第265話 今後メモを取りやすくするため、バインダーを錬成した。
ドリアードが一部を救ったという命を全て救うため、村に貯蓄してある食糧の半分以上を吐き出して肥料にする。
その肥料を森の土に混ぜ込こんで、森の木々や草が力に変換した後ドリアードがその力を貰う。
自然が生きる力に回さなくても完全に余剰分らしいので枯れる心配は無いらしい、それどころか肥料の味が味わえた満足感が大きいので自然も大変満足とのことだ。
木々や草って案外グルメなんだな、知らなかったよ。
この世界だけだとは思うが、精霊と関わりのなかった前の世界ではそれを証明する術はないので分からない。
「うん、これだけあれば充分よ。
地震が起きるまでまだ日にちはあるし、少し村の生活を満喫したら向かうとするわ。」
「そんなゆっくりで大丈夫なのか?」
ドリアードの力を持ってしても8割しか救えない命だったのに、そんな悠長にしてて大丈夫なのかと心配になる。
てっきり力を蓄えたらすぐ出発するものだと思っていたし。
「大丈夫よ、ちょうど花の季節になった数日後に地震は起こるんだから。
少しの間村じゃない場所で頑張ってたんだから休ませてちょうだいよー。」
それが正しいなら確かにまだ時間の猶予はあるな、ドリアードならその場所まで自然を通じて一瞬で移動出来るんだし大丈夫だろう。
ドリアードの望み通りゆっくりするのを許可した、だが村の食糧をふんだんに消費したんだし絶対助けてくれよと念押し。
もし助けれなかったら食糧の消費損だからな……頼むぞ?
とりあえずドリアードに出来ることは終えたのでオスカーと流澪率いるサキュバス・インキュバス族の移住及び補助部隊の見送りへ。
食事を終えて準備も完了し、後は出発するだけのようだったので間に合ってよかった。
だが部隊編成の時には名前が挙がってなかったミハエルも部隊に加わっている。
「ミハエルも行くのか?」
「話を聞くと結構遠いらしくってね、緊急時の転移魔法陣を敷くために同行することになったのよ。
急いでたらしいから居住区のはずれにあった空き地を借りて魔法陣を描いてるわ、必要なくなったら消すから暫くはそのままにしておいて。」
「分かった。」
もし病人が居たら本気で飛ぶことも出来ないし、それが一番だろう。
しばらくは転移魔術が必要になることもないし、もし必要になってもサキュバス・インキュバス族の里と繋がればこちらから呼びに行けばいい。
あれ、そう考えたらこういった事態ならミハエルが同席するのが最適解じゃないのか?
覚えておくとしよう。
「それじゃあ村長、行ってくるぞ。」
「拓志、行ってくるわ。」
「あぁ、気を付けてな。」
オスカーと流澪、それに部隊に参加している他の皆を見送る。
黒死病が里に広がっていたら絶望的だが……ニルス達の話を聞く限り里でそういった症状が出た人はいなかったらしいので大丈夫だろう。
ついでにパーン族とも交流を図れたら万々歳だったが、思いついたのが出発後なのでどうしようもない。
いや、転移魔法陣が起動したのを確認したら伝えに行けばいいか。
流澪に色々メモしてもらうのと、俺も使いたいのでA4用紙を使いやすくするためバインダーを作っておこう。
そうすれば話の内容なんかをメモしやすいからな、俺も見回りの時に気付いたことを書き込みやすいし。
纏めるのはタイプライターを使うけれど……クリーンエネルギー機構が完成したらエネルギーの一部を使ってワープロくらい作れないだろうか。
だがそれだとプリンターが必要か、ありったけの資材を倉庫に集めて思い浮かべるのもいいかもしれない。
なんかそこまで出来ればパソコンも作れるかもしれないな……だがそのあたりはレアメタルが必要になるって聞いたことがあるし難しいか。
ダンジョンから採掘する手もあるが仕分けが大変だと言っていたし、これ以上負担を増やすのは得策では無いだろう。
閑話休題。
とりあえずバインダーを作って使用感を自分で確かめてみるとしよう、満足いくものが出来れば転移魔法陣が繋がった後流澪に渡せば解決だ。
俺にも必要なものだからな、急ぐわけではないが早めに取り掛かるとしよう。
バインダーを作るために
プラスチックと鉄で作れるかな……いや、鉄よりステンレスのほうが良さそうだ。
プラスチックとステンレスで紙を挟んで書き心地を確認……うん、いい感じ。
片手で持って書くのも使いづらいし、バインダーの上部に穴を空けて紐を取り付けて首から下げてお腹で支えるか。
ぷにっとした感触で少し悲しくなったが使い心地は格段に上昇、両手がフリーになるのは非常にいい。
自転車に乗ってそのまま書くわけじゃないし、バインダーはこれで完成だな。
後は転移魔法陣が繋がって流澪に渡すだけだと思いもう一つ錬成。
俺は早速見回りに向かい、気づいたことをささっと紙にメモしていく――これは快適だ、もっと早く作っておけばよかった。
活版印刷所で話をして、ラミア族との会話を軽くメモしているとユリアが活版印刷所に入ってきた。
そして俺を見るや否や結構な勢いで俺に飛びついてきた、どうしたんだ。
「村長、これは!?」
「これってバインダーの事か?
これがあるとメモが取りやすいと思って作ったんだよ。」
「私にも少し大きめのサイズを作っていただけませんか!?
絵を描く時にとても便利そうなので!」
なるほど、確かに昔の画家なんかはこれを使ってスケッチなんかを取っていただろうし。
幸いステンレスは少し作りすぎ気味だったので資材にも余裕はある、少し待っていてくれとユリアに伝えて倉庫へ行こうとすると「私も行きます!」とユリアも着いてくることに。
少しでも早く欲しかったのか、しまいにはユリアが俺と自転車を担いで倉庫まで移動し始めた。
ラミア族って魔術主体の種族だから非力なイメージだったけど、全然そんな事ないんだな。
俺はユリアの期待に応えるためA2用紙くらいの大きさに対応したバインダーを作成、紙を留める場所も増やしておいたしこれで使えるだろう。
「ありがとうございます!
これで色んな所で絵を描くことが出来ますよ!」
「完成したら是非見せてくれよ。」
「分かりました!」
ユリアはよっぽど嬉しかったのだろう、バインダーを持ってラミア族の居住区へ向かってすごいスピードで走っていった。
早速バインダーを試すのだろう、見取り図を見た時は滅茶苦茶上手かったし絵の完成が楽しみだ。
俺は見回りの続きをするとしよう、そろそろデパートもあるから最終チェックもしなければいけないし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます