第411話 ホブゴについて話し合うため村に戻ったが、とあることに気が付いた。
あれからホブゴを連れて村に戻った。
そして食堂へ向かい食事をしながら話そうかと思ったが……流石にここで気配遮断と視覚歪曲を発動させているのはあまりにも不自然という事で、集会所で食事をしつつ話をする事に。
「さて、まずフェンリルの分体がどうしてホブゴというゴブリンに取り込まれているかだが……どこから説明したものか。」
イフリートが悩みながらフェンリルについて説明しようとするが……何か複雑なのか話し方に悩んでいる。
「どうもこうもありのままを簡潔に話すのが一番じゃない?
フェンリルはこの世界のどこかにある大霊峰で突如発生した精霊よ、そこに居る何かと契約してるみたいだけど……下界を荒らそうとしてたから私達4人で封印させてもらったの。
その際スキを突かれたのか分体を飛ばして世界を監視してたみたいね……ホブゴからこの話が出るまで知らなかったわ。」
この世界のどこかにある大霊峰……まだまだ知らない場所があるという事だな。
危険だから探検隊を出すわけにはいかない……いや、ここの住民ならどんな相手でも何とか出来そうだ。
それに大精霊達から世界最高峰の戦力だとお墨付きをもらってるし。
「で、その分体をどうやってかホブゴが取り込んで寿命が延びたのだな。
それで合っているか?」
オスカーの言葉にホブゴがうなずく、どうやってやったのか教えてもらおうとしたが忘れてしまったようだ。
それなら仕方ない。
「ところで、ドリアード殿に少し質問があるのだが。」
オスカーが真剣な顔でドリアードに問い掛ける、何か分からない事があるのだろうか。
「どうしたの?」
「大霊峰というのは、あの極寒地域にある恐ろしく高い山だろうか?
あそこの何かとフェンリルが契約してるとは、とてもじゃないと考えられぬ。
あのような場所、生物が生きられる場所ではなかろう。」
オスカーの質問を聞いたドリアードは、不敵な笑みを浮かべてオスカーに詰め寄る。
「世界で最も優れた身体を持つリムドブルムである貴方がそんな事を言うなんて。
あそこで貴方は過ごせないと言うの?」
「ただ数日居るだけならどうとでもなるだろうが……そこに定住せよと言われると難しいのではないか?
まず食糧の確保が出来んだろう、あそこには動物どころか植物もあるとは思えん。」
オスカーは少したじろぎながらドリアードの問いかけに答えた。
話を聞く限り前の世界でいう北極か南極にあるエベレストに定住しろということ、だと思う。
うん、無理。
いや、どんな地域にも何かは生息してるから出来るかもしれないけど過酷過ぎる。
「この村はもっと世界の探究をするべき、というのが良く分かったわ。
そして自然をはじめ生物を舐めすぎてるわね、あの大霊峰にも文化はあるし動物や魔物、それに植物だって自生してるわよ?」
「何だと……。
昔あのような場所には誰も居らぬと無視して他の地域を回ったが、そんな事は無かったのだな――いずれその地の最強と戦わせてもらうとしよう。
おっと、話が大分逸れてしまったな……ちなみにフェンリルは今でも封印されておるのか?」
「それは間違いないわよ、ぽっと出の畜生精霊如きが私の水に逆らえるはずないし。」
ウンディーネのとんでもない毒舌にその場にいる全員が少し引いてしまった。
本人はそれが当たり前なのか気にしてない様子だが、契約しているウーテはあからさまに嫌悪感を見せている。
これから一生付き合っていく存在なんだから、そんな感情を持たないであげてほしい。
さっきのはウンディーネが悪いけどさ。
――ん、フェンリルの封印にウンディーネ?
「待て、何でイフリートじゃなくてウンディーネがフェンリルを封印したんだ?
氷なら炎で弱らせれるだろうに。」
「はははっ、村長も酷な事を。
氷の魔狼を私の力で封印すると、弱らせるではなく殺してしまう――精霊の精霊殺しは禁忌中の禁忌なのです。
「どういうことだ?」
「精霊は星が持つ属性の象徴、そんな存在が他の象徴を殺すとそれらが混ざり合うわ。
今回村長が話に出した状況を例に挙げると、炎と氷が混ざり合い自然が大きく乱れる。
料理の時に火を熾したら氷も一緒に出る――その逆ももちろん起きるわ。
そんな世界、他の生物が過ごせなくなるのよ。」
「そういう事、氷を操るなら水で圧し止めればいい。
封印も出来て殺すこともない、私がフェンリルを封印する最適解ってわけ。」
なるほどな。
しかしそんな面倒な縛りがあったのか……いや、面倒というか精霊が精霊を殺すなんて本来起きてはいけない状況だ。
それで大精霊に敵対したフェンリルを封印したというわけか、流石にフェンリルに同情は出来ない。
――いや、待て。
「なぁ、取り込まれた精霊の分体って生き永らえるために力を使わないんだよな?」
「大体その通りだと思うわよ。
取り込まれた以上本体との繋がりは無くなってるから。」
「じゃあなんでホブゴは氷の力を使えるんだ……?」
「っ!」
俺は疑問を口にすると、ウンディーネが一瞬で消えた。
恐らく水がある場所へ瞬間移動したのだろう――そして行き先は恐らくフェンリルを封印した場所だ。
「ウンディーネを追うぞ、俺に捕まれ!」
俺はこの場に居る全員を集めてウンディーネの下へ瞬間移動を試みる。
もしウンディーネの封印を破ってるならフェンリルは相当な実力者だ――ウーテを守るためにも再度封印させてもらわなくては。
頼むぞ、向こうについた瞬間やられたりしないでくれよ。
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