第350話 大精霊と契約した際に使える力について考察した。

「メアリー、俺がドリアードの力を使って戦闘や生活が便利になりそうな事って何か思いついたりするか?」


俺は考えてもあまり思いつかないので、メアリーに大精霊の使い方を尋ねてみる。


メアリーはシルフと契約して間もないはずなのに色々思いついてるし、そういう発想を出しやすい思考をしているのかもしれない。


そもそも頭が滅茶苦茶いいというのもあるけど、というかそれだな。


「ドリアード様の力ですか。

 自然をどこまで操れるか……ですよね、シルフ様は風なので分かりやすいんですよ。

 ほら、このように。」


メアリーは足元に風を発生させて宙に浮き、そのままスイスイと移動し始めた。


なんだそれめっちゃ楽しそう。


……いや、それに関しては俺自身で出来るけど。


「身体能力の向上以外に何が出来るんだろうな。

風に関してはドリアードの力を借りて起こせるけど、シルフ程じゃないだろうし。」


「そうですね、風を起こすならお任せって言ってたくらい自信があるのでそれは比じゃないでしょう……ってドリアード様の力でも風を起こせるのですか!?」


「前に起こした記憶があるぞ……ほら。」


俺は手をかざして室内で風を起こしてメアリーに当てた、思いのほか強くなって服がはだけそうになってしまったけど。


わざとじゃないからな?


「びっくりしました……一応確認しますがこれが全力でしょうか?」


メアリーは乱れた衣服を直しながら質問してくる、果実のあたりが大変なことになってしまっていて眼福――いや、申し訳ない。


「いや、適当だからなぁ……もう少し強く出来るかどこかで試してみるか?」


「そうですね、明日試してみましょうか。

 私もやりたいことがありますし……大精霊様と契約した4人で迷惑にならない場所で検証してみるとしましょう。」


「分かった。」


俺とメアリーは鍛錬所を後にして家に帰ることに。


マティルデは上手くやれてるかどうか心配なので様子を見に行きたかったが、メアリーに止められたのでやめておいた。


どうやら今日は一緒に寝たかったらしい。


不死になったしこれから先何十年――いや、何百年も一緒に過ごすからな……ずっとこういう仲良しな関係でありたい。




次の日。


昨日メアリーと話した通り、検証のために大精霊と契約した4人で村から離れた草原に来ている。


それと一緒に大精霊も4人全員ついてきてもらった。


これで検証と確認も兼ねれる、非常に効率がいい。


「さて、まずはメアリーが試してみたいと思っていたことからやってみるか。」


「そうですね、では早速。」


そう言ってメアリーが何も無い場所に指を差すと、そこにたき火くらいの火が発生した。


「えっ、なんで!?」


これに一番びっくりしたのはメアリーと契約しているシルフ。


同時に他の大精霊もびっくりしている、各々他の大精霊の力を使おうと頑張っているみたいだが……結果は不発。


「それでは次に。」


メアリーは大精霊の反応を確かめず次の動作へ移り、今度は水を発生させて先ほどの火を消す。


「やはりこれで間違いないですね。

 大精霊様と契約したら他の大精霊様の力も使えるみたいです。」


「そんな事ないはずなんだけど……何でなのかな?」


シルフも考えながら他の大精霊の力を使おうとしているが、全く上手くいってない。


俺・オスカー・ウーテの3人もメアリーが言ってたことを試してみると、メアリーと同じように他の大精霊の力を使う事が出来た。


共通しているのは、自分と契約していない大精霊の力はそれほど大きく使えないということだ。


私生活で使うと少し被害が出るかもしれないが、戦闘に転用するのは威力が足りないくらいの微妙な威力。


それでも充分だけどな、火や水なんかは扱えるだけで有事の際に便利だし。


メアリー曰く、前の神様の力で生まれた4人なのでどこかで力が繋がっているのだろうということだ。


俺達だけ使えて大精霊が使えないのは、自分自身の力が強すぎて他の属性をかき消しているからじゃないかと。


そう言われて全員が納得、よくそんなこと思いつくなぁ。


「さて、後はドリアード様の力がどれくらい戦闘に転用出来るかお伺いしないと。

 他の御三方の能力は分かりやすいですが……ドリアード様のものはどうしても分かりかねるので。」


「うーん……別に教えてもいいけど。

 そもそも神である村長が前線に出る事自体が異常じゃない?

 村の戦力ならどうあってもそんなことせずに鎮圧出来るでしょう?」


言われてみればそうだ……けど。


「俺自身守られてばっかりは嫌なんだよ。

 異世界……というより別の星と宇宙で繋がってると分かった以上どんな生命体が出てくるかも分からない。

 もし何かあった時に俺が戦えないことによって、戦術の幅が狭まるのも嫌だしな。」


「なるほどね……村長の言い分は分かったわ。」


ドリアードは何か観念した様子、そんなに力を使って戦うのが嫌なのだろうか。


「村長はよく知ってると思うけど、私は植物を介して色々な事をしてるわよね?」


「あぁ、そうだな。」


「契約者が出来ることは、植物を自由に操れることよ。

 植物と植物を介して移動は出来ないけど、それ以外はほぼ自由。」


メアリー・オスカー・ウーテの3人はその言葉に相当驚いてるけど、俺は未だにパッとしない。


「えっと、それって強いのか?」


「強いぞ、少なくとも火を操るワシでも苦戦するくらいにはな。」


オスカーが苦戦させられるくらい強いだって?


俺にはそんな風に聞こえなかったが……。


「では少し実践してみようか。

 ドリアード様、植物を操ってワシを拘束してくれぬか?」


「村長はパッとしてないみたいだしね、いいわよ。」


オスカーがドリアードに拘束するよう頼むと、突如地中から木の根が生えてきてオスカーの四肢に巻き付き動きを封じる。


その後もどんどん根が生えてきて、首以外全てに根が巻き付いてしまった。


その間1秒弱、あっという間にあのオスカーが拘束されてしまった。


「しかし、火を使えばこれくらいどうとでもなるんじゃないのか?」


「そう、火を使えば何とかなる。

 だがこの拘束を解くのに火を使うと、同じ属性のワシでも多少のダメージは受けるぞ。

 それにワシの力であってもここまで姿勢が悪いと引きちぎることは不可能だ。

 生きた植物が意思を持ってワシの動きを止めようとしているからな、植物とは村長の想像以上に強いものだぞ。」


オスカーは自然の強さを十分に理解していた、現に引きちぎろうとしてもビクともしていないし。


「こうして生きた植物を使って色々出来るのが私の力。

 他の3人と違って意思を持った生命の力を借りて戦うから、出来れば使ってほしくないのよ。

 可哀想だし、私に力を分けてくれる存在だからさ。」


なるほどな、道理で教えるのを渋ったわけだ。


「分かった、極力使わないようにするよ。

 ドリアードの力が無くても神の力があるし……それで何とか出来ると思う。」


「そうね、そうしてくれると助かるわ。

 でも誰かを助けたりするのには存分に使ってあげてね、植物って誰かの役に立つのが大好きだから!」


こうした場がなければ分からない事をたくさん教えてもらえた。


その後は精霊の力を使って模擬試合を開催するらしい――模擬試合!?


そんなのオスカーの勝ちでいいだろう、やる意味が無いじゃないか。


だが、俺の意思に反してウーテもメアリーもノリノリ。


え、ほんとにやるの?

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