


持ってて良かったA4用紙。


でも少し書きづらい、バインダーくらい作るべきだろうか。


編成の内容としてはドラゴン族とケンタウロス族が全体の4分の1、他が数名といった所だろうか。


やはり空陸の運搬要員は多いほうがいいという事なんだろう、このあたりは里の立地なんかでも変わってきそうだが。


「む、聞いてくれればいいものの。

 書いて覚えておったのか。」


「いや、皆を待たせるのも悪いし大丈夫だぞ。

 かなり参考になったよ、ありがとうオスカー。」


「上に立っている者が誰かから学ぶという行為は意外と難しいものだ。

 それなのに村長はワシに教えを乞うてきた、年長者としてそれを受けるのは当然よ。」


想像錬金術イマジンアルケミーが無ければ本当にただの人間だからな、分からないことはどんどん聞くつもりだぞ。


「よし、ローガー殿とハインツ殿も部隊に参加してくれたし流澪殿は本当に見てるだけで大丈夫だぞ。」


「よろしくお願いします、流澪様。」


「よろしく頼むぞ。」


「こちらこそ、手助けできる事があればするつもりだけど……戦闘面ではお世話になるかもしれないわ。

 一応この村では刀術と呼ばれるのかしら、その心得はあるけど住民の皆には敵わないし。」


ローガー・ハインツ・流澪の挨拶も軽く済ませると、一旦食事にしようとオスカーが皆を引き連れて食堂へ行くことに。


どうやら空路でも結構な時間がかかるらしく、食事を取ったら今日のうちに出発するとのことだ。


ニルス達は結構な距離を歩いてきたんだな……そこで黒死病に罹っていたなんて本当に運が無かった。


いや、村までギリギリ辿り着いて助かったから運があったのだろうか……だが健康体で到着することが一番だからな。


それから食堂でサキュバス・インキュバス族の里での行動指針を話し合いながら食事を取っていると、俺の横にドリアードがにょきっと生えてきた。


「うぉっ、びっくりした!」


思わず叫んでしまう、あんなの誰だってビックリする。


キュウビの影法師に話しかけられるよりビックリしたぞ。


「久々帰ってきたら美味しい匂いがしたから、いただきまーす!」


「ん、ここ最近は村に居なかったのか?」


「ここから遠く離れた場所で大地震の予兆があってね、周りの自然の力を借りて調整してたのよ。

 範囲内に住む生命の8割は助けられるだろうから活動に支障はないと思うわ。」


それを聞いてちょっと胸が苦しくなる、あくまで調整という名目で動いているだけで全員を助けるという使命感は無いのだろうか。


だが、そもそも自然の現象を捻じ曲げて多くの命を助けているのだからそれでいいのかもしれない……。


村がそんなことになったら耐えれないけど。


「全員助けることは出来なかったのか?」


一応ダメ元で聞いてみる、何か出来ることがあればしてやりたいし。


「出来るならそうしたかったけど、その周りって強い自然が無くってね……蓄積されてる力を使いすぎると別個体の実体顕現が遅れそうだし。

 私は神の使命で助けてるけど、いくら契約者とは言え村長がそこまで気にする必要はないのよ?」


「知らなくても罪のない命が失われるのを諦めれない。

 助けるのに必要な分の力を村で蓄えて助けてきてくれ、あとでいくらでも補充するから。」


「……わかったわ、契約者の望みなら聞いてあげましょう。

 貯蓄している食糧の半分を肥料にしてくれたら足りるはずよ。」


「分かった、すぐに向かう。」


俺は大急ぎで食事を終えて倉庫へ走った。


事情を説明して貯蓄している食糧の大半を肥料にして森に混ぜ込み、ドリアードに力を送ってもらう。


「よし、それじゃちょっと救ってくるわ。」


「頼んだぞ。」


さて、久々に作物の大量生産をしなきゃな……少し疲れるが仕方ない。


食堂へ戻ると部隊もサキュバス・インキュバス族の里に向かって出発するそうだ。


それぞれの仕事を全うするとしよう、俺はラミア族・プラインエルフ族・ケンタウロス族を呼んできて想像錬金術で作物を作るとするか。

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