第95話 ラウラの身体にものすごい変化があった。

キュウビの事件で一気にごたついた2日間が終わった。


俺は早いほうがいいだろうとキュウビの対応を報告しに魔族領へ、魔王からも「村が豊かになれば魔族領へ何かしらいい働きがあるからそれでいいのじゃ。」とOKをもらえて一安心。


ついでに土木関係の人たちの手が空いたら、ある程度立地のいい場所に神を祀る建物を建てたいとお願いした。


以前魔王から大丈夫と言われたが、大臣に「既に魔族領で信仰されている神は居ますが……。」と少し渋られたが、そっちの信仰をやめて俺がお願いした神を信仰しろというわけではないと説明すると分かってもらえた。


どういう神かわからないと建物のイメージが湧かないかもしれないと思い、いらなくなった石を拝借して想像錬金術イマジンアルケミーで神を模った石像を渡しておく。


これがあればどういう雰囲気で作ればいいか、プロならイメージが湧くだろう。


俺は湧かない、教会なんて行ったことないからな……神社や寺院ならあるがそれはまた雰囲気が違うし。


土地代と建設にかかる費用は、食糧を出荷した際にツケている分から差し引いてもらうようお願いした。


もし足りなければ言ってくれ、何かしらで稼ぐようにするから。


そういえば魔族領の一般領民が使う倉庫はどうなったんだろうと思い、ついでに見に行くと既に稼働していた。


プラインエルフ族も決まった時間に生活魔術を掛けに来てくれているらしい、全然気づいてなかったぞ。


給金はその日の最後に日払いで払っているらしい、恐らくザスキアか他のプラインエルフ族が管理をしているのだろうな。


最近は住民が魔族領からの来客やこういった簡単な出稼ぎで稼いだお金の何割かを俺に渡そうとしてきている、特に必要も無いので断っているが村全体の出費の際にお金が無いのは困るので受け取るべきなのだろうか。


そのあたりはまた妻たちに相談するか、既に誰かから受け取ってくれないと意見をもらってるかもしれないが。


一通り見終わったので村へ帰る、2日とちょっとカールのお世話を出来てないからやりたいんだよな。


子どもは気づいたら勝手に成長しているともいうし、一緒に居れるときは極力一緒に居たい。




家に帰ると妻3人が寝ているカールを見てうっとりしている。


俺もそこに混ざる、可愛いよなぁ。


「村長、早く私たちも子ども欲しい!」


うん、気持ちは分からんでもないが白昼堂々大声でそんなことを言うのはやめなさい。


プールで裸になっても特に問題視しないどころか、既成事実を作るのにちょうどいいと感じてるこの世界観じゃ何ともないのだろうが、俺が気になるんだ。


「私はカールが居るので、時たま一緒に寝てくれればお二人を優先されても問題無いですよ?」


「ほら、メアリーもこう言ってるし……今日の夜お願いね!」


今まで何回もやることやってきただろう、何度も言うが子どもは授かりものなんだからな。


大人たちが騒いでるとカールが目を覚ましてしまったので、授乳をした後ついでにカールを抱いて散歩をする。


いい天気だな、とふと空を見上げると見慣れない影が見えた。


人型に翼が生えてる……有翼種族なんてまだ俺は見たことないぞ、ハーピーとかか?


空を散歩しててたまたま村に迷い込んだのだろうと思い、近くに寄ってみる。


クルトも有翼種族の近くを飛んでるし、襲われる心配もないだろう。


「クルト、その子はどうしたんだ?

 村に迷い込んだのか?」


俺の声に気づき、クルトが有翼人種と一緒に降りて来た。


「……ラウラ!?」


メアリーがラウラの名前を叫ぶ、ラウラがどうしたんだ?


「開様……ラウラにドラゴンの羽が!」


メアリーにそう言われ、改めて有翼人種をよく見ると確かにラウラだ――羽と角が生えているけど。


よく見ると牙も生えているな、まるでドラゴンの要素がラウラの姿に備わったような感じだ。


どうなっている?


「開様、メアリー姉!

 私ハーフドラゴンになりましたです!」


「「ハーフドラゴン!?」」


メアリーと二人で聞きなれない言葉を聞かされて、思わず一緒に叫んでしまう。


どういうことか説明してくれ、急すぎて理解が追い付かない。




「クルトと夫婦の契りを交わして、体に微妙な異変はあったのですよ。

 そこから妊娠……によく似た悪阻のようなものが襲ってきたのは開様も助けてくださったので分かると思うです。」


そこまでは分かる、悪阻のようなものということは厳密には悪阻ではなかったんだな。


「メアリー姉が楽になったと聞いたのでグレーテさんに状態異常回復魔術をかけてもらったですが、一向に良くならなかったんですよ。

 その時は個人差なのかな、と2人で話して終わったですが……体が徐々に変化していくのが分かって今ではこうして羽が生えてるです。

 悪阻のようなものも無くなったので、恐らく変化はここまでですが……あ、改めて妊娠はしてるですよ?」


そんなことがあるのか……ドラゴン族という強い個体だからか、クルトが特別強い個体が交わってそういう変化が起きたのかはわからないが、現状起きてる以上そういうこともあるのだろう。


メアリーはラウラの話を聞きながら羽を触りながらじろじろ眺めている、少し羨ましそうに見えるが俺はそんなこと出来ないからな。


「僕も最初はびっくりした、そもそもドラゴン族が他の種族と夫婦の契りを交わすこと自体が初めてのことだったから何が起きてもおかしくはないんだけど。

 村長はウーテと交わって体に変化は無いの?」


俺は特に無いな、男女の違いなのか個体差なのかはわからないが……羽が羨ましくないと言えば嘘になる、気持ちよさそうだしものすごく便利そうだからな。


「でもずっと羽が生えてると私生活で邪魔にならないか?

 ドラゴン族でも人間の姿の時は羽が生えてないし……住居の扉とか作り直したほうがいいなら言ってくれよ?」


「大丈夫です、私にとってこれがドラゴンの姿のようなものなので。

 羽が邪魔な時は……ほら、プラインエルフ族の姿になってドラゴン族の要素を一時的に無くすことが出来るです。

 これがドラゴン族の人間の姿になるという能力なのだと思うですよ。」


そう言ってプラインエルフ族の姿になると、見慣れた姿のラウラに戻っている。


「物凄い便利そうだな、ますます羨ましいぞ。

こんな変身要素、男なら憧れないはずがないからな。」


「あ、あとブレスも吐けるです。

 属性はよくわからないですが……でも身体能力はプラインエルフ族の時と変わらないのでそこまで戦力に貢献は出来ないです。」


飛べるだけでも充分だ、それにブレスも吐けるなら索敵魔術で敵を見つけてブレスをいち早く打ち込める、それだけで十分な戦力になるだろう。


今は妊娠してるから無理だけどな。


「そういえば悪阻は大丈夫なのか?」


「改めて妊娠したのがつい最近分かって、グレーテさんに状態異常回復魔術を使ってもらったら快適です。

 順調にいけば花の季節か氷の季節の終わりぐらいに産まれると思うですよ。」


それならよかった、母子ともに健康であるんだぞ。


ハーフドラゴンになったラウラにはびっくりしたが、中身は俺の知ってるラウラで一安心。


夫婦で運動してるところ、邪魔して悪かったな。


ほら、メアリー行くぞ。


羽と角を触りながら小声で「羨ましいなぁ……。」と言うのをやめなさい、してやれない俺もちょっと傷つくから。


ほら、カールもぐずりだしてるしオムツと授乳をして俺たちも散歩の続きをするぞ。

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